翌日
まさか、昔の出来事が夢に出てくるなんて思わなかった。
「あ、起きた?おはよう」
琴花が私の顔をのぞき込む。
「あっ、琴花さん」「大丈夫?うなされてたけど、何かあった?」
「夢を見ていて。事故の時の夢で」
「そっか。朝食出来てるよ、一緒に食べよう」深くは言及しないんだな。もしかして気遣ってくれた?いや、琴花さんに限ってそれはないか。
時計を見たらまだ六時になったばかりだった。
「何時に起きてたんですか琴花さん」
「私?私はいつも五時三十分には起きてるよ」
「早いですね、健康的で素晴らしいと思いますよ」
「あんまり褒められている気はいないけど、、、気のせいかな?褒め言葉として受け取っとくよ」
今日は土曜日。学校のテストが近いので灯桜と一緒に勉強することになっている。
ちなみに、私の家で。
「あの、琴花さん。十時から友達が来るんです。なので家に帰ってもらってもいいですか?」
もぐもぐとパンを食べていた琴花は「嫌だね」とだけ言った。
いや、私が嫌なんですけど。灯桜だって知らない人が家に居たら集中出来ないだろうし。
「もういいや。私図書館で勉強するから」「えっ、あ、そう。何があっても知らないからね」
「どういうこと?」
琴花が言葉を発することはもうなく、自然に会話は終了した。
あっという間に時間は過ぎ、10時になった。
ピンポーンとチャイムが鳴り、灯桜が来たことを知らせる。
「琴花さんの言ってることは全く分からないけど、とにかく行ってくるから」
勉強道具をリュックに詰めて玄関のドアを閉める。
「おはよーってどうしたの?怖い顔してる。機嫌でも悪い?」
灯桜が私を見て驚いた顔をする。
「今ちょっと家にいる気分じゃないんだよね。図書館行って勉強しよ」
「うん、行こう」
なんで灯桜は反対しないの。私から家においでよって誘ったのに。気分で図書館に行くって言ったんだよ?普通はちょっとぐらい怒るでしょ。灯桜は本当に優しすぎる。
「テストとか嫌だよねー」
私がボヤくと灯桜が溜め息をついた。
「仕方ないよね。私達高三だから。受験だってあるわけだし」
「灯桜はどこ目指してるんだっけ?」
「一応看護科かなって思ってる。和彩は大学行かないんだっけ?」
「そのつもり」
灯桜は私の事情を知っている。
「また一緒に学校行けるわけじゃないんだよね」
「うん、そうだね」
今通っている高校も、灯桜が行くからという理由で通っている。
受検にはどんな幸運か、運良く受かり、こえして学校生活をおくってきた。
もし私が灯桜と違う学校だったら、今の私はいない。
「あ、図書館見えてきた!」
「本当にうちの図書館の壁の色、凄いよね」図書館の壁の色はなぜか分からないけど緑色なのだ。遠目でも見つかりやすく、待ち合わせ場所として適している場所だ。
灯桜は読書が好き。だからたくさんの本で溢れているあの空間が好きなのだろう。私には分からないけれど。
「ちょっと灯桜ー」
テンションが高いのか、いつもは静かに青を待つ信号も、待ちきれないのかバタバタしているように見える。
ピカッと赤から青に信号が変わる。それと同時に灯桜は歩き出す。いつも右、左、右と確認しているのに。全く、、、。
ちょっと呆れながら少し先にいる灯桜を追いかけようとした。でも。
「灯桜?」
少し先にいたはずの灯桜の姿がない。
私の視界から姿が消えた。
「え?」
何が起こったのか私の頭では理解出来ない。「女の子が車に轢かれたぞ!」
「何があったの?」
「女の子が車に轢かれたみたい」
「あー、、、。かわいそうにねぇ、、、」
周りの人達の声がする。遠くから救急車のサイレンも。
色々な音が聞こえるけど灯桜の声だけしない。私が今聞きたい音は聞こえてこない。
「あなた、あの子の友達でしょ?」
って、誰かが私の肩に手を当てて言う。
違う。違うんだ。私が聞きたいのはそんな音じゃない。
『私、何があっても知らないよ』
朝、琴花が私に言ったことを思い出す。
なんで私あの時図書館に行くって言ったの。
なんで琴花の言うことを信じなかったの。
なんで。なんで。どうして。
視界に映ったのは白いワゴン車。
なんの縁があるのか、私の大事な人はみんな白いワゴン車に轢かれてしまう。
私の前を灯桜が通り過ぎる。
「灯桜!」
呼んでも答えてくれない。
私が何を言っても灯桜は答えてくれない。
赤くて青くて白い彼女は。
やっと私は理解する。
灯桜は私のせいでこうなった。
お父さんもお母さんも、そうだった。
私のせいで。なにもかも、私のせいで。
もし灯桜が私と違う学校だったら、今の灯桜はいない。
