9月に入ったが、まだまだ夏の暑さが残っている。今年の夏も暑かったせいか、身体が怠くて疲労が蓄積しているみたいな感じだ。秋谷幸雄とは6月15日(火)に東京で密会してすぐに昔の間柄に戻った。彼とはそれから2回も会うことになった。
7月13日(火)が2回目の密会だった。私の誘いに彼はすぐに応えてくれて、また違うところを案内してくれた。確か、明治神宮と表参道、原宿、そして渋谷を案内してくれた。食事は渋谷のホテルのダイニングルームをとってくれた。事前に案内場所を知らせてくれたので家族には前に行って気に入ったので、今度は一人で表参道と原宿にショッピングに行くと話しておいた。
8月18日(水)には東京へ3回目の密会に出かけた。ただ、今度はお盆の夏休みに合わせて東京でミニ同窓会があるので出席するということにした。今度は新宿御苑、歌舞伎町、新宿副都心と都庁などを見てまわった。夕食は副都心のホテルのダイニングで摂った。副都心の夜景が素晴らしかった。宿泊場所はいつも同じ東京駅のホテルのツインをとっていた。
彼は必ず私をホテルまで送ってくれて朝まで一緒に過ごしてくれた。そして何度も何度も愛し合った。私には毎回新しい愛人に会うような新鮮さがあった。それが身体と心を満たしてくれた。彼に再会したことで、また、密会を重ねるごとに、満たされていなかったものが満たされていった。
一方、このままでよいのだろうかとの不安な気持ちも芽生えた。一度こんな不安が芽生えるとたちまちに心を侵食し始めた。彼を思い詰めるとますます不安が広がっていくようになった。
どうしたものかと考えたが、相談するのに誰か差しさわりのない人がいないかと思ったら、中川直美さんを思い出した。彼女は実家の母親の様子を見に2~3か月に一回くらい帰省していると聞いていた。また、秋谷さんが東京へ遊びに来ないかと誘ってくれた時に、そばにいて、心配そうな顔をして聞いていた。それで思いたって、昼休みに電話してみた。
「お久しぶり。同窓会以来ですね。お元気ですか? 今度いつ帰省しますか? 会って食事でもしませんか? ちょっと相談したいこともあるから」
「9月10 日(金)から2泊3日で帰省します。10日(金)か11日(土)のどちらかの晩ならいいわ? 私も母親のことで話を聞いてもらいたいから」
「ちょっと待って、予定を見るから・・・・・10日(金)は日勤だから午後6時30分でどうですか? 食事の場所は駅の近くに私が予約しておきます。後からメールで連絡します」
◆ ◆ ◆
9月10日(金)約束した和食レストランに中川直美さんが来てくれた。
「わざわざありがとう。忙しいのに呼び出してごめんなさい。今日は私にご馳走させてください。お母様の様子はどうですか?」
「どうって、ちょうどよかった。誰かに愚痴をきいてもらいたかったから。もう一人ではできないのに、私が片付けるというと、片付ける場所が違うとか、捨てるというと、しまっておくとか言って、言うことを聞かなくて困っています」
「うちは両親のことはノータッチにしています。それでなくても何やからと口出しをしてきて困っています。夫もそれをとても嫌がっています」
「同居しているの?」
「一応は二世帯住宅にはなっているけど、しょっちゅうかまってくる。実の親子だからなんとか我慢しているけど、お嫁さんだったら、きっと出て行っていると思う」
「でもお子さんの面倒を見てもらっているんでしょう?」
「ええ、それくらいはしてもらわないと、近くに住んでいる意味がないわ」
「それなりの苦労はあるのね。私は子供が生まれても夫と二人だけで大変だったわ」
「その方が気楽でよかったかもね。それで少し相談に乗ってもらいたいの。ここのところ悩んでいて、あなたなら秘密厳守で相談に乗ってもらえそうだから、お願い聞いてくれる」
「いいけど、私でよかったら」
私は誰かにこの悩みを聞いてほしかった。それから直美には高校の時からの秋谷さんとのことを話した。親に反対されて別れたこと、彼と思い出旅行に行って男女の関係になったこと、それから同窓会で会って、東京を訪ねて元の間柄に戻ってしまったことなどを隠さずに話した。
「それから、直美さんには1回目に東京へ行った時の口実に一緒に行ったことにしました。ごめんなさい。それから8月には東京でミニ同窓会を開いたことにしてあって、直美さんも出席したことにしてあります」
「しかたないわね。アリバイ作りには協力します。それで結構会っているみたいだけど」
