いつもひとりぼっちで地味に絵を描いていて、鼻をずるずる鳴らしているから”ジミズ”。顔はちょっと可愛いけど。

今までジミズが自主的に動いたところなんて見たことがなかったから、わざわざプリントを拾ってくれた事実を受け入れるのに時間がかかった。

でも、放っておいたらきっと俺のプリントはゴミ箱にすら入れられずにいただろうから、一応は感謝の意味を込めて受け取っておく。俺もジミズもさほど立ち位置は変わらない。

ジミズを見ていると同族嫌悪のような感情も抱いてしまう。でも、そう思うと自分はジミズと同分類の人間だと認めたような気がして、余計に虚しくなる。


「ごめん、汚れちゃってる」


だから話しかけてくんなって。

そんな俺の気持ちを汲み取りもせず、ジミズは作り笑いをしてきやがる。


「別に良いって」


お前のせいじゃないし。

進路希望調査用の大事なプリントだったけれど、落とした俺が悪い。それに落ちたプリントが踏まれようが破られようが構わない。

ジミズはくっきりと足跡が付いてしまったプリントを申し訳なさそうに俺に渡すと、鼻を啜りながらすぐに自分の席に戻っていった。

出席番号がジミズの一つ後ろの俺は、窓側から二列目の一番先頭。先生との距離が近すぎるのは嫌だけど、授業中に他の奴らを視界に入れなくて済むから悪い席ではない。