「ドドドドドッ、ガタン・・・」
そんな音がして私は飛び起き何事かと思い窓の外を見た。
すると、近くの電柱の工事が始まっていた。
「そういえば、
”電柱柱の工事をするため大きな音が出てしまいます。
ご協力のほどご協力お願いします。”
みたいな手紙、この間届いてたな・・・。」
そんなことをつぶやいて目をこすった。
そして足元に目を移すと
「―――――やっば!
なんか今日はのんびりしてるなって思ったら、学校じゃん!
忘れてた!」
中学校のバッグが置かれていた。
そういえば、昨日は歩ちゃんに連絡をして、アラームも何もかけずに寝てしまった。
急いで床に置いてあったスマホを取り上げ、時間を確認した。
「っ・・・・・・!」
もう、たいした声が出なかった。
スマホの画面には一〇二四と数字が並んでいる。
もう、十時二十四分だ。
学校はもう二時間目が始まっている。
私は急がなければと思い、制服を着て朝ご飯を食べたり、髪の毛を結ぶために一回に降りた。
台所には、お母さんや弟の碧唯、そしてお父さんまでもが朝ごはんを食べた痕跡が残っていた。
今日は私はスープを作っていない。
なのによく見ると、スープのお皿がお盆の上に乗っかっていた。
きっと誰かが作ってくれたのだろう。
私は不思議に思いながらも鍋を温めその後、お皿にスープをいれ自分の朝ご飯の支度をした。
一人で「いただきます。」といい、食べ始める。
そして誰かがつくったのであろうスープを口にした瞬間、今まで忘れていた何かが思い起こされたような感覚になった。
小さいころよく食べた懐かしい味。
お母さんの作ったスープだとすぐに分かった。
なぜか、涙が出てきた。
最近はずっと泣いてばかりだ。
だけどこの涙は今までの涙とはどこか、違う気がした。
言葉にできないような感情が広まっていく・・・。
そして私はいつの間にか
「お母さんっ。」
と絞り出すような声で言っていた。
収拾のつかない気持ちがあふれていて、もうずっと泣いていた。
ふと正面を見ると窓ガラスに目の腫れたみっともない顔が映った。
今日は先生が何をして、どうなっているかもわからないし、この顔で学校には行きたくなかったので休むことにした。
下を見るといつの間にか空になっている食器が並んでいた。
何となく見ていると不意に
「私、本当は昔のようになりたいって思ってるのかな。」
とよく自分でもわからないことを思った。
でも、心になぜか引っかかった。
食器を片付けてソファに座りさっき思ったことをもう一度よう考えてみた。
目をつぶり、私の気持ちと向き合ってみる。
『私は、今まで本当はどう思っていたんだろう。
今まで私は・・・逃げてきた。
それは、小学校の時に言われた言葉が怖かったから。
もうあんなことを聞きたくなかったから。
だから逃げてきた。
今まですごく信用してきた人に裏切られたから。
全部、今までのことがあの人たちによってつくられていたお話・・・、作り話だったっていうことが信じられなかったから。
笑顔も、言葉も私に向けて作られた演技だったから。
信用するまではものすごく時間がかかったはずなのに、信用するために時間をかけてきたはずだったのに、裏切るときは本当に一瞬で、本当にいくつかの言葉で跡形もなく壊れていくこと、目の前が真っ暗になっていくことがわかって人間の怖さが分かったから。
人は何を考えているかわからなくて、信用しても裏切られるかもしれないからもうなにもかもが敵のように思えてきて、人の言葉全てが全くの嘘のように聞こえて怖くて仕方がなかったから。
逃げるしかなかった。
でも・・・。本当に逃げるしかなかったのだろうか。
―――――私は、怖いといって逃げているだけで何も向き合っていない。
そうだ。逃げるのは仕方がないと自分で自分の周りにバリアをつくって守っていた。
本当は・・・本当はものすごく弱いのに強くなろうとせず逃げていた。
