「ムツヤ殿ー!! お慈悲をー!!!」
そう言って走ってきたモモの頭もハリセンでパァンと叩く。
「あみゃん!!」
「大丈夫ですかモモさん?」
「あ……れ、私は何を」
どうやらモモも正気に戻ったらしい。ムツヤは廊下に飛び出して、念の為アシノの頭も引っ叩いておいた。
「えぐっ!!」
アシノは目を覚ますと、立ち上がりムツヤにたずねる。
「みんなはどうなった!?」
「ユモトさんとモモさんは元に戻りました!」
「そうか、後はルーとヨーリィ、そして敵を見つけるだけだな」
寝起きというのに素早く状況を飲み込むのは流石は元最強の勇者と言ったところだろうか。
アシノとムツヤが階段を駆け下りると、その先にはヨーリィが居た。
「ヨーリィ!! 大丈夫が!?」
ヨーリィは振り返ってコクリと頷いたが
「私は大丈夫ですお兄ちゃん、しかしルーお姉ちゃんが」
「きゃははははは!! 研究研究!! たーのしー!!」
研究機材を両手に持って謎の踊りをしているルーの懐に素早く潜り込んでムツヤはパァンと頭を叩く。
「ひみゃん!!」
ルーは頭を両手で抑えて正気に戻る。
「あれ?」
「お前は何をやっているんだ」
アシノは呆れ気味に言うと、ルーは右手を頭の後ろに回して舌を出した。
「家に入って煙の中から出てきた光線を食らった瞬間気分が上がっちゃって」
「ムツヤ、そういう裏の道具はあったか?」
「いや、わがりまぜんが……」
ムツヤは知らないようだが、どう考えても裏の道具の仕業だろう。アシノはどこかに隠れている敵のことを考える。
「敵はまだこの家の中にいるかも知れない、そしているとしたら」
チラリとアシノは地下の階段を見た。
「そうね、地下よね」
ルーの顔には普段のおちゃらけた感じは無く、ムツヤ達は真剣なその表情を初めて見る。
瞬間、地下から二人の人影が飛び出た。家の出口に向かって走るそれにルーは雷の魔法を浴びせ、アシノはビンのフタをスッポーンと飛ばす。
ところが、防壁の魔法ですべて弾かれてしまう。その魔法の使い手はゆっくりと地下から出てきた。
「あらぁん、やだわん。もう正気にもどっちゃったのかしら」
くねくねと地下から歩いてきたそれは女物の服を来ていたが、厚化粧の上からも隠しきれない濃い青髭とガタイの良い肩幅。
そう、オカマだった。
「な、な、な、なんですかアレ!?」
「あらぁん、アレなんて失礼しちゃうわん。私はウトナよん。よ・ろ・し・く」
そう言ってウィンクをパチリとした瞬間ムツヤの背筋にゾッとしたものが走る。
「お前達はそのオカマを頼む! ルー、一緒に逃げたやつを追うぞ」
「あらぁん、オカマだなんて言わないで、ウトナちゃんってよ・ん・で・ねっ」
話し終えると同時にウトナは杖を取り出してその先から出る光線をアシノに浴びせた。
「アシノさん!?」
アシノはピタリと動きを止めると次の瞬間。
「やーだー!!! やだやだやだ、ビンのフタをスッポーンって飛ばす魔法なんてやだやだやだー!!! 女神のバカー!!!!」
子供が駄々をこねるように仰向けに寝っ転がりジタバタと手足を動かし始めていた。それを見てウトナはケラケラと笑う。
「ほーんと、この杖面白いわぁん。心の底の感情を爆発させるなんてね」
「ムツヤ、早く引っ叩いてあげて! 不憫だから! 不憫だから!!」
ムツヤがハリセンでアシノの頭をパァンと叩くと、無言のままゆっくりと立ち上がりウトナの顔めがけてビンのフタを連続で飛ばした。
「無駄よ無駄」
すべて魔法の壁で防がれてしまう。アシノは駆け出して直接ビンで壁を殴ったが、それも弾かれてしまった。
「お前も!! お前もキエーウの一員なのが!?」
ムツヤが大声を上げるとウトナはニヤリと笑って答える。
「そうよ、私もキエーウの一員よ。でも安心して、私は亜人を皆殺しにするーなんていう過激派じゃないから」
ウトナはバッと両腕を開いて空を見上げて叫ぶ。
「私の夢は! かっこかわいい亜人ちゃん達をペットにしてハーレムを作ることよ!」
その場に居たウトナを除く全員がぽかんとした顔をしていた。
