「まずはその剣を売りに行きましょうか、良い武器屋は知っています。少し店主の性格に難はありますが……」
街道の人目が無い時にカバンから取り出して持ち歩いていた1本の剣、これを売ってムツヤは冒険のための金策をする。
大通りにはきらびやかな武器がずらりと並んでいた。しっかりと磨き上げられた剣や鎧から、フトコロ事情の良くない者の為の質素な物までだ。
そんな大通りを素通りして裏路地へモモは行ってしまう。ムツヤは不思議に思うが黙って付いていくことにした。
「モモさんあっちの店じゃダメなんですか?」
「えぇ、ムツヤ殿はこの街が初めてで、私はオークですから。値段の付いている商品を買うなら良いですが、売るとなると足元を見られると思います」
足元を見られる? ムツヤは首を傾げた後に自分の靴を、次にモモのブーツを眺めてみる。それでモモは察する。
「申し訳無いムツヤ殿、足元を見られるというのは慣用句でして」
「え、かんよう? 何ですか?」
そうか、足元を見られるという意味を知らないのに慣用句という言葉を知っているわけがないとモモは反省した。
ムツヤは馬鹿ではないが、人との関わりが無かったため常識がところどころ欠けている。
それは仕方のない事なので少しずつ自分が教えていこうと思った。
「そういった事は後でご説明しますので…… とにかく通りの店ですと本来の価値よりも安く買い取られてしまう可能性があります。なので私の知っている武器屋に行きましょう」
なぜ安く買われるのか、『かんよう』と『足元』とは何か、ムツヤは疑問に思うことだらけだったが、ひとまずそれは後でモモに教わることにした。
大通りの賑やかな声が遠くになった頃に目的の店に着いたようだ、モモは足を止めて看板を見上げる。
『ギルスウドパンゼ』
ギルスのいい武器屋という意味だ。
いい武器屋を名乗る割にはこじんまりとして、お世辞にも繁盛しているとは言いにくい。
武器屋には大きく分けて2種類あり、1つは鍛冶場を持っている大きな武器屋。
そして、もう1つは武器を仕入れて売り買いする仲介屋に近いこの店のような小さな武器屋だ。
ドアを開けるとカランカランと心地よいドアチャイムの音が迎えてくれた。
それとは対照的に気だるそうな男の声が聞こえる。
「あーはいはいお客さんチョット待ってねー」
よっこらせとカウンター後ろの部屋から男が出てきた。
サズァン程ではないが少し色黒の肌で金髪、額にはタオルを巻いている。
「お、モモちゃんじゃなーい、どうしたの? また剣でも研ぎに来たの? ってもしかしてそっちの子彼氏?」
「ば、馬鹿を言うなギルス!! こちらはムツヤ殿だ、訳あってこの方の旅の従者としてお供をしている」
モモがそう言うとふんふんとギルスは腕を組んで頷いた。
「わかる、ヒジョーにわかるよモモちゃん。しかしあの一匹狼のモモちゃんを惚れさせて従者にするなんて相当やるな君は」
「いい加減にしないか馬鹿者!!」
モモが顔を赤くしてそう言うと、悪かった悪かったとギルスは謝り、改めてムツヤに自己紹介をする。
「ようこそギルスのいい武器屋へ、俺は店主のギルスだ」
ギルスはそう言ってムツヤに近付き、握手のための手を伸ばす。男はムツヤより少し背が高い。
「こ、ごんにぢは始めまじで! お、私はムツヤと言いますよろしくおねがいします!」
握手のための手を完全に無視し、ムツヤは深々と頭を下げたのでギルスは肩透かしを食らってしまった。
「ムツヤ殿、こういった時は手を握りながら挨拶をするのです」
そう言われると慌ててムツヤはギルスの手を握って、お辞儀をする。
腕を引っ張られてギルスはバランスを崩す。
「す、すんません、俺田舎育ちで……」
「あー良いって良いって、大事なお客さんだもの」