弱い気持ち・・・もうあんな言葉を聞きたくないと、
もう人に裏切られたくないと、
そんな気持ちを最優先にしてきた。
心のどこかでは、”変わらないといけない”って、”いつまでの守りに入っていてはいけない”ってわかっていたはずなのにそんな気持ちを私は見て見ぬふりをしては心の奥底にしまいこんで隠していた。
今思ってみれば、そうやって隠していたらいつまでたっても逃げているだけで、過去のことから身を守り続け、何も変わることができず、新しい自分に一歩も踏み出すことができずに最後まで困ってしまうのは結局自分なのに・・・。
本当に、馬鹿だ。
もうあんなことを経験したくないのなら、まずはその経験に対して意地でもけりをつけて、相手のことより、自分が直すべきことを考えていかないと行かないはずだ。
きっと・・・きっとそうやって毎日少しずつ、一歩ずつ進んでいけばやがて百歩になり、千歩へと増えていき積み重ねていくうちに成長していくことができるはずだ。
逃げていても何も始まらない。
そして今は、広瀬君に・・・、歩ちゃんに信用できる人は必ずいるんだよって、あの時は出会えていなかっただけであって、必ずどこかで信用できる大切な仲間に出会えるんだよって教えてもらい、そんな仲間とともに進んでいけるんだから。
もう一人じゃなく、相談できる人、つらいときに手を差し伸べてくれる人がいるんだから、大丈夫なはずだ。
そしてあとは、家族とのことだ。
広瀬君は私に対して、ヒントをくれたと思う。
”家族との境界線は何かしらのすれ違いを解消すれば、きっと消えるはずだよ。
死ななければ・・・生きていればなんだってどうにかできるんだよ!”
―――――と。
確かに死んでしまったらもう何もできない。
やり直したくてもできない。
きっと、今考えれば、あの時死んでしまっていたらきっと今私は後悔している。
あのあと、こんなことをしてあんなことをして問題を解決していって・・・
挫折したって頑張って根気強く立ち上がって頑張っていつか成功したときにまた一からやり直せば、変われていたかもしれないのに・・・って、あの時目の前の苦しみから逃れて、最後まで逃げたことを悔しんでいたと思う。
だから、生きて、頑張って命の終わりの最後まで生きる。
そして、広瀬君の言葉のうちの”何かしらのすれ違い”が何かを見つけ、向き合い、解消していく。
で、問題が解決した後、また小さいときのように心から笑い合って、たくさん話をしていきたい。
見えない境界線を消していきたい。
だから、どうにか話し合おう。
誰にも話していない心のうちを話し合ってみよう。』
そうして私は今。
・・・・・・たった今、ようやく自分という私自身が一番理解しないといけない人を理解できた。
ううん。まだ理解しきれていない部分もたくさんあるかもしれない。
だけど、とりあえずは今私に必要な、私が今理解しておくべき部分は理解できたと思う。
だから大丈夫なはずだ。
私は、「あと・・・」といって
【もう誰と何をしても変わらない気がしてきた。
歩ちゃん、助けて、
もう私、情けなくなってくるくらい何も考えられないや。。
返信、待ってる。】
などと、先生に話に行った時のことを話し、どうすればいいのか聞いた時の答えを知るために部屋に行き、スマホを開いた。
スマホを見ると、歩ちゃんからのメッセージが二件、そして広瀬君からの着信がなんと十件近く来ていた。
電話をくれた時間を見てみると、十分おきに着信してくれていたことが分かった。
『どうしたのかな・・・。』
と広瀬君のことも心配になったが、私は今学校をさぼっている。
つまり、広瀬君も歩ちゃんも今は学校だから電話をかけなおしても応じることはできない。
ということで歩ちゃんからきているメッセージのほうを確認した。
【優笑ちゃん頑張ったんだね。
本当にすごいよ!
