予定よりも大分早めに降りた駅は、古びた宿舎のような小さな駅で閑散としていた。

その駅の目と鼻の先には異なる路線の駅があり、そっちの方にはカメラを持った大人達が視界に捉えられるのではないかと思うほどの熱量を放ちながら群がっている。

戦車のような形をしている貨物列車が駅を通過すると、その大人達は一斉に銃を構えるようにカメラのレンズを列車に向け、熱心にシャッター音を鳴らす。

今流行りのオンラインゲームで似たようなシーンを見たことがある。

いつも通過する駅でこんな光景を目の当たりにするとは思ってもみなかった。

退屈な日常がちょっとだけ満たされたような気がして、不覚にもちょっとジミズに付いてきてよかったなんて思ってしまった。


「瀬谷くん、もしかして撮り鉄なの?」

「あ、いや、そうじゃなくて」

「じゃあ、家がこの辺りとか」


俺達だけだからか、ジミズは意外とぐいぐい質問してくる。泣きながらだけど。

咄嗟にばあちゃんの家が近いとかバイト先がこの辺りだとかいくつか言い訳は思い付いたけれど、嘘を貫き通すと後から苦しくなるのは中学時代に散々経験していたから、正直に答えておく。


「ごめん。実は、勢いでジミ……清水さんに付いてきちゃったっていうか」


ばつが悪そうにそう答えると、ジミズは一瞬戸惑ったようにまた目を丸くし、でもそのあとすぐに笑いながら、


「じゃあ、ちょっと手伝ってくれる?」


と言った。


「良いけど……」


普通に喋れるんだ。それに、さほど親しくもない人間相手に手伝ってなんてそんな図々しいことが言えるなんて、意外と主張はしっかりするんだ、ジミズ。

またしても流されるまま返事をする俺はジミズよりもずっと意志が弱い人間のような気がして、また自分が嫌いになった。