ひとしきり目ぼしいものを物色し終えると、今度は集めたものに付いている(ほこり)を拭き取っていく。

黙々と作業を続けていると、空いた扉から女の人が俺達の方に近付いてきた。


「悠安、あんた、また楽そうなものばかり選んでるでしょ」

「わっ……!お姉ちゃん」

入り口に背を向けていたジミズは女の人に気付いていなかったらしく、突然背後から声を掛けられて、わかりやすく肩をビクッと跳ね上げた。


「珍しいわね。悠安が友達を連れてくるなんて」


一方的に歓迎しているような眼差しを俺に向けた女の人はどうやらジミズのお姉さんらしい。

長めの髪を後ろで一つに縛り、タンクトップから見せる肌は日焼けしているせいでかなり黒い。インドア派の俺やジミズが白すぎるのかもしれないだけかもしれないけど。


「はじめまして。清水さんのクラスメイトの瀬谷凪です」

「これはこれはご丁寧に。こいつの姉の美安です」

「こいつって言うな」


血の繋がった、その中でもとりわけ心を許したものにしか見せない表情をジミズは見せる。


「瀬谷君、悠安を手伝ってくれてありがとう」


美安さんは噛み締めるようにそう言った。

この姉妹はいちいち大袈裟だ。

なんて思ったが、よく考えるといつも一人でいるジミズがいきなり友達を連れて来るのはなかなかのインパクトがあるかもしれない。もし俺がジミズの親なら、やっぱり感激して泣くと思う。


「私、てっきり悠安は友達がいないものだと持ってた」


美安さんはジミズの頭をぽんぽんと叩く。


「う……お姉ちゃんほんとうるさいっ」

「あんたがそんなんだから、お姉ちゃんは心配してんの」


容赦のない言葉を浴びさせられているような気がしてちょっと気の毒に思ったけど、ジミズは頭に乗せられた手を払いのけながら言い返していた。多分これはただの戯れ合い(じゃれあい)なんだ。


「わかってる。だから頑張って出店するって言ってるじゃん」

「今度は逃げちゃだめだからね」

「もう!あっち行って」

「はいはい。隣の部屋にいるから。あんた達こまめに涼みに来なさいね。飲み物だったら何でも奢ったげるから。この部屋熱気が籠ってるから、あんた脱水症状に気を付けなさいよ」

「ありがとうございます」