もう、先生に話すことができた時点で何かが変わろうとしていて、今回だって結果が良くなかっただけであって、先生は優笑の話を一応って感じだけど知ることができて、また緑ちゃん達に話を聞くことになった。
これは、優笑ちゃんが先生に話さなかったら起きていない出来事でしょ?
だから、何かしら変わっているんだよ!
今は事が良くない方向に進んでいるみたいで、何をどうしていけばいいのかわからなくなってパニックになってるかもだけど、前にも言ったように一回深呼吸してみて!
そして、優笑ちゃんは全く情けなくなんかないから、一回自分が本当にどんなことを考えているのかを思い返してみな!
そうしたら、本当に自分がどうするべきなのかわかると思うよ!
優笑ちゃんはずっと頑張ってるから、きっともう少しで光が見えてきて、だんだんいい方向に向かってくるよ!
だから、いい方向に向かっていくチャンスを逃さないように一つ一つのことに向き合って頑張れ。
また何かあったら話してね!】
という事だった。
「歩ちゃん・・・。」
本当に歩ちゃんに聞いてよかったなと思った。
今のメッセージで、さっき私が考えていたことは間違ってないんだって、自分自身と向き合ってみて正解だったんだっていう事が分かった。
そして、勇気が出てきた。
私は歩ちゃんに、
【確かにそうだね・・・!
私、今日先生が緑ちゃん達に話しただろうなって思って・・・なんか怖くなって学校に行かなかったんだ。
ずる休み、しちゃった。
でも、その分しっかり自分と向き合ってみたんだ。
そしたら、”家族のことも、友達とのことも色々、逃げていてもいいことないんだ。”とか、
”なんで今まで逃げてしまっていたのか、”とかっていう事の答えが分かってきて、なんか少し自分のことが理解できてきて、
これからどうにかして前向きにまた頑張ってけるような気がしたんだ。
だから、本当にありがとう。
私、また頑張るね。
また何かあったらメッセージするかもしれない。
その時はまたよろしくお願いします。
〈家族のことについて〉
今まで、話せてなかったから話しておくね。
私、なんか気づかない間に家族との間に境界線みたいなのができちゃててさ、そのせいでなんかあ母さんとか弟の碧唯とかの間に変な壁がある感じで、うまく話せてないんだ。
広瀬君には、”家族との境界線は何かしらのすれ違いを解消すれば、きっと消えるはずだよ。”って言われて、歩ちゃんに言われて今日考えてみて、
『広瀬君の言葉の”何かしらのすれ違い”が何かを見つけ、向き合い、解消していく。
そして、問題が解決した後、また小さいときのように心から笑い合って、たくさん話をしていきたい。
見えない境界線を消していきたい。
だから、どうにか話し合おう。
誰にも話していない心のうちを話し合ってみよう。』
っていう考えにたどり着けたんだ。
まだ、私的に緑ちゃんのことも残ってるし、頭の中で具体的にどんなことをするのかも何も考えていないから実践していくのは先のことになりそうなんだけど・・・。
とにかく、こんな感じのことがあったんだ。
ちょっと内容がごちゃごちゃしちゃって分かりにくいかも。
ごめん。】
と返した。
そのあとは何となく、といった感じで時間を過ごしていた。
すると夕方、スマホから「プルルルル・・・プルルルル・・・」と電話の音がした。
まさかと思って画面を見てみると案の定”sora★”と書かれていた。
私は、今日のことを話したかったこともあり、通話ボタンを押した。
「―――――、もしもし広瀬君?
電話、今まで気づいてなくて、出れなかった。
ごめん。」
「あ、優笑?
ううん。大丈夫だよ。
気にしないで!
・・・・・・それより、今日学校来てなかったんだけど、大丈夫?
