涙の理由は知らなくていい

幼稚な言い争いを強制終了するかのように、ホームには電車が到着するアナウンスが鳴り響いた。


「ごめん。言い過ぎちゃった」


先に謝ったのもやっぱり清水だった。もちろん清水が思う正しい使い方で。
 
対等でいたいから、反射的に言葉を返す。


「いや、俺のほうこそ、ごめん」

「言っとくけど、本心だから」

「言わなくてもわかるって。ほら、荷物」


俺は画材が入っている重そうな鞄を若干強引に奪う。


「ありがと」


お互いにエネルギーを出し切ってしまったのか、俺達はしばらく憔悴しきったようにだらしない姿勢で電車に揺られた。

清水は足元に置いているリュックから水筒を取り出しながら言った。


「ほんと、嫌になっちゃうよ、この身体」


清水は水筒を取り出すと普段より多めにコップに注ぐと、渇いた身体に染み渡らせるようにゆっくりとそれを飲み干した。


「治るよ」


本心ではないけれど、今の清水にかけてあげる言葉は多分これが正解なんだと思う。


「うん、絶対治す」


清水は力を込めてそう言った。

鼻息荒く言ったくせに、そこから駅を降りるまでの間、清水はうたた寝を始めた。

俺はそんな清水の寝息を隣でずっと聞いていた。