それから高校生活は平穏に過ぎていった。
毎日、登下校は村上姫乃と過ごし、クラスでは適当に仲良くなった女子3人と過ごし、たまに篠田颯斗と過ごす。変わりばえは無いけれど楽しい高校生活だった。あの日以来与一渉とは話していない。与一渉にも仲良い人ができ、向こうは向こうで充実した高校生活を過ごしているだろう。
「ねーねー、千紘、あんたさ篠田のこと好きでしょ?」
そんなどうでもいいことを聞いてきたのは適当に仲良くなった3人組の一人、朝倉 杏(あさくら あんず)
「あ、それ私も思った、ちーちゃんと篠田くん仲良いよね〜」
この子は加藤 陽葵(かとう ひまり)
「どうなの、ちー?」
こっちは上原 柚希(うえはら ゆずき)
「えー?みんなが思ってるような関係じゃないし、友達としては好きだけど。」
私はこの3人が好きだ。仲良くしてくれるし、一緒にいて楽しいし。
「そっか〜、じゃ好きな人とか居ないの?」
「んー私にはこの3人がいればいいかな。」
「なにそれ、千紘可愛すぎ〜」
「私もちーちゃんのこと好き〜」
「私もちーに彼氏出来たら泣くかも」
「みんな大袈裟すぎだよ〜、逆にみんな好きな人いないの?」
「私はいないかな」
「私も〜」
「わ、私いる…」
と3人の中で唯一いると答えたのは加藤陽葵だった
「え、誰々?」
「そ、その…秘密だよ?」
「もちろん。」
「えっと…与一くんっ」
「え!?」
「与一くんって、与一渉!?」
「ちょっと声でかいよー」
「わっごめんごめん」
「与一渉のどこが好きなの?」
「えっとね、この前お弁当忘れちゃった時…」

『やばっ、どうしよう…お金もないし、今日はお昼ご飯なしか…』
『お昼ご飯忘れちゃったの?良かったらこれ食べて。僕もう一回購買行ってくる』

「って焼きそばパンとメロンパンくれたの!」
与一渉は嫌いだし、私にとったら嫌な奴だけど周りからの評価はとても高くていい人らしい。
「えーなにそれ、かっこいいとこあるじゃん」
「だよね。でも、一番最初に与一くんのこと好きになったの私だから取らないでよ〜?」
「取るわけないって、友達の好きな人取るほど腐ってないよ。」
「よかった〜与一くんと仲良くなれないかな〜」
「ん?僕がどうしたの?」
「わっ!与一くん!?」
「ごめん。驚かす気はなかったんだけど。」
「全然だよ。私が勝手に驚いただけだから!」
「そう?それでもごめんね。」
「わ、私たち用事思い出したから〜」
と朝倉杏がいい私と上原柚希は腕を引っ張られた。
「ちょっと待って、僕佐々木さんに用事があるんだ。」
急な佐々木千紘指名にみなが目を丸くした。
「私?」
「うん。今いいかな?」
「いいけど…」
と言いながら加藤陽葵の方を見ると少し悲しそうな顔で頷いた。
「ここじゃなんだから着いてきて。」
「わかった。」
それして与一渉に連れられて人気のない場所に連れてろられた。
「ごめん」
「え?」
急に謝られ何に対して謝っているのか、なぜこんなところに連れてこられたのか、なぜこのタイミングなのかわかず動揺する。
「佐々木さんに失礼なことしちゃったから」
「失礼?」
「人間味がないとか色がないとか」
「あぁ、別に気にしてないよ。」
「じゃあこれから僕とも仲良くして欲しいんだ。」
与一渉の目は真っ直ぐで純粋で色で例えたら水色のような色をしていた。純粋に私と仲良くしたいんだとわかった。
「いいよ。だけど、あなたのことはまだ嫌い。」
「うん。嫌いでもいい、それでも君と友達になりたいんだ。」
「うん。わかったから」
「それじゃ、時間使わせちゃってごめん。またね。」
と言い彼は走って教室に向かった。
「変わった人…。」
つい口に出てしまった言葉に気づき慌てて手で塞ぐ。私がこうやって思ったことを口に出すなんてありえないのに。
やっぱり私は与一渉が嫌いだ。
クラスに戻る時3人がいっせいにこちらを見た。
「千紘何話してたの?」
この言葉は優しい雰囲気を醸し出しながらもトゲのあるように感じた。
「ただ、この前貸した消しゴム返してもらっただけだよ。」
「消しゴム返すだけで人気のないとこいく?」
今度は優しい雰囲気もくそもないトゲトゲだった。
「ちーちゃんは私の恋応援してくれるじゃなかったの…?」
今にも泣きそうな目で見てくる。消しゴム返しただけでなんでそんなめをするの?別に付き合ったわけでもないのに、友達ってめんどくさい。あれもこれも全部の元凶はあいつだ与一渉。
「応援してるに決まってるじゃん。ただそれと一緒に陽葵のことを聞かれたの」
「わたし…?」
「そう。陽葵さんとも話してみたいんだけど協力してくれないかってこの4人の中で話したことあるの私だけだから私に相談したみたい。」
「なーんだそうゆうことか。」
「びっくりしたー、もしこれで付き合ってきたとか言ったら友達やめてやろうと思ってた〜」
「そ、そうなんだ…与一くんが…」
加藤陽葵は顔を少し赤らめ喜んだ。
あぁ友達ってどうしてこんなにめんどくさいんだろう。
でも友達は好きだ。友達がいなくちゃ私は一人ぼっちだから。
「良かったね。陽葵」
「ありがとう。ちーちゃん大好き」
そう言って加藤陽葵は私に抱きついた。
私も好きだよ。
何故かその言葉が口にできなかった。