今日はおじさんと一緒に学校へ相談に行く日だ。私は1日アルバイトを休んだ。おじさんは午後休暇を取ってくれた。最寄りの平和島駅前で午後3時30分に待ち合わせをした。

私は私服で少し前にここに着いた。おじさんが改札口から出てきたので、すぐに歩いて学校へ向かった。ここから歩いて7分くらいだ。

私は校舎の中に先に入って行って、職員室の石田先生に声をかけた。石田先生はすぐに私のところへ来てくれた。応接室で話を聞いてくれるというので、おじさんを玄関に呼びに行った。

石田先生は私たちを応接室に案内してくれた。すぐにもう一人年配の男の先生が入ってきた。確か副校長だと思った。おじさんが「美崎未希の保護者の山内です」と言って二人と名刺交換をする。

おじさんの名刺を初めてみた。誰でも知っている食品会社だった。お客様相談室主任と書いてあった。結構堅い会社に勤めているんだ。スーツを着てネクタイを締めてきっちりしているので見た目も真面目そうに見える。きっと先生方は信用するだろう。でも食品会社に勤めている割にはいつも弁当ばかり食べているのが解せない。

「お時間をいただきありがとうございます。今日は美崎未希の学業の相談に参りました。まず、私と美崎未希との関係ですが、全くの赤の他人です。彼女が家出しているのを偶然保護しました。家出の理由は本人から話させます」

打ち合わせたとおりに私が話し始める。

「今年の4月に母が亡くなりました。過労が原因とお医者さんが言っていました。父の仕事が定まらないので、母が家計を支えていました。母が亡くなったので私が働くしかなくて、コンビニでアルバイトを始めました。それで学校に来られなくなりました。父が暴力を振って無理やり私の働いたお金を取り上げるので、それがいやになり、11月の終わりごろに家出しました。雨の夜に駅で困っていると山内さんが自分の家に連れ帰ってくれました。父のところへは帰りたくないので、私からお願いして住まわせてもらっています。山内さんは父のところへ行ってくれて、父に私との同居を認めてもらいました」

それからおじさんが話した。

「現在、大田区東雪谷の私のアパートで同居しています。未希は未成年ですので、父親に話して同居を承諾してもらっています。これが父親からもらった同居の承諾書です。念のため申しておきますが、私は保護者として未希を同居させております。気にされていると思いますが、淫行など一切ありません」

「お二人のご関係は分かりました。それで学業について相談したいことはなんですか?」

「未希さんはこの学校では今どういう扱いになっているのでしょうか?」

「授業料が未払いで、通学していないので、長期欠席で休学扱いにしています」

「休学なら、学校へ戻ることはできるのですか?」

「戻るとしても今の3年生へは無理です。欠席日数が多すぎますから」

「それなら、1年遅れて、来年の4月に3年生に復学することは可能でしょうか?」

「可能です」

「それなら、4月から復学させてやってください。お願いします。授業料は私が負担します」

「おじさん、いいんですか? お金かかりますよ」

「いいんだ、未希のためなら。折角だから卒業させてやりたいと思っています。高校中退ではこの先可哀そうです」

「もうあと1年ですから卒業まで頑張って下さい。山内さんにもお願いします」

「復学できることが分かってご相談に伺ってよかったです。現在の私と未希の住所と私の携帯の番号はここに書いてあります。必要な書類があれば連絡してください。それから、この住所を未希の父親は知りませんから、ご配慮をお願いいたします」

「分かりました。復学の手続きは追ってご連絡します」

副校長と石田先生にお礼を言って二人は帰ってきた。

「本当に行かせてもらっていいんですか、4月から学校に」

「先生方にも約束して来たとおり、男に二言はない。授業料と通学定期代は俺が払ってやる。それに月2万円の食事代も払う。他の必要なお金はコンビニでアルバイトして稼いでくれ。4月まではまだだいぶあるから貯金しておくといい」

「授業料と定期代も私の身体で返せばいいんでしょうか?」

「よく分かっているな、それでいい」

「分かりました」

私は嬉しかったので、おじさんと手を繋いで帰ってきた。おじさんは少し照れた様子だったけどまんざらでもないようで手を繋いでくれた。

「これで4月から未希は高校3年生に戻れる。よかったな。これで卒業までの1年間、JKの未希は俺の思いどおりだ」

おじさんは嬉しそうに言った。

戻ってきておじさんは1階のコンビニで割引されたクリスマスケーキを買っていた。

「復学ができるお祝いだ」

「ありがとう。随分大きいね」

「じゃあ、晩飯代わりに食べるとするか」

二人でケーキに蝋燭を灯した。

「クリスマスおめでとう」

私はケーキをお腹いっぱいに食べた。そして、明日からアルバイト頑張ろうと思った。