正論を突き付けられてモモも押し黙ってしまう。ヨーリィはちびちびとオレンジジュースを飲み続けるだけだ。

「アシノ殿はもう一度剣の鍛錬や魔法を学び直すつもりは無いのですか?」

 モモがそう言った瞬間、アシノは歯を食いしばり恐ろしい表情を作った。

「私が何もしなかったと思うかい? あの日から手が血まみれになるほど剣の鍛錬も、頭がおかしくなるほど魔法の勉強もしたさ」

 グラスを強くテーブルに置いて続けて言う。

「しかし、剣は素人以下、魔法は使おうとすると頭にモヤがかかったみたいになってどうする事もできない! お前にこの気持ちが分かるか!?」

 言われてモモは自分の思慮の浅さを後悔した。

「申し訳ありません! 今の私の発言は軽率でした」

 モモは立ち上がり、深々と頭を下げる。

「いや、私もちょっと気が立ってたよ、悪かった。座りなよ」

 そう促されてモモはまた一礼して椅子に座った。アシノは酒のおかわりを頼んだ。

「あ、もしかしていい手があるかもしれません」

 ムツヤは急に声を出した、皆の視線がムツヤに集中する。

「ビンのフタをスッポーンと飛ばす能力でも戦えるかもしれません!」

「なーに馬鹿なこと言ってんだよ」

 酒で赤い顔をしたアシノがグラスをつまんで持ち上げながら全く興味が無さそうに言った。

「これ、じいちゃんは子供のいたずらに使うものだろうって言ってたんですけど」

 そう言ってムツヤはカバンから1本のワインボトルを取り出す。

「このビンのフタって何度抜いても次々生えてくるんですよ」

 それを聞いたアシノはピクリと反応しムツヤを見た。

「それは本当か?」

「えぇ、本当でずよ」

 半信半疑に机の上に置かれたワインボトルを見る。じーっと眺めること数秒、その後にアシノはワインボトルを手にした。

「物は試しだ、店の外で飛ばしてみよう」

 アシノは立ち上がると店の外に出る。皆もそれに付いて出ていく。

「とりあえず真上に飛ばしてみるぞ」

 そう言ってアシノは能力を使った、瞬間音が響く。通常ビンのフタを抜いた時のスッポーンという音ではなくパァンと何かが弾けるような音とともにビンのフタは夜空に消えていく。

 肝心のワインボトルはと言うとまたフタが付いていた。アシノは2発3発とビンのフタを打ち上げた。

 次に、木に向かって飛ばす。コルクがぶつかった瞬間。粉々に散ってその威力の高さが分かった。

「どうですか?」