「お、おい……ジミズ」
心配するより先に、咄嗟に口にしてしまった言葉が本人に届いていないかが気になった。
苦しそうにその場にしゃがみ込んでしまったジミズの前で、俺はただ傍観することしかできない。
ジミズは苦しんでいる最中にも俺のことを気にかけてくれているようで、ハンカチで口を押さえていない方の手のひらを俺に向けて大丈夫だと伝えた。
幸い発作はすぐに治った。ジミズはぎゅっと閉じた目を開けると、ゆっくりと立ち上がる。
「びっくりさせて……ごめんね」
そう言ってからジミズは「けほっ」と小さく二回咳をしてから大きく深呼吸をする。
「大丈夫だったら、良いけど」
ジミズはまたふうと大きく息を吐く。
「いつものことなんだ。でも、病気じゃないよ」
と、念を押すように語尾を強めて言った。
そのあとジミズは何事もなかったかのように歩き出す。
なんだ、この感覚。
ジミズが大丈夫だとわかった途端、乾いた好奇心を満たしたような感覚がした。
ジミズを面白がっている自分が確かにいる。
時折感じる心臓の高鳴りは、新しいおもちゃを手にした小さな子供のそれと一緒のようだった。
これじゃあ、陰口を叩いているクラスの奴らと何も変わらない。