俺、心配で、めっちゃ電話かけちゃった。アハハ・・・。」
「そうだったんだ・・・。
心配かけてごめん。
大丈夫だよ。
今日は、先生が緑ちゃん達に話しただろうなって思って・・・なんか怖くなって学校に行けなかったんだ。
だけどね、私一回自分ともう一回本音で向き合ってみようと思って考えてたんだ。
そしたら、なんか自分がなんで怖くなるのかとか、なんで逃げちゃうのかとかっていう本当の気持ちが多分だけど分かったんだ。
私、また頑張って、最後まであの緑ちゃんたちのことに向き合おうって思った。
あと、広瀬君が言ってくれたように家族と心のうちのことを話し合って、何かしらのすれ違いを見つけて解決していきたいなって思った。
だから、本当にありがとう。
これからもよろしくお願いします。」
「そっか・・・!
良かった。
優笑の力になれてたんだったら、俺も嬉しい。
またなんかあったら、すぐ頼ってくれていいからね。
俺も、優笑の手伝いもするから、家族のことも緑ちゃんたちのことも頑張って!」
「うん。ありがとう!
頑張るね!
明日は絶対学校に行くから。
緑ちゃんたちのことできっと何かしらあると思うから、その時はまた話すね。」
「了解。
じゃまた明日ね。
学校で待ってる!」
「うん。また明日。」
そして、”プツリ”と音を立てて電話が切れた。
『明日は何があるか分からないけど、広瀬君が学校にいる。
しかも、私も少し変われたからきっと大丈夫なはず。
何かあっても私には味方が少なからずついてくれている。
だから、頑張って学校に行く。』
私はそう心の中でつぶやいた。
もうすぐで夜ご飯だ。
まだ、すぐには何かをすることはできないけど、家族としっかりご飯を食べよう。
そう決めて私はリビングに向かった。
やっぱりもう怖さはほとんどなかった。
学校に行かなかったのは悪いことだけど、私にとってはいい機会になったと思う。
今日の出来事のおかげで、私は一歩明るい未来へと続いている道に踏み出せたと思った。
途中で鏡を見た。
私の顔はもう今までとは少し違って明るい顔になっていた気がした―――――。
そんな音がして私は飛び起き何事かと思い窓の外を見た。
すると、近くの電柱の工事が始まっていた。
「そういえば、
”電柱柱の工事をするため大きな音が出てしまいます。
ご協力のほどご協力お願いします。”
みたいな手紙、この間届いてたな・・・。」
そんなことをつぶやいて目をこすった。
そして足元に目を移すと
「―――――やっば!
なんか今日はのんびりしてるなって思ったら、学校じゃん!
忘れてた!」
中学校のバッグが置かれていた。
そういえば、昨日は歩ちゃんに連絡をして、アラームも何もかけずに寝てしまった。
急いで床に置いてあったスマホを取り上げ、時間を確認した。
「っ・・・・・・!」
もう、たいした声が出なかった。
スマホの画面には一〇二四と数字が並んでいる。
もう、十時二十四分だ。
学校はもう二時間目が始まっている。
私は急がなければと思い、制服を着て朝ご飯を食べたり、髪の毛を結ぶために一回に降りた。
台所には、お母さんや弟の碧唯、そしてお父さんまでもが朝ごはんを食べた痕跡が残っていた。
今日は私はスープを作っていない。
なのによく見ると、スープのお皿がお盆の上に乗っかっていた。
きっと誰かが作ってくれたのだろう。
私は不思議に思いながらも鍋を温めその後、お皿にスープをいれ自分の朝ご飯の支度をした。
一人で「いただきます。」といい、食べ始める。
そして誰かがつくったのであろうスープを口にした瞬間、今まで忘れていた何かが思い起こされたような感覚になった。
小さいころよく食べた懐かしい味。
お母さんの作ったスープだとすぐに分かった。
なぜか、涙が出てきた。
最近はずっと泣いてばかりだ。
