◆
高校生活初めての夏休みが目前に迫るにつれ、教室の空気は段々と浮き足立ってくる。
期末テストの結果に一喜一憂なんてこともせず、消化試合のような授業もいつも通り机に突っ伏して大半を過ごす。
たまに先生に教科書の角で頭をどつかれることもあるけれど、先生達も一学期分の授業範囲のノルマを達成して気が抜けているのか、それともただ俺のことを諦めただけなのか、俺の睡眠を黙認してくれることが多くなった。
と言っても、本当に寝ているのではなく、ただ目を瞑って存在感を消しているだけなんだけどな。
机は雑巾みたいな匂いしかしないし、こんなに平べったくて硬いところに長時間身体を預けるのはぶっちゃけ相当な苦行でもある。そんなところで寝られるのは相当神経が図太い奴だけ。
教室に居場所なんてありやしないから、必死に寝ているふりをして存在感を消している。
だったら授業をサボれば良いと考えたこともあったけど、そもそも俺にはそんな大胆なことをする勇気は備わっていない。高校は義務教育ではないのだから、授業の欠席は相当内申点にも響くし、退学や留年だけはどうしても避けておきたい。
一応は中途半端な危機感を持っている。