「6月、7月、8月に1回ずつ、あれから毎月会っています」
「今までの話からは、結構、用意周到に会っている感じはするけど、ちょっと回数が多すぎない。いくら理由があってもご主人に変だと思われないかな?」
「今のところは大丈夫みたいだけど、私の気持ちが?」
「そこが相談したいところなのね」
「ええ、あの別れた時に気持ちの整理がついていたはずなんだけど、密会を重ねると、昔のことを後悔したり、会いたい気持ちは募るし、いっそ今の夫と別れてしまおうかとも考えたこともあったの。でも夫と別れることなんかできない。会いたいと身体が求めているような気もして、どうしたらいいのか分からなくなって」
「浮気じゃなくて本気に近いということ?」
「浮気という言葉も本気という言葉も合っていないような気がするけど、その中間という感じかな」
「そうね、それ以上を望むならお互いに相当な覚悟がいるわ。それで二人幸せになれる保証などどこにもないし、そういう結末って良いことはないと思う。でも相手の気持ちをもう一度確かめておいた方が良いけど、今までの話から彼もきっと同じ気持ちだと思うわ」
「じゃあ、これからどうしたら良いのかしら、どう思う?」
「もしこのまま二人の関係を大切にしたいなら、結論を急がないで、パートナーにも絶対に分からないようにして、会い続けるしかないと思う。できるだけ露見しないように細心の注意を払って」
「やはり、それしかにないのね。私の結論もそれに近いから」
「でも毎月会うのは多すぎると思う。私がアリバイ工作で協力ができるとしても限りがあるし、せいぜい2~3か月に1回ぐらいにした方が無難だと思うけど。それに二人で一緒に東京見物や外での会食は控えるべきだと思う。もし、ご主人が疑って探偵事務所にでも調査を依頼したら必ず露見するから」
「ありがとう、気を付けるわ」
「いずれ、このことは時間が解決してくれると思う。18年間も燻っていたものがすぐになくなるとは思えないから」
「ありがとう。話を聞いてもらって気持ちが楽になりました。また、相談に乗ってくれますか?」
「ええ、私でよければ、2~3か月に1回は帰省しているから声をかけて」
誰かに聞いてもらえてよかった。それが直美さんでよかった。親身になって忌憚のない意見を言ってもらえた。私もいろいろ考え悩んだけど、概ねの彼女の考えと同じだった。それが私の心を落ち着かせてくれた。
7月13日(火)が2回目の密会だった。私の誘いに彼はすぐに応えてくれて、また違うところを案内してくれた。確か、明治神宮と表参道、原宿、そして渋谷を案内してくれた。食事は渋谷のホテルのダイニングルームをとってくれた。事前に案内場所を知らせてくれたので家族には前に行って気に入ったので、今度は一人で表参道と原宿にショッピングに行くと話しておいた。
8月18日(水)には東京へ3回目の密会に出かけた。ただ、今度はお盆の夏休みに合わせて東京でミニ同窓会があるので出席するということにした。今度は新宿御苑、歌舞伎町、新宿副都心と都庁などを見てまわった。夕食は副都心のホテルのダイニングで摂った。副都心の夜景が素晴らしかった。宿泊場所はいつも同じ東京駅のホテルのツインをとっていた。
彼は必ず私をホテルまで送ってくれて朝まで一緒に過ごしてくれた。そして何度も何度も愛し合った。私には毎回新しい愛人に会うような新鮮さがあった。それが身体と心を満たしてくれた。彼に再会したことで、また、密会を重ねるごとに、満たされていなかったものが満たされていった。
一方、このままでよいのだろうかとの不安な気持ちも芽生えた。一度こんな不安が芽生えるとたちまちに心を侵食し始めた。彼を思い詰めるとますます不安が広がっていくようになった。
どうしたものかと考えたが、相談するのに誰か差しさわりのない人がいないかと思ったら、中川直美さんを思い出した。彼女は実家の母親の様子を見に2~3か月に一回くらい帰省していると聞いていた。また、秋谷さんが東京へ遊びに来ないかと誘ってくれた時に、そばにいて、心配そうな顔をして聞いていた。それで思いたって、昼休みに電話してみた。
「お久しぶり。同窓会以来ですね。お元気ですか? 今度いつ帰省しますか? 会って食事でもしませんか? ちょっと相談したいこともあるから」
「9月10 日(金)から2泊3日で帰省します。10日(金)か11日(土)のどちらかの晩ならいいわ? 私も母親のことで話を聞いてもらいたいから」
