ジミズは人一倍感情に正直なんだ。

でも、だとすれば。

教室にいる時や、俺と話している時に突然涙を流すのはなぜだろう。

別に悪いことなんてしていないのに。まさか教室にいるだけで申し訳ない気持ちになるなんてことはないだろう。

涙の理由を()くことなんて俺にはできない。

ジミズの秘密を知ってしまったら、もう前の俺には戻れない。

クラスの除け者になっているジミズを「ジミズ」として見ることはもうできない。


「とにかく、一旦作業を終わらせよう。俺、本当に何も気にしてないから」

「うん」


すっかり萎れてしまったジミズを、なぜか俺が励ました。

気まずい空気が残ったまま、俺たちは作業を続ける。

独り身の人間に丁度良い大きさの木製のお盆やお皿、何を入れるにも中途半端な手のひらサイズの木箱。


「このお皿は湾曲しすぎて難しそう」


却下。


「小さすぎるのも、ちょっと」


これも却下。

描きやすそうなものを選んだつもりだが、ジミズに手渡すと、決まって渋い顔をされる。


「結構厳選するんだ」

「失敗するって思うと、どうしても怖くなっちゃうんだ。お姉ちゃんは上達するためにあえて難しいものに挑戦しろって言うけど……」

「あのお姉さんなら言いそう。出店はお姉さんの提案だっけ?」

「うん。私が将来絵を仕事にしたいって言ったから。経験のためにやってみなって言ってくれたんだ。まあ、私には拒否権無かったけど」


ジミズは鼻を啜ってから、美安さんが椅子の上に置いてくれた麦茶入りのコップを一つ俺に渡す。

すっかり汗をかいているコップからは連鎖的に水滴が滴り落ちる。

せっかく入れてくれた氷はほとんど溶けてしまっていたけれど、口に含むとひんやりとした冷気はまだ残っていて、乾いた身体に浸透するのがはっきりとわかった。