再び机に突っ伏(つっぷ)そうとしたけれど、ジミズのぐずぐずと鼻を啜る耳障りな音が頭から離れなくなった。

一度でも認識すると、たちまちそれが気になって仕方がなくなる。周りの人間を不快にさせている自覚はあるのだろうか。

泣くと身体の水分が失われて喉が渇くのだろう。ジミズの机の上には常に水色の水筒が置いてあって、彼女は休み時間だけでなく授業中も口にしていた。

コップに注がれる液体は無色透明に見えたから、おそらくミネラルウォーターか何かだろう。

先生達は事情を知っているようで、授業中にも関わらず給水補給をしていても何も言わない。

いつも泣いていて、ひとりぼっちで絵を描いている変な奴。

そんな奴がクラスで浮かない訳がない、ジミズの教室での立ち位置は間違いなく俺と同じで最悪。

けれどあいつは俺と違って不幸な人間には見えない。それどころか、いつもあんなに涙を流しているくせに、幸せそうに見える時がたまにある。

そんなジミズを見ているといらいらしてくる。

いらいらしてくるのに、ジミズが気になって仕方がない。

気が付くと、俺はジミズのことばかり考えるようになっていた。