だけどこの涙は今までの涙とはどこか、違う気がした。
言葉にできないような感情が広まっていく・・・。
そして私はいつの間にか
「お母さんっ。」
と絞り出すような声で言っていた。
収拾のつかない気持ちがあふれていて、もうずっと泣いていた。
ふと正面を見ると窓ガラスに目の腫れたみっともない顔が映った。
今日は先生が何をして、どうなっているかもわからないし、この顔で学校には行きたくなかったので休むことにした。
下を見るといつの間にか空になっている食器が並んでいた。
何となく見ていると不意に
「私、本当は昔のようになりたいって思ってるのかな。」
とよく自分でもわからないことを思った。
でも、心になぜか引っかかった。
食器を片付けてソファに座りさっき思ったことをもう一度よう考えてみた。
目をつぶり、私の気持ちと向き合ってみる。
『私は、今まで本当はどう思っていたんだろう。
今まで私は・・・逃げてきた。
それは、小学校の時に言われた言葉が怖かったから。
もうあんなことを聞きたくなかったから。
だから逃げてきた。
今まですごく信用してきた人に裏切られたから。
全部、今までのことがあの人たちによってつくられていたお話・・・、作り話だったっていうことが信じられなかったから。
笑顔も、言葉も私に向けて作られた演技だったから。
信用するまではものすごく時間がかかったはずなのに、信用するために時間をかけてきたはずだったのに、裏切るときは本当に一瞬で、本当にいくつかの言葉で跡形もなく壊れていくこと、目の前が真っ暗になっていくことがわかって人間の怖さが分かったから。
人は何を考えているかわからなくて、信用しても裏切られるかもしれないからもうなにもかもが敵のように思えてきて、人の言葉全てが全くの嘘のように聞こえて怖くて仕方がなかったから。
逃げるしかなかった。
でも・・・。本当に逃げるしかなかったのだろうか。
―――――私は、怖いといって逃げているだけで何も向き合っていない。
そうだ。逃げるのは仕方がないと自分で自分の周りにバリアをつくって守っていた。
本当は・・・本当はものすごく弱いのに強くなろうとせず逃げていた。
弱い気持ち・・・もうあんな言葉を聞きたくないと、
もう人に裏切られたくないと、
そんな気持ちを最優先にしてきた。
心のどこかでは、”変わらないといけない”って、”いつまでの守りに入っていてはいけない”ってわかっていたはずなのにそんな気持ちを私は見て見ぬふりをしては心の奥底にしまいこんで隠していた。
今思ってみれば、そうやって隠していたらいつまでたっても逃げているだけで、過去のことから身を守り続け、何も変わることができず、新しい自分に一歩も踏み出すことができずに最後まで困ってしまうのは結局自分なのに・・・。
本当に、馬鹿だ。
もうあんなことを経験したくないのなら、まずはその経験に対して意地でもけりをつけて、相手のことより、自分が直すべきことを考えていかないと行かないはずだ。
きっと・・・きっとそうやって毎日少しずつ、一歩ずつ進んでいけばやがて百歩になり、千歩へと増えていき積み重ねていくうちに成長していくことができるはずだ。
逃げていても何も始まらない。
そして今は、広瀬君に・・・、歩ちゃんに信用できる人は必ずいるんだよって、あの時は出会えていなかっただけであって、必ずどこかで信用できる大切な仲間に出会えるんだよって教えてもらい、そんな仲間とともに進んでいけるんだから。
もう一人じゃなく、相談できる人、つらいときに手を差し伸べてくれる人がいるんだから、大丈夫なはずだ。
そしてあとは、家族とのことだ。
広瀬君は私に対して、ヒントをくれたと思う。
”家族との境界線は何かしらのすれ違いを解消すれば、きっと消えるはずだよ。
死ななければ・・・生きていればなんだってどうにかできるんだよ!”
