「お姉ちゃんは昔から私が泣き虫で内気なところも気にしてて、今回の出店は私の欠点を克服させる意味も含んでいるんだと思う」
……欠点。
自覚あるんだ、ジミズ。それに、お姉さんも。
「清水さんは、克服したいの?」
「したい」
ジミズは言い切る。
「だって、いっつも泣いているのって、キモいじゃん」
突然鈍器で頭を思いきり殴られたような、そんな感覚がした。
ジミズは自分のことをキモいって言った。
ごめん、ジミズ。
俺も思ってた。俺だけじゃない。クラスメイトみんながそう思ってた。
でも、それは他人の俺達から見たジミズであって。まさか本人までもがそういう風に思っていたなんて。
それにジミズは克服しようと必死だった。
今隣にいるのは、いつも泣いている変な奴ではなく、自分のコンプレックスを必死に克服しようとしている勇敢なクラスメイト。
「瀬谷君、どうしたの?」
「あのさ。清水さんさえよければ、俺に出店も手伝わせてもらえないかな」
虫が良すぎるかもしれない。そこに贖罪の意味も含まれているのも嘘じゃない。
でも、それ以上に俺の中で清水のことをもっと知りたいと思ってしまったのも間違いないし、そんな彼女に何か出来ないかとすらも思った。
清水は目を丸くしてから、しばらく戸惑ったような表情で俺の方を見つめる。
相変わらず目は真っ赤で、その目にはまたじんわりと涙が溜まってきた。
恥ずかしくなった俺は咄嗟に目を逸らす。こんなに至近距離でまっすぐ見つめられる経験なんて今までなかったから、どうすればいいのかわからない。
「ごめん。迷惑だったら断ってくれて大丈夫だから」
「ううん。そんなことない。嬉しい。私からもお願いします」
ジミズは律儀に頭を下げた。