アシノはムツヤの方を振り返って言う。
「何かアイツお前みたいな事言ってるぞ」
「え、えぇー!? 俺でずか!? あんな変な人と一緒にしないでくだざい!」
「あらぁん、変な人なんて失礼しちゃうわ」
右手を頬に当ててウトナはくねくねとする。
「ウトナ…… だっけか、知らないようだがら教えてやる!! 亜人の人達は人間を好きになんてならないんだ!」
モモは口を結んでうーっと小さな声でうなったが、ウトナはムツヤの話を聞いて大声を出して笑った。
「あーっはっはっはっは、何も知らないのは坊やの方ね。愛があれば人種も性別も関係ないのよ!」
それを聞いてモモはうんうんと頷く、だがそれと同時に一つの疑問が生まれる。
「ちょっと待て、そんな平和主義者みたいな事を言っているくせに何故お前はキエーウに所属しているんだ?」
「亜人の女は黙りなさいよ!」
恐ろしい形相をしてウトナはモモを睨みつけ、ふぅーっと息を吐いて質問に答えた。
「私はカッコいい亜人の男の子は大好きだけどねん。あくまで人間が上、亜人は人間に従うのが一番の幸せなの」
続けてウトナは話し続ける。
「ワンちゃんっているわよね、ワンちゃんは人間にしっぽを振って従順に甘えるから可愛いの。亜人もそれと一緒で主従関係をしっかりさせてあげるのがお互いにとって幸せなのよ」
ルーは呆れたようにやれやれと両手を上げてウトナに言う。
「詭弁ね、ただ自分が相手を好きなように支配したいだけじゃない」
それを聞いてクスクスとウトナは笑った。
「人生なんて一度きりなのよぉん? 欲望のままに生きた方がいいじゃない」
今まで黙っていたユモトが口を開く。
「そんな! みんながみんな欲望のままに生きたら世界はメチャクチャになっちゃいますよ」
「女は黙っていなさいよ!!」
またウトナは恐ろしい形相を作る。
「僕は男です!」
「嘘おっしゃい、もうおしゃべりは終わりよ! 私の夢のためにそのカバンを頂くわ!」
ウトナが杖を構えると同時にムツヤ達も身構えた。
そう言って走ってきたモモの頭もハリセンでパァンと叩く。
「あみゃん!!」
「大丈夫ですかモモさん?」
「あ……れ、私は何を」
どうやらモモも正気に戻ったらしい。ムツヤは廊下に飛び出して、念の為アシノの頭も引っ叩いておいた。
「えぐっ!!」
アシノは目を覚ますと、立ち上がりムツヤにたずねる。
「みんなはどうなった!?」
「ユモトさんとモモさんは元に戻りました!」
「そうか、後はルーとヨーリィ、そして敵を見つけるだけだな」
寝起きというのに素早く状況を飲み込むのは流石は元最強の勇者と言ったところだろうか。
アシノとムツヤが階段を駆け下りると、その先にはヨーリィが居た。
「ヨーリィ!! 大丈夫が!?」
ヨーリィは振り返ってコクリと頷いたが
「私は大丈夫ですお兄ちゃん、しかしルーお姉ちゃんが」
「きゃははははは!! 研究研究!! たーのしー!!」
研究機材を両手に持って謎の踊りをしているルーの懐に素早く潜り込んでムツヤはパァンと頭を叩く。
「ひみゃん!!」
ルーは頭を両手で抑えて正気に戻る。
「あれ?」
「お前は何をやっているんだ」
アシノは呆れ気味に言うと、ルーは右手を頭の後ろに回して舌を出した。
「家に入って煙の中から出てきた光線を食らった瞬間気分が上がっちゃって」
「ムツヤ、そういう裏の道具はあったか?」
「いや、わがりまぜんが……」
ムツヤは知らないようだが、どう考えても裏の道具の仕業だろう。アシノはどこかに隠れている敵のことを考える。
「敵はまだこの家の中にいるかも知れない、そしているとしたら」
チラリとアシノは地下の階段を見た。
「そうね、地下よね」
ルーの顔には普段のおちゃらけた感じは無く、ムツヤ達は真剣なその表情を初めて見る。
瞬間、地下から二人の人影が飛び出た。家の出口に向かって走るそれにルーは雷の魔法を浴びせ、アシノはビンのフタをスッポーンと飛ばす。
ところが、防壁の魔法ですべて弾かれてしまう。その魔法の使い手はゆっくりと地下から出てきた。
