お盆を置くと、清水は一番真ん中のスイカを俺に渡し、自分は全然身が付いていない切れ端の方を手に取っていた。
「端から食べる人、初めて見た」
「種を飲み込みたくないから。間違って飲み込んだら盲腸になるから気を付けてね」
「それ、迷信じゃなかったっけ」
「……そうなの?」
見開いた清水の目には少しだけ涙が溜まっていたけれど、すぐに瞳の中に還っていった。
今の俺はそれが変だとは思わない。
むしろ本当に種を飲み込んだら盲腸になると思い込んでいることの方が気になった。
少しは心を許してくれたのか、清水はあっさり涙の理由を明かしてくれた。
「私、少しでも緊張したり、驚いたりすると、勝手に涙が出てきちゃうんだ」
「へえ、そうなんだ」
清水が自分から秘密を打ち明けてくれたことが嬉しい。
だけど今までちゃんと理由を訊くことを避けてもいたから、望んでもいないのに急に種明かしをされたような気がして、ちょっと複雑だった。
だから俺はスマホから目を逸らすことなく、いかにも興味がなさそうな気の抜けた返事をした。
清水は一度鼻を啜ってから話を続ける。
「集中すると泣が止まるのがわかってから、わざと利き手と違う方の手を使って気を紛らせていたんだ。でも最近は慣れちゃって、あまり効果がないんだけどね」
「よくそんな難しいことしようと思ったね」
「実はこれもお姉ちゃんの提案。お姉ちゃん、昔から私のこの症状を心配しているから」
良いお姉さんだね、と言いかけてやめた。
美安さんはどういう意味で清水を心配しているのだろう。
「端から食べる人、初めて見た」
「種を飲み込みたくないから。間違って飲み込んだら盲腸になるから気を付けてね」
「それ、迷信じゃなかったっけ」
「……そうなの?」
見開いた清水の目には少しだけ涙が溜まっていたけれど、すぐに瞳の中に還っていった。
今の俺はそれが変だとは思わない。
むしろ本当に種を飲み込んだら盲腸になると思い込んでいることの方が気になった。
少しは心を許してくれたのか、清水はあっさり涙の理由を明かしてくれた。
「私、少しでも緊張したり、驚いたりすると、勝手に涙が出てきちゃうんだ」
「へえ、そうなんだ」
清水が自分から秘密を打ち明けてくれたことが嬉しい。
だけど今までちゃんと理由を訊くことを避けてもいたから、望んでもいないのに急に種明かしをされたような気がして、ちょっと複雑だった。
だから俺はスマホから目を逸らすことなく、いかにも興味がなさそうな気の抜けた返事をした。
清水は一度鼻を啜ってから話を続ける。
「集中すると泣が止まるのがわかってから、わざと利き手と違う方の手を使って気を紛らせていたんだ。でも最近は慣れちゃって、あまり効果がないんだけどね」
「よくそんな難しいことしようと思ったね」
「実はこれもお姉ちゃんの提案。お姉ちゃん、昔から私のこの症状を心配しているから」
良いお姉さんだね、と言いかけてやめた。
美安さんはどういう意味で清水を心配しているのだろう。