まさか、昔の出来事が夢に出てくるなんて思わなかった。
「あ、起きた?おはよう」
琴花が私の顔をのぞき込む。
「あっ、琴花さん」「大丈夫?うなされてたけど、何かあった?」
「夢を見ていて。事故の時の夢で」
「そっか。朝食出来てるよ、一緒に食べよう」深くは言及しないんだな。もしかして気遣ってくれた?いや、琴花さんに限ってそれはないか。
時計を見たらまだ六時になったばかりだった。
「何時に起きてたんですか琴花さん」
「私?私はいつも五時三十分には起きてるよ」
「早いですね、健康的で素晴らしいと思いますよ」
「あんまり褒められている気はいないけど、、、気のせいかな?褒め言葉として受け取っとくよ」
今日は土曜日。学校のテストが近いので灯桜と一緒に勉強することになっている。
ちなみに、私の家で。
「あの、琴花さん。十時から友達が来るんです。なので家に帰ってもらってもいいですか?」
もぐもぐとパンを食べていた琴花は「嫌だね」とだけ言った。
いや、私が嫌なんですけど。灯桜だって知らない人が家に居たら集中出来ないだろうし。
「もういいや。私図書館で勉強するから」「えっ、あ、そう。何があっても知らないからね」
「どういうこと?」
琴花が言葉を発することはもうなく、自然に会話は終了した。
あっという間に時間は過ぎ、10時になった。
ピンポーンとチャイムが鳴り、灯桜が来たことを知らせる。
「琴花さんの言ってることは全く分からないけど、とにかく行ってくるから」
勉強道具をリュックに詰めて玄関のドアを閉める。
「おはよーってどうしたの?怖い顔してる。機嫌でも悪い?」
灯桜が私を見て驚いた顔をする。
「今ちょっと家にいる気分じゃないんだよね。図書館行って勉強しよ」
「うん、行こう」
なんで灯桜は反対しないの。私から家においでよって誘ったのに。気分で図書館に行くって言ったんだよ?普通はちょっとぐらい怒るでしょ。灯桜は本当に優しすぎる。
「テストとか嫌だよねー」
私がボヤくと灯桜が溜め息をついた。
「仕方ないよね。私達高三だから。受験だってあるわけだし」
「灯桜はどこ目指してるんだっけ?」
「一応看護科かなって思ってる。和彩は大学行かないんだっけ?」
「そのつもり」
灯桜は私の事情を知っている。
「また一緒に学校行けるわけじゃないんだよね」
「うん、そうだね」
今通っている高校も、灯桜が行くからという理由で通っている。
受検にはどんな幸運か、運良く受かり、こえして学校生活をおくってきた。
もし私が灯桜と違う学校だったら、今の私はいない。
「あ、図書館見えてきた!」
「本当にうちの図書館の壁の色、凄いよね」図書館の壁の色はなぜか分からないけど緑色なのだ。遠目でも見つかりやすく、待ち合わせ場所として適している場所だ。
灯桜は読書が好き。だからたくさんの本で溢れているあの空間が好きなのだろう。私には分からないけれど。
「ちょっと灯桜ー」
テンションが高いのか、いつもは静かに青を待つ信号も、待ちきれないのかバタバタしているように見える。
ピカッと赤から青に信号が変わる。それと同時に灯桜は歩き出す。いつも右、左、右と確認しているのに。全く、、、。
ちょっと呆れながら少し先にいる灯桜を追いかけようとした。でも。
「灯桜?」
少し先にいたはずの灯桜の姿がない。
私の視界から姿が消えた。
「え?」
何が起こったのか私の頭では理解出来ない。「女の子が車に轢かれたぞ!」
「何があったの?」
「女の子が車に轢かれたみたい」
「あー、、、。かわいそうにねぇ、、、」
周りの人達の声がする。遠くから救急車のサイレンも。
色々な音が聞こえるけど灯桜の声だけしない。私が今聞きたい音は聞こえてこない。
「あなた、あの子の友達でしょ?」
って、誰かが私の肩に手を当てて言う。
違う。違うんだ。私が聞きたいのはそんな音じゃない。
『私、何があっても知らないよ』
朝、琴花が私に言ったことを思い出す。
なんで私あの時図書館に行くって言ったの。
なんで琴花の言うことを信じなかったの。
なんで。なんで。どうして。
視界に映ったのは白いワゴン車。
なんの縁があるのか、私の大事な人はみんな白いワゴン車に轢かれてしまう。
私の前を灯桜が通り過ぎる。
「灯桜!」
呼んでも答えてくれない。
私が何を言っても灯桜は答えてくれない。
赤くて青くて白い彼女は。
やっと私は理解する。
灯桜は私のせいでこうなった。
お父さんもお母さんも、そうだった。
私のせいで。なにもかも、私のせいで。
もし灯桜が私と違う学校だったら、今の灯桜はいない。