涙の理由は知らなくていい




言ったところで現状が変わるはずもなく、ただ虚しくなるだけなのに、つい口にしてしまうのは、きっと隣にいる彼女に共感して欲しいからなんだと思う。


「夏休み、終わらなければいいのに」


項垂(うなだ)れるようにそう言うと、清水は(あき)れて言った。


「瀬谷君って。意外と子供みたいなこと言うよね」

「俺達まだ子供じゃん。それに、どうしてもクラスの空気は好きになれない」

「私はいつも通り絵に集中してやり過ごすことにするよ」


意外と割り切ってるんだ、清水って。


「俺は熱中できるものないから、また机に寝そべってるだけかも」

「本とか読んだらいいんじゃない?小説とかさ。物語に熱中すれば、外界と断絶できるかも」

「現実逃避を勧めるな」

「だって、外界は危ないよ。たまに消しゴムとか飛んでくるし。あれびっくりしちゃうから嫌なんだよね」

「……笑えない」


俺達は一歩間違えると標的になる危うさを持っている。そのことを忘れてはいけない。

心のどこかではこのままではいけないと思ってはいた。けれど、それと同じくらい諦めてもいた。

だから俺は机に突っ伏し、清水は絵に逃げ込んで外の世界を見ないようにしていた。


確認しておかなければいけない。