商店街にある金物屋の隣にある小さな建物は、八百屋のように入り口が開かれていた。中はさらに開放的なスペースが広がっていて、所々に小さなテーブルが配置されている。

受付のようなカウンターではコーヒーやホットドッグなどの軽食が売っていて、テーブルで自由に飲食できるようになっている。


「カフェ?」

「市民センターだよ。二階がコワーキングスペースになっていて、一階は地域の人が集まる集会所になったり、イベントスペースにもなるみたい。普段はカフェもやってるよ」

「珍しいところだね」


ジミズはカウンターにいるお姉さんに手を振ると、ひらひらと手を振り返していた。俺はジミズの後に続いて会釈をする。

ジミズはそのまま二階を案内してくれた。

二階のコワーキングスペースは中央に大きな事務机が設置されており、その周りにはセパレーションで小分けされた部屋がいくつもあった。セパレーションの向こうからはキーボードを叩く音が聞こえてくる。


「会社のオフィスみたい」

「ここでテスト勉強もできるよ」

「清水さんは使ってるの?」

「ううん。静かすぎるから、駄目」

「わかる。俺も静かなのは苦手。家のリビングとかちょっと雑音が多いところで勉強してる」

「あ、えっと、私、鼻音がうるさいから」


多分ジミズは自分が人と違うってことを、ちゃんと理解している。

他人と違う部分を受け入れるのは、ちょっと、いや、かなりしんどい。だって自分が劣っているように感じるから。そう考えると、ジミズは俺が思うよりずっと強い人間なのかもしれない。

なぜかジミズは笑っていた。涙は止まっている。

その後ジミズは俺が使うわけではないのに、トイレやエレベーターの位置まで教えてくれた。

また一つ気付いたことがある。ジミズは細かいことまで気にする性格なのかもしれない。