涙の理由は知らなくていい

綺麗な言葉なんて無くたって良い。

いつも堪えるように泣いていたから、憚ることなく涙を流す清水を見るのは初めてだった。不謹慎かもしれないけれど、また一つ彼女のことが知れて嬉しい。

ようやく気が付いた。

いや、本当は気が付いていた。

内気で人一倍神経質で、でも好きなことや苦手なことには直向きに頑張ろうとする。

頑固な一面を持ちながらも、気付くときちんと自分を改める。そして感情が揺さぶられると、自然と涙を流す。


そんな清水が好きなんだ。


そのまま勢いに任せて言葉にできればなんて思ったけど、もちろんそこまでの勇気は俺にはなくて、けどやっぱり言わないのも気持ち悪くて。


「俺、泣いている清水さん、結構好きだよ」


余分なものを付け加えて言った。

これが今の俺の精一杯。

それに、こんな気持ちを抱いたのは初めてだったから、正直どう取り扱えば良いのかがわからない。

だからもう少し時間をかけて清水のことを知ろうと思う。はっきり伝えるのはその後からでも遅くはない。


「えっ、えっ……?」


どう捉えたのかわからないけれど、清水は顔を真っ赤にしながら壊れた機械のように同じ音を繰り返してから、


「いや、いやいやいや、嘘だ。私、絶対変だから!瀬谷君もそう思うでしょ?」


精一杯自分を(さげす)んだ。

反射的に自分を下げるのは自己肯定感が低い俺達の常套手段(じょうとうしゅだん)だ。こういう時は「思わない」と言うのが模範解答だろうけれど、清水に嘘は付きたくない。

俺の中でもジミズだったのは間違いない。そのことを隠すのは不誠実だ。


「初めは思ってた」


清水は安心したような諦めてしまったような微妙な表情をした。

言葉にしていないけれど、たしかに「ほらね」って言われたような気がした。

そうじゃないんだ、清水。続きがあるんだ。