―――――と。
確かに死んでしまったらもう何もできない。
やり直したくてもできない。
きっと、今考えれば、あの時死んでしまっていたらきっと今私は後悔している。
あのあと、こんなことをしてあんなことをして問題を解決していって・・・
挫折したって頑張って根気強く立ち上がって頑張っていつか成功したときにまた一からやり直せば、変われていたかもしれないのに・・・って、あの時目の前の苦しみから逃れて、最後まで逃げたことを悔しんでいたと思う。
だから、生きて、頑張って命の終わりの最後まで生きる。
そして、広瀬君の言葉のうちの”何かしらのすれ違い”が何かを見つけ、向き合い、解消していく。
で、問題が解決した後、また小さいときのように心から笑い合って、たくさん話をしていきたい。
見えない境界線を消していきたい。
だから、どうにか話し合おう。
誰にも話していない心のうちを話し合ってみよう。』
そうして私は今。
・・・・・・たった今、ようやく自分という私自身が一番理解しないといけない人を理解できた。
ううん。まだ理解しきれていない部分もたくさんあるかもしれない。
だけど、とりあえずは今私に必要な、私が今理解しておくべき部分は理解できたと思う。
だから大丈夫なはずだ。
私は、「あと・・・」といって
【もう誰と何をしても変わらない気がしてきた。
歩ちゃん、助けて、
もう私、情けなくなってくるくらい何も考えられないや。。
返信、待ってる。】
などと、先生に話に行った時のことを話し、どうすればいいのか聞いた時の答えを知るために部屋に行き、スマホを開いた。
スマホを見ると、歩ちゃんからのメッセージが二件、そして広瀬君からの着信がなんと十件近く来ていた。
電話をくれた時間を見てみると、十分おきに着信してくれていたことが分かった。
『どうしたのかな・・・。』
と広瀬君のことも心配になったが、私は今学校をさぼっている。
つまり、広瀬君も歩ちゃんも今は学校だから電話をかけなおしても応じることはできない。
ということで歩ちゃんからきているメッセージのほうを確認した。
【優笑ちゃん頑張ったんだね。
本当にすごいよ!
もう、先生に話すことができた時点で何かが変わろうとしていて、今回だって結果が良くなかっただけであって、先生は優笑の話を一応って感じだけど知ることができて、また緑ちゃん達に話を聞くことになった。
これは、優笑ちゃんが先生に話さなかったら起きていない出来事でしょ?
だから、何かしら変わっているんだよ!
今は事が良くない方向に進んでいるみたいで、何をどうしていけばいいのかわからなくなってパニックになってるかもだけど、前にも言ったように一回深呼吸してみて!
そして、優笑ちゃんは全く情けなくなんかないから、一回自分が本当にどんなことを考えているのかを思い返してみな!
そうしたら、本当に自分がどうするべきなのかわかると思うよ!
優笑ちゃんはずっと頑張ってるから、きっともう少しで光が見えてきて、だんだんいい方向に向かってくるよ!
だから、いい方向に向かっていくチャンスを逃さないように一つ一つのことに向き合って頑張れ。
また何かあったら話してね!】
という事だった。
「歩ちゃん・・・。」
本当に歩ちゃんに聞いてよかったなと思った。
今のメッセージで、さっき私が考えていたことは間違ってないんだって、自分自身と向き合ってみて正解だったんだっていう事が分かった。
そして、勇気が出てきた。
私は歩ちゃんに、
【確かにそうだね・・・!
