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八月に入って初めの週末。いよいよ予定していた古物市が始まった。
前日はスコールのような大雨が降ったせいで、会場である市民センター前の駐車場は異様に蒸し暑い。
雨水を大量に吸ったアスファルトが日差しに照り付けられ、湿気を伴った独特の匂いが一体を漂っている。
冷房が効いている屋内は衛生面を考慮して飲食を提供する人達に割り当てられている。
食べられないものを販売する俺達は炎天下の中で我慢大会をしなければならないってわけだ。
照りつける日差しはインドア派の俺からしたらさながら放射能のようで。まさに今肌の細胞がジリジリと焼かれているのが伝わってくる。
後ろからTシャツの裾が引っ張られ流のと同時に、聞き覚えのある声が俺を呼んだ。
振り向くと私服姿の清水がいた。
袖口が広くなっている真っ白なブラウスと、膝下が見える長さの紺のスカート。
日差し対策なのか、つばの広い麦わら帽子を被っている。華奢な腕や猫背の姿勢を見て普段の清水だと思ったのは一瞬。そんなことより、普段よりも露出されている肌が多くて目のやり場に困る。
いや、そういう目で見ているわけではないんだけどさ。なんか落ち着かない。
「どうしたの?」
「あ、いや、えっと。今日相当暑くなりそうだけど、大丈夫?」
「もう干からびそう。一応屋外の私達のブースにもテントはあるみたいだけど。あ、出展者が朝一で用意するって書いてある」
プログラムにはテントの設営は力仕事であるため、この場にいる男性が担当するらしい。
「あー、うん。やっぱそうなるよね。頑張ろ」
無理矢理前向きな言葉を付け足したのは、弱い自分を晒すのが恥ずかしいと思ったから。
それも十分伝わってしまったみたいで、清水は控えめに吹き出していた。
ほかの出展者さんや地域のおじさん達に混ざってテントを用意する間、清水はブルーシートや机を倉庫に取りに行ってくれることになった。
そういえば清水が俺以外の人間と一緒に何かをしている姿って見たことがない。離れ際に不安そうな顔をしていたように見えたけど、本当に大丈夫だろうか。
けれどすぐにそんな心配をする余裕なんてなくなった。