ギルスは笑顔を作ってはいるが、目線はムツヤが片手に握り締める剣に止まっていた。
街道の人目が無い時にカバンから取り出して持ち歩いていた1本の剣、これを売ってムツヤは冒険のための金策をする。
大通りにはきらびやかな武器がずらりと並んでいた。しっかりと磨き上げられた剣や鎧から、フトコロ事情の良くない者の為の質素な物までだ。
そんな大通りを素通りして裏路地へモモは行ってしまう。ムツヤは不思議に思うが黙って付いていくことにした。
「モモさんあっちの店じゃダメなんですか?」
「えぇ、ムツヤ殿はこの街が初めてで、私はオークですから。値段の付いている商品を買うなら良いですが、売るとなると足元を見られると思います」
足元を見られる? ムツヤは首を傾げた後に自分の靴を、次にモモのブーツを眺めてみる。それでモモは察する。
「申し訳無いムツヤ殿、足元を見られるというのは慣用句でして」
「え、かんよう? 何ですか?」
そうか、足元を見られるという意味を知らないのに慣用句という言葉を知っているわけがないとモモは反省した。
ムツヤは馬鹿ではないが、人との関わりが無かったため常識がところどころ欠けている。
それは仕方のない事なので少しずつ自分が教えていこうと思った。
「そういった事は後でご説明しますので…… とにかく通りの店ですと本来の価値よりも安く買い取られてしまう可能性があります。なので私の知っている武器屋に行きましょう」
なぜ安く買われるのか、『かんよう』と『足元』とは何か、ムツヤは疑問に思うことだらけだったが、ひとまずそれは後でモモに教わることにした。
大通りの賑やかな声が遠くになった頃に目的の店に着いたようだ、モモは足を止めて看板を見上げる。
『ギルスウドパンゼ』
ギルスのいい武器屋という意味だ。
いい武器屋を名乗る割にはこじんまりとして、お世辞にも繁盛しているとは言いにくい。
武器屋には大きく分けて2種類あり、1つは鍛冶場を持っている大きな武器屋。
そして、もう1つは武器を仕入れて売り買いする仲介屋に近いこの店のような小さな武器屋だ。
ドアを開けるとカランカランと心地よいドアチャイムの音が迎えてくれた。
それとは対照的に気だるそうな男の声が聞こえる。
「あーはいはいお客さんチョット待ってねー」
よっこらせとカウンター後ろの部屋から男が出てきた。
サズァン程ではないが少し色黒の肌で金髪、額にはタオルを巻いている。
「お、モモちゃんじゃなーい、どうしたの? また剣でも研ぎに来たの? ってもしかしてそっちの子彼氏?」
「ば、馬鹿を言うなギルス!! こちらはムツヤ殿だ、訳あってこの方の旅の従者としてお供をしている」
モモがそう言うとふんふんとギルスは腕を組んで頷いた。
「わかる、ヒジョーにわかるよモモちゃん。しかしあの一匹狼のモモちゃんを惚れさせて従者にするなんて相当やるな君は」
「いい加減にしないか馬鹿者!!」
モモが顔を赤くしてそう言うと、悪かった悪かったとギルスは謝り、改めてムツヤに自己紹介をする。
「ようこそギルスのいい武器屋へ、俺は店主のギルスだ」
ギルスはそう言ってムツヤに近付き、握手のための手を伸ばす。男はムツヤより少し背が高い。
「こ、ごんにぢは始めまじで! お、私はムツヤと言いますよろしくおねがいします!」
握手のための手を完全に無視し、ムツヤは深々と頭を下げたのでギルスは肩透かしを食らってしまった。
「ムツヤ殿、こういった時は手を握りながら挨拶をするのです」
そう言われると慌ててムツヤはギルスの手を握って、お辞儀をする。
腕を引っ張られてギルスはバランスを崩す。
「す、すんません、俺田舎育ちで……」
「あー良いって良いって、大事なお客さんだもの」
ギルスは笑顔を作ってはいるが、目線はムツヤが片手に握り締める剣に止まっていた。