私、今日先生が緑ちゃん達に話しただろうなって思って・・・なんか怖くなって学校に行かなかったんだ。
ずる休み、しちゃった。
でも、その分しっかり自分と向き合ってみたんだ。
そしたら、”家族のことも、友達とのことも色々、逃げていてもいいことないんだ。”とか、
”なんで今まで逃げてしまっていたのか、”とかっていう事の答えが分かってきて、なんか少し自分のことが理解できてきて、
これからどうにかして前向きにまた頑張ってけるような気がしたんだ。
だから、本当にありがとう。
私、また頑張るね。
また何かあったらメッセージするかもしれない。
その時はまたよろしくお願いします。
〈家族のことについて〉
今まで、話せてなかったから話しておくね。
私、なんか気づかない間に家族との間に境界線みたいなのができちゃててさ、そのせいでなんかあ母さんとか弟の碧唯とかの間に変な壁がある感じで、うまく話せてないんだ。
広瀬君には、”家族との境界線は何かしらのすれ違いを解消すれば、きっと消えるはずだよ。”って言われて、歩ちゃんに言われて今日考えてみて、
『広瀬君の言葉の”何かしらのすれ違い”が何かを見つけ、向き合い、解消していく。
そして、問題が解決した後、また小さいときのように心から笑い合って、たくさん話をしていきたい。
見えない境界線を消していきたい。
だから、どうにか話し合おう。
誰にも話していない心のうちを話し合ってみよう。』
っていう考えにたどり着けたんだ。
まだ、私的に緑ちゃんのことも残ってるし、頭の中で具体的にどんなことをするのかも何も考えていないから実践していくのは先のことになりそうなんだけど・・・。
とにかく、こんな感じのことがあったんだ。
ちょっと内容がごちゃごちゃしちゃって分かりにくいかも。
ごめん。】
と返した。
そのあとは何となく、といった感じで時間を過ごしていた。
すると夕方、スマホから「プルルルル・・・プルルルル・・・」と電話の音がした。
まさかと思って画面を見てみると案の定”sora★”と書かれていた。
私は、今日のことを話したかったこともあり、通話ボタンを押した。
「―――――、もしもし広瀬君?
電話、今まで気づいてなくて、出れなかった。
ごめん。」
「あ、優笑?
ううん。大丈夫だよ。
気にしないで!
・・・・・・それより、今日学校来てなかったんだけど、大丈夫?
俺、心配で、めっちゃ電話かけちゃった。アハハ・・・。」
「そうだったんだ・・・。
心配かけてごめん。
大丈夫だよ。
今日は、先生が緑ちゃん達に話しただろうなって思って・・・なんか怖くなって学校に行けなかったんだ。
だけどね、私一回自分ともう一回本音で向き合ってみようと思って考えてたんだ。
そしたら、なんか自分がなんで怖くなるのかとか、なんで逃げちゃうのかとかっていう本当の気持ちが多分だけど分かったんだ。
私、また頑張って、最後まであの緑ちゃんたちのことに向き合おうって思った。
あと、広瀬君が言ってくれたように家族と心のうちのことを話し合って、何かしらのすれ違いを見つけて解決していきたいなって思った。
だから、本当にありがとう。
これからもよろしくお願いします。」
「そっか・・・!
良かった。
優笑の力になれてたんだったら、俺も嬉しい。
またなんかあったら、すぐ頼ってくれていいからね。
俺も、優笑の手伝いもするから、家族のことも緑ちゃんたちのことも頑張って!」
「うん。ありがとう!
頑張るね!
明日は絶対学校に行くから。
緑ちゃんたちのことできっと何かしらあると思うから、その時はまた話すね。」
「了解。
じゃまた明日ね。
学校で待ってる!」
「うん。また明日。」
そして、”プツリ”と音を立てて電話が切れた。
『明日は何があるか分からないけど、広瀬君が学校にいる。
しかも、私も少し変われたからきっと大丈夫なはず。
何かあっても私には味方が少なからずついてくれている。
だから、頑張って学校に行く。』
私はそう心の中でつぶやいた。
もうすぐで夜ご飯だ。
まだ、すぐには何かをすることはできないけど、家族としっかりご飯を食べよう。
そう決めて私はリビングに向かった。
やっぱりもう怖さはほとんどなかった。
学校に行かなかったのは悪いことだけど、私にとってはいい機会になったと思う。
今日の出来事のおかげで、私は一歩明るい未来へと続いている道に踏み出せたと思った。
途中で鏡を見た。
私の顔はもう今までとは少し違って明るい顔になっていた気がした―――――。