◆
日が傾きかける頃になると突然清水は気分が悪いと訴え、俺達の出店は予期せぬ形で幕を閉じた。
少し早い撤収作業を終えると、俺は美安さんがいる建屋に急いだ。
「清水さん、大丈夫ですか」
「うん。軽い熱中症かな。しばらく事務所で休ませればすぐに治るよ」
「すみません。全然気付けなくて」
「ううん。むしろずっと悠安の隣にいてくれてありがとう。お金を管理してくれてたり、座って休憩するように言ってくれたり、たくさん気を遣ってくれてたでしょ」
「知ってたんですか?」
「イベントが始まると忙しくて行けなかったけど、遠目からちょこちょこ見てたよ。瀬谷君がいてくれて本当によかった」
「俺、本当に何もしてません。隣で清水がお客さんと話すのをただ見ているだけで。それに、売るものを選んだのも、絵を描いたのも、準備したのも、全部清水です」
美安さんは俺を買い被りすぎている。
俺は昔から何かをしている人間を隣で眺めては、それで満足しているような人間だった。
清水のように何かに立ち向かうことはなかったし、向き合うこともしてこなかった。
「でも、悠安一人だと、あそこまでできなかったと思う。あの子、前は私が言ってもふてくされて何もしなかったけど、瀬谷君が来てから急にスイッチ入ったみたいに動くようになったのよ。私、悠安があんなに頑張るとは思っていなくて、正直びっくりしてる」
「清水さんって、本当は活発な人だったんじゃないんですか」
「ううん。昔からあんな感じよ。内気で泣き虫。でも、ある出来事がきっかけで、悠安は感情が昂ると泣いてしまうようになったの」
距離が縮まるにつれ顕になる他人の過去。知ってしまったら、もう知る前の関係に戻ることができないし、内容は大体重いからダメージを受ける。
そういうのが面倒だから他人との関わりを避けていた。
でも、
「もう少し、詳しく教えていただけませんか」
それ以上に清水のことが知りたいと思いった。