「ちょっと待って、予定を見るから・・・・・10日(金)は日勤だから午後6時30分でどうですか? 食事の場所は駅の近くに私が予約しておきます。後からメールで連絡します」
◆ ◆ ◆
9月10日(金)約束した和食レストランに中川直美さんが来てくれた。
「わざわざありがとう。忙しいのに呼び出してごめんなさい。今日は私にご馳走させてください。お母様の様子はどうですか?」
「どうって、ちょうどよかった。誰かに愚痴をきいてもらいたかったから。もう一人ではできないのに、私が片付けるというと、片付ける場所が違うとか、捨てるというと、しまっておくとか言って、言うことを聞かなくて困っています」
「うちは両親のことはノータッチにしています。それでなくても何やからと口出しをしてきて困っています。夫もそれをとても嫌がっています」
「同居しているの?」
「一応は二世帯住宅にはなっているけど、しょっちゅうかまってくる。実の親子だからなんとか我慢しているけど、お嫁さんだったら、きっと出て行っていると思う」
「でもお子さんの面倒を見てもらっているんでしょう?」
「ええ、それくらいはしてもらわないと、近くに住んでいる意味がないわ」
「それなりの苦労はあるのね。私は子供が生まれても夫と二人だけで大変だったわ」
「その方が気楽でよかったかもね。それで少し相談に乗ってもらいたいの。ここのところ悩んでいて、あなたなら秘密厳守で相談に乗ってもらえそうだから、お願い聞いてくれる」
「いいけど、私でよかったら」
私は誰かにこの悩みを聞いてほしかった。それから直美には高校の時からの秋谷さんとのことを話した。親に反対されて別れたこと、彼と思い出旅行に行って男女の関係になったこと、それから同窓会で会って、東京を訪ねて元の間柄に戻ってしまったことなどを隠さずに話した。
「それから、直美さんには1回目に東京へ行った時の口実に一緒に行ったことにしました。ごめんなさい。それから8月には東京でミニ同窓会を開いたことにしてあって、直美さんも出席したことにしてあります」
「しかたないわね。アリバイ作りには協力します。それで結構会っているみたいだけど」
「6月、7月、8月に1回ずつ、あれから毎月会っています」
「今までの話からは、結構、用意周到に会っている感じはするけど、ちょっと回数が多すぎない。いくら理由があってもご主人に変だと思われないかな?」
「今のところは大丈夫みたいだけど、私の気持ちが?」
「そこが相談したいところなのね」
「ええ、あの別れた時に気持ちの整理がついていたはずなんだけど、密会を重ねると、昔のことを後悔したり、会いたい気持ちは募るし、いっそ今の夫と別れてしまおうかとも考えたこともあったの。でも夫と別れることなんかできない。会いたいと身体が求めているような気もして、どうしたらいいのか分からなくなって」
「浮気じゃなくて本気に近いということ?」
「浮気という言葉も本気という言葉も合っていないような気がするけど、その中間という感じかな」
「そうね、それ以上を望むならお互いに相当な覚悟がいるわ。それで二人幸せになれる保証などどこにもないし、そういう結末って良いことはないと思う。でも相手の気持ちをもう一度確かめておいた方が良いけど、今までの話から彼もきっと同じ気持ちだと思うわ」
「じゃあ、これからどうしたら良いのかしら、どう思う?」
「もしこのまま二人の関係を大切にしたいなら、結論を急がないで、パートナーにも絶対に分からないようにして、会い続けるしかないと思う。できるだけ露見しないように細心の注意を払って」
「やはり、それしかにないのね。私の結論もそれに近いから」
「でも毎月会うのは多すぎると思う。私がアリバイ工作で協力ができるとしても限りがあるし、せいぜい2~3か月に1回ぐらいにした方が無難だと思うけど。それに二人で一緒に東京見物や外での会食は控えるべきだと思う。もし、ご主人が疑って探偵事務所にでも調査を依頼したら必ず露見するから」
「ありがとう、気を付けるわ」
「いずれ、このことは時間が解決してくれると思う。18年間も燻っていたものがすぐになくなるとは思えないから」
「ありがとう。話を聞いてもらって気持ちが楽になりました。また、相談に乗ってくれますか?」
「ええ、私でよければ、2~3か月に1回は帰省しているから声をかけて」
誰かに聞いてもらえてよかった。それが直美さんでよかった。親身になって忌憚のない意見を言ってもらえた。私もいろいろ考え悩んだけど、概ねの彼女の考えと同じだった。それが私の心を落ち着かせてくれた。