涙の理由は知らなくていい

何人かの視線が俺達の方に向けられているけれど、今はそんなことどうでも良い。

真っ向から向かってくる彼女に全力で立ち向かなければいけない。


「でも無視するのは同意したのと一緒だろ。そんなの、サンドバックになってるだけじゃん。だったら適当な言葉で上手く流しておいた方がずっと賢いって」

「そんなの全然賢くない……!言葉は口にすると、知らないうちに心が言った通りになっちゃうんだよ。

思っていないのに謝っていると、自分に嘘をついていることになるし、自分のことが嫌いになっちゃう……だから……言葉を軽く扱っちゃ……だめ」


しゃくりあげながら泣く清水は一向に引こうとしない。


「無視したら、それこそ自分の居場所がどんどん削られていく」

「自分に嘘を付いたり卑下したりするよりは全然マシ」


俺達は間違っていない。

きっとお互いの性格や境遇から編み出した独自の防衛手段なんだ。

間違っていない。

間違っていないんだ。

けれど。

なんというか、俺達は不器用だ。

このまま言い争いをしていても、平行線をたどる一方だ。けれどここまで言われた俺も折れるわけにはいかない。

言い争いに慣れていない俺達は引き際側がわからない。