ムツヤは見よう見まねで花を手向けて、祈りを捧げた。

 棺は閉められ、村の埋葬状へと運ばれて穴に入れられる。

 全員が泣いていた。見知らぬオークの事なのにそれを見てムツヤも涙を流した。

 棺に冷たい土が掛けられて、段々と見えなくなり、穴があった場所は小さい山が出来る。

 何だかムツヤは悲しくもあり、怖くもあった。

 周りの雰囲気に影響され悲しいという気持ちもあるが、初めて参加した葬儀で、生き物が死ぬということの悲しさ無情さを現実のものとして体験した恐怖もある。

 葬儀を終える頃には日が沈み、出発はまた明日にしようとモモから言われる。

 ムツヤは頷いて了承する。そしてムツヤはモモから目線を外して遠くの夕焼けを見た。

「俺、外の世界に来だら、楽しいごとがたぐさん待っでいると思っでいだんですけど、外の世界も大変なんですね」

 モモは何も言えなくなってしまう。

 閉ざされた世界から来た純粋で真っ直ぐなムツヤを、勘違いで自分達の問題に巻き込んで。

 その上厚かましくも助けを求めた結果、この様な事を言わせてしまった自分が恥ずかしくて、情けなくて、とにかくムツヤに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「ムツヤ殿…… 本当に申し訳ない! こんな事に巻き込んでしまったこと、もうどう詫ていいのやら!」

「いえ、良いんです。俺が夢を見すぎでいだのだと思います。それにやっぱバラさんの言う通りずっと田舎で人と関わらながっだので考えが甘いのがもしれません」

 なんて言えば良いのだろう、モモは必死に言葉を出す。これ以上ムツヤに悲しんでほしくない。

「それでも! ムツヤ殿にとっては、たまった話では無いと思いますが…… 私はムツヤ殿に会えて本当に良かった、心から感謝している」

 その言葉を聞いて、ムツヤは胸のあたりからじんわりと心地よさが広がり、その波紋が顔まで来た時に何故かまた涙が出てしまった。

「あ、あれ、何で……」

「今度は私に恩返しをさせてください、ムツヤ殿がこの世界で楽しい事を見つけられる、夢を叶えるお手伝いをさせてはもらえぬか!」

 ふぅと息を吐いて涙を拭い、ムツヤは背を向けたまま笑顔を作ってから振り返りモモに言う。

「ありがどうございます。大丈夫です、俺はこの世界で絶対にハーレムを作ってみせます」

 しまったとモモは思う。ムツヤの夢はハーレムを作ることだったと今の今まで忘れていた。

「い、いやしかしムツヤ殿ハーレムってのはちょっと流石に……」

「わがっでいます、厳しい夢だってのは知っています。ですが俺は絶対に諦めません、どんな困難な道だろうと夢を叶えます!!」

 そして最高の笑顔でムツヤは言う。

「ですからモモさん、俺がハーレムを作る手伝いをお願いします!」

「あ、えっ、あー……」

 夕焼けを浴びながらキラキラした笑顔で悪意なくゲスな事を言う男に対し、モモは……

「はい……」

 こう返事をするしか無かった。