「あらぁん、やだわん。もう正気にもどっちゃったのかしら」
くねくねと地下から歩いてきたそれは女物の服を来ていたが、厚化粧の上からも隠しきれない濃い青髭とガタイの良い肩幅。
そう、オカマだった。
「な、な、な、なんですかアレ!?」
「あらぁん、アレなんて失礼しちゃうわん。私はウトナよん。よ・ろ・し・く」
そう言ってウィンクをパチリとした瞬間ムツヤの背筋にゾッとしたものが走る。
「お前達はそのオカマを頼む! ルー、一緒に逃げたやつを追うぞ」
「あらぁん、オカマだなんて言わないで、ウトナちゃんってよ・ん・で・ねっ」
話し終えると同時にウトナは杖を取り出してその先から出る光線をアシノに浴びせた。
「アシノさん!?」
アシノはピタリと動きを止めると次の瞬間。
「やーだー!!! やだやだやだ、ビンのフタをスッポーンって飛ばす魔法なんてやだやだやだー!!! 女神のバカー!!!!」
子供が駄々をこねるように仰向けに寝っ転がりジタバタと手足を動かし始めていた。それを見てウトナはケラケラと笑う。
「ほーんと、この杖面白いわぁん。心の底の感情を爆発させるなんてね」
「ムツヤ、早く引っ叩いてあげて! 不憫だから! 不憫だから!!」
ムツヤがハリセンでアシノの頭をパァンと叩くと、無言のままゆっくりと立ち上がりウトナの顔めがけてビンのフタを連続で飛ばした。
「無駄よ無駄」
すべて魔法の壁で防がれてしまう。アシノは駆け出して直接ビンで壁を殴ったが、それも弾かれてしまった。
「お前も!! お前もキエーウの一員なのが!?」
ムツヤが大声を上げるとウトナはニヤリと笑って答える。
「そうよ、私もキエーウの一員よ。でも安心して、私は亜人を皆殺しにするーなんていう過激派じゃないから」
ウトナはバッと両腕を開いて空を見上げて叫ぶ。
「私の夢は! かっこかわいい亜人ちゃん達をペットにしてハーレムを作ることよ!」
その場に居たウトナを除く全員がぽかんとした顔をしていた。
アシノはムツヤの方を振り返って言う。
「何かアイツお前みたいな事言ってるぞ」
「え、えぇー!? 俺でずか!? あんな変な人と一緒にしないでくだざい!」
「あらぁん、変な人なんて失礼しちゃうわ」
右手を頬に当ててウトナはくねくねとする。
「ウトナ…… だっけか、知らないようだがら教えてやる!! 亜人の人達は人間を好きになんてならないんだ!」
モモは口を結んでうーっと小さな声でうなったが、ウトナはムツヤの話を聞いて大声を出して笑った。
「あーっはっはっはっは、何も知らないのは坊やの方ね。愛があれば人種も性別も関係ないのよ!」
それを聞いてモモはうんうんと頷く、だがそれと同時に一つの疑問が生まれる。
「ちょっと待て、そんな平和主義者みたいな事を言っているくせに何故お前はキエーウに所属しているんだ?」
「亜人の女は黙りなさいよ!」
恐ろしい形相をしてウトナはモモを睨みつけ、ふぅーっと息を吐いて質問に答えた。
「私はカッコいい亜人の男の子は大好きだけどねん。あくまで人間が上、亜人は人間に従うのが一番の幸せなの」
続けてウトナは話し続ける。
「ワンちゃんっているわよね、ワンちゃんは人間にしっぽを振って従順に甘えるから可愛いの。亜人もそれと一緒で主従関係をしっかりさせてあげるのがお互いにとって幸せなのよ」
ルーは呆れたようにやれやれと両手を上げてウトナに言う。
「詭弁ね、ただ自分が相手を好きなように支配したいだけじゃない」
それを聞いてクスクスとウトナは笑った。
「人生なんて一度きりなのよぉん? 欲望のままに生きた方がいいじゃない」
今まで黙っていたユモトが口を開く。
「そんな! みんながみんな欲望のままに生きたら世界はメチャクチャになっちゃいますよ」
「女は黙っていなさいよ!!」
またウトナは恐ろしい形相を作る。
「僕は男です!」
「嘘おっしゃい、もうおしゃべりは終わりよ! 私の夢のためにそのカバンを頂くわ!」
ウトナが杖を構えると同時にムツヤ達も身構えた。