おじさんのお陰で私の離婚についての一切が片付いた。そして社員食堂の仕事にもようやく慣れて、平穏な生活が始まっていた。
今日は社員食堂でパーティーがあった。年末に近づくとこのようなパーティーが増えるとのことだった。
アパートに着くと9時だった。パーティーの残りものを持ち帰ってきたので、一緒に食べようと山内さんに電話を入れる。
「何かあったのか?」
「山内さんが元気にしているかと思って?」
「そうか、ありがとう。8時に帰ってきたが、今日は未希の部屋の明かりが点いていないので心配していた」
「今日は社員食堂でパーティーがあったので、今帰ってきたところです。こういうパーティーや歓送迎会が月に2~3回あるので、その時は遅くなります。心配してくれてありがとう。パーティーの残り物ですが、貰ってきました。食べに来ませんか?」
「ありがとう、すぐに行く」
私が新しい職場に勤め始めてからここのところ山内さんは私の部屋に来るのを遠慮しているみたいだった。
職場に慣れるまでと気を使ってくれているのだと思っていた。でも寂しかったので丁度良い機会だ。
「折角だから、ご馳走になるよ」
「本当は持ち帰ってはいけないけど、どうせ捨てるのだから、もったいないでしょう。今日中に食べることで貰って来た」
「仕事はどう?」
「コックをしていた時のようにシフトもないし、働く時間が決まっているから、時間に余裕があります。土日は休みだし、山内さんとデートもできます」
私は冷蔵庫から小さな缶ビールを2本出して、山内さんと私の前に置いた。
「ビールを飲むんだ」
「仕事から帰って食事をするときには、少しだけどお酒を飲みます。山内さんはいつも缶ビールを飲みながらお弁当を食べていましたね。今はなぜビールを飲んでいたのか分かります」
「未希がクリスマスプレゼンにくれたグラス、今も大事に使っているよ。未希がいなくなってからは未希を思い出すので片付けておいたけど、ここのところ、また使い始めた」
「大切にしてくれてありがとう」
「未希との思い出の品だからね」
私は缶ビールを持っている山内さんの手を両手で力一杯握りしめた。山内さんはその上から手を重ねてくれた。
「この唐揚、未希が作ったのか?」
「私が味付けしましたけど、どうですか?」
「おいしい、腕をあげたな。学校に通っていたときよりもうまい」
「ホテルで仕込まれたから、腕は上がったみたい」
「そうか、ホテル勤務が役に立っているのか? 彼を思い出さないか? 別れたことを後悔していないか?」
「一から教えてくれたことは今でも感謝しています。彼を尊敬もしていました。でもそれは料理人として指導者としてでした。私はそのことと好きになるということを混同していたと思います。一生を共にする人としてどうなのかを良く見て考えていませんでした。別れたことを後悔はしていません」
「未希にはそういう目で俺を見てもらいたいと思っている」
「ここしばらく山内さんの言っていることがようやく分かるようになってきました」
「ごちそうさま、明日も仕事だろう。じゃあ、引き上げる」
山内さんが立ち上がるので思わず抱きついた。もう少しいてほしい。
もう少しいたいけど長居してはいけない、山内さんもそう思っているのかもしれない。私を抱き締めてくれる。
「寂しいんです」
「すぐそばにいつもいる。呼べばとんでくる。自立している大人の女だろう。そんな弱音を吐いたらいけない。俺はもう回復しているが、今は我慢する。今度の休みは二人でどこかへ行こうか?」
「うん、久しぶりに二人で出かけたい」
「どこがいい?」
「うーん、銀座のデパートで全国のおいしい料理のフェスタがあると聞いたので、行ってみたい」
「じゃあ、土曜日の10時ごろから出かけようか」
「はい、楽しみにしています」
山内さんは部屋に戻って行った。デートの約束ができたので寂しさを忘れた。土曜日のデートが楽しみで浮き浮きする。恋をしている!
今日は社員食堂でパーティーがあった。年末に近づくとこのようなパーティーが増えるとのことだった。
アパートに着くと9時だった。パーティーの残りものを持ち帰ってきたので、一緒に食べようと山内さんに電話を入れる。
「何かあったのか?」
「山内さんが元気にしているかと思って?」
「そうか、ありがとう。8時に帰ってきたが、今日は未希の部屋の明かりが点いていないので心配していた」
「今日は社員食堂でパーティーがあったので、今帰ってきたところです。こういうパーティーや歓送迎会が月に2~3回あるので、その時は遅くなります。心配してくれてありがとう。パーティーの残り物ですが、貰ってきました。食べに来ませんか?」
「ありがとう、すぐに行く」
私が新しい職場に勤め始めてからここのところ山内さんは私の部屋に来るのを遠慮しているみたいだった。
職場に慣れるまでと気を使ってくれているのだと思っていた。でも寂しかったので丁度良い機会だ。
「折角だから、ご馳走になるよ」
「本当は持ち帰ってはいけないけど、どうせ捨てるのだから、もったいないでしょう。今日中に食べることで貰って来た」
「仕事はどう?」
「コックをしていた時のようにシフトもないし、働く時間が決まっているから、時間に余裕があります。土日は休みだし、山内さんとデートもできます」
私は冷蔵庫から小さな缶ビールを2本出して、山内さんと私の前に置いた。
「ビールを飲むんだ」
「仕事から帰って食事をするときには、少しだけどお酒を飲みます。山内さんはいつも缶ビールを飲みながらお弁当を食べていましたね。今はなぜビールを飲んでいたのか分かります」
「未希がクリスマスプレゼンにくれたグラス、今も大事に使っているよ。未希がいなくなってからは未希を思い出すので片付けておいたけど、ここのところ、また使い始めた」
「大切にしてくれてありがとう」
「未希との思い出の品だからね」
私は缶ビールを持っている山内さんの手を両手で力一杯握りしめた。山内さんはその上から手を重ねてくれた。
「この唐揚、未希が作ったのか?」
「私が味付けしましたけど、どうですか?」
「おいしい、腕をあげたな。学校に通っていたときよりもうまい」
「ホテルで仕込まれたから、腕は上がったみたい」
「そうか、ホテル勤務が役に立っているのか? 彼を思い出さないか? 別れたことを後悔していないか?」
「一から教えてくれたことは今でも感謝しています。彼を尊敬もしていました。でもそれは料理人として指導者としてでした。私はそのことと好きになるということを混同していたと思います。一生を共にする人としてどうなのかを良く見て考えていませんでした。別れたことを後悔はしていません」
「未希にはそういう目で俺を見てもらいたいと思っている」
「ここしばらく山内さんの言っていることがようやく分かるようになってきました」
「ごちそうさま、明日も仕事だろう。じゃあ、引き上げる」
山内さんが立ち上がるので思わず抱きついた。もう少しいてほしい。
もう少しいたいけど長居してはいけない、山内さんもそう思っているのかもしれない。私を抱き締めてくれる。
「寂しいんです」
「すぐそばにいつもいる。呼べばとんでくる。自立している大人の女だろう。そんな弱音を吐いたらいけない。俺はもう回復しているが、今は我慢する。今度の休みは二人でどこかへ行こうか?」
「うん、久しぶりに二人で出かけたい」
「どこがいい?」
「うーん、銀座のデパートで全国のおいしい料理のフェスタがあると聞いたので、行ってみたい」
「じゃあ、土曜日の10時ごろから出かけようか」
「はい、楽しみにしています」
山内さんは部屋に戻って行った。デートの約束ができたので寂しさを忘れた。土曜日のデートが楽しみで浮き浮きする。恋をしている!