入り口にある照明のスイッチを入れると、薄暗い不気味な空間が全貌を現す。

倉庫のような薄暗い部屋の床一面にはブルーシートが敷かれていて、その上には埃が被った食器や木箱、民族博物館に展示してあるような使い方のわからない木製の機械などが並べられていた。奥の方には箪笥や机も乱雑に置かれている。


「この中から売れそうなものを選別して欲しいんだ。できれば絵が描けそうな平らなものがいいな。はい、瀬谷くん、これ使っていいよ」

「あ、ああ、さんきゅ」


ジミズは俺に軍手を渡すと、果敢にガラクタの中へと足を踏み入れて行く。とりあえず俺は後を付いていく。

目ぼしいものを見つけたのか、ジミズは足元にある小さな木箱を拾い上げると、四方をくまなく調べて俺に渡す。


「宝探しみたいで面白いよ」

「割れてる食器も結構あるけど」

「地元の大工さんや金継ぎ職人さんが修理してくれるから、そのまま置いといて」

「わかった」


この空間には俺とジミズしかいない。そう考えると、幾分(いくぶん)気分が楽になった。

商店街をジミズと一緒に歩いている時、周りの視線がこちらに向いているような感覚がしていた。

多分ジミズではなく俺に向けられたもの。俺が周りを気にし始めてからジミズは少しだけ歩調を早めていたから、決して俺の思い違いではない。