涙の理由は知らなくていい

これ以上はあまりにも重すぎると思ったのだろうか、美安さんは話題をずらして、悪戯っぽく言った。


「あの子、学校でいつも一人でいるでしょ」

「まあ……はい」


自分のことを棚に上げるつもりではなく客観的事実として。

でも清水の名誉のために、返事は曖昧にしておく。


「ふふっ。見なくてもわかるわよ。悠安は夕方になるといつもここに来て絵を描いてたから、こいつ絶対友達いないなって思ってた。だから瀬谷君を連れてきた時、本当にびっくりして、ちょっと泣きそうになっちゃった」


思えばあの時勢いで清水に付いてきてしまってから、夏休みの大半を一緒に過ごすようになった。

気付けばいつも一緒にいる。でも、果たしてその程度のものが友達と言えるのだろうか。

かと言って「今日から俺達は友達だ」と宣言するものでもないとも思う。

友達の定義は曖昧だ。

たしかに今は清水と一緒にいるけれど、じゃあ学校で同じように清水と接することができるのかというと、ちょっと、いや大分自信がない。

だってそれぞれが平穏な生活を守るのに必死だから。

それは多分清水も同じだろう。

他人のふりをし続ける方が健全な学校生活を送れるに違いない。場所によって都合良く変えられる関係に、友達なんて立派な言葉を当てはめてはいけない。


「これからも悠安と仲良くしてくれたら嬉しい」

「あ、はい。それはもちろん」


そういうことを思っているはずなのに、体裁的な返事をするのだけは忘れなかった。

いや、違う。これが本心だ。清水のことをもっと知りたいし、この気持ちの正体も突き止めたい。