嫌だ
やめて
忘れたい
忘れたくない
嫌い
私のせいで
知らない
無関係
嘘つき
黒い感情が心の中をぐるぐるしている。こんな感情、覚えたくもなかった。
いつも通りの学校からの帰り道。
灯桜は好きなアニメについて語っている。
楽しみに話しているのに私は適当に相槌を打つことしか出来ない。
「和彩、ホントにどうしたの?いつもの和彩じゃないよ」
「大丈夫。気にしないで。ほら、家に着くよ」
「ほんとだ、じゃあね、和彩」
「うん、灯桜バイバイ」
手を振って別れた。ふぅ、とため息を一つ。私ってホントに駄目だな、明るい私で居なきゃいけないのに。灯桜にも申し訳なかったな、素っ気なかった。
びゅぅっと強風が吹く。風が私を責めているみたいだ。
最近は風の強い日が多いなーと思いながら歩いていると。
「危ない!」
「え?」
目線を上に上げると、止まれの標識が倒れてくるところだった。あ、やばい。
そう思った瞬間、手首を掴まれ、引っ張られた。
「うわっ」
ガッシャーンと、標識が倒れた。
「あー間一髪だったね」
私を助けてくれたのは見知らぬ女性。水色のワンピースを着ている。
「あなた、名前は?」
「私は増田和彩、高三です」
「増田和彩、、、。いい名前だね。ちなみに私は深見琴花。大学生。和彩は今帰り?」
「はい、そうです」「そっか」
私は家に向かって歩きだす。毎日見ている風景だ。でも、今日は違う。
「琴花さん、なんでついてくるんですか?まさか、私のストーカーなんですか」
「え?なわけないじゃん」
「じゃあどうして」「大人の事情ってやつ。和彩の家にお邪魔するね」「はい?」
この人、なに言ってるんだろう。
「和彩って一人暮らし?」
「え、はい」
なんで知ってるんだろう。何も言ってないのに。この人、なんか怖いんだけど。
無情にも家に着いてしまった。家に入らない訳にもいかないので、鍵を開ける。
「お邪魔しまーす」
え、私入っていいって言ってないんですけど。今の大人ってこんな感じなの?
「懐かしい、、、」
え?今懐かしいって言った?
「あー喉乾いた。お茶ぐらいない?」
琴花は冷蔵庫に手をかける。
「あっ、開けちゃ駄目です!」私の声も虚しく部屋に響いただけ。もう琴花は冷蔵庫を遠慮なく開けた。
「は?どういうこと?」
そう琴花が言うのも無理は無い。何故なら冷蔵庫の中には特に何も入っていないのだ。
冷凍庫にはアイスと冷凍食品しか入っていないし、野菜室と呼ばれる所に野菜などない。
代わりにテーブルにはコンビニで貰える割り箸や、おしぼりが散乱している。
「ちゃんと自炊した方がいいと思うけど」「なんで知らない人にそんな事言われなきゃいけないんですか!」
琴花は面食らった顔をした。なんなの、その顔。私がこう言うのは当たり前でしょ。
「知らない人、、、」
え、何?ボソッと呟かれても。ちゃんと聞こえないんだけど。
「とにかく、自炊した方がいいよ。コンビニに頼りすぎないように。私が教えてあげるから」「えーっ」
結局、私は琴花と一緒に近所のスーパーに行った。
そこで分かったのは、私は野菜や果物の知識が全くないということ。
キャベツとレタスの見分けもつかない私。琴花に聞いてみると、
「キャベツはクリーム色から淡い黄緑色をしているけど、レタスはキャベツに比べて濃い緑色を、しているから。なんでそんなことも分かんないかなー」
と、呆れられた。
「ちなみに、レタスって95%が水分なの。それは知ってたよね?」
ここで知らなかったですなんて言ったらどうなるんだろう。
そう思ったが、琴花に知らないという勇気は残念ながら、私にはない。
「そんなの常識 じゃないですか。この私でも知ってますよ。それくらい」
と、私は言った。この嘘がバレませんように。
「そうだよね。さすがの和彩も知ってるよね。常識だもんね」
琴花はニコッと私に微笑んだ。その笑みが少しだけ怖く見えたのは私だけだろうか。
「それでね、レタスはTNFーαという成分を多く含んでいて、その含有量は野菜の中で最も多い。このTNFーαは白血球の働きを助けると言われてるんだよね。
体の外から侵入したウイルスや異物を殺したり、ガンの抑制効果があったり、免疫力向上の効果が期待出来るんだ」
一体何を聞いているんだろう。こんな知識、知って何になる?正直どうでもいい。寝たら忘れてしまう。こんなタメにならない話は特に。
「どうでもいいなんて思わないで。結構大事なことなんだよ。野菜も果物も、大事な栄養素も大事な栄養素が絶対に含まれてるから。だから和彩も好き嫌いせずに野菜も食べようね?」
「はい」
そう言うしかなかった。
キャベツとレタスの違いを知りたかっただけなのにいつのまにか栄養素の話になっていた。最終的に私に野菜を食べろという始末。こんなオチになるって誰も想像しなかっただろうに。
そして思い出して欲しいのは、ここがスーパーの入り口だということだ。
こんなところでする話ではなかったはずなのに。言われている私が恥ずかしい。
「さて、買い物続けますか」
琴花は買い物カゴに野菜、調味料、飲み物、カップラーメン、アイスクリームなどを入れていく。あっという間にカゴが満たんになった。
レジで会計をし、琴花が持ってきていたエコバッグに商品を詰めていく。
大量の商品を買ったため、エコバッグは二つ分になった。
「はい、私軽い方持つので、もう1つは琴花さんが持って下さい」
たまにはこんなことを言ってもいいだろう。そう思っていたけれど。
「何言ってるの?二つとも和彩が持つに決まってるでしょ?」
なぜ、こんなに重い物を二つも持たないといけないのか。
「だってさっき和彩嘘ついたでしょ?レタスの水分の話をした時。常識って言ってたけど本当は知らなかったんでしょ?バレバレだよ」
バレないと、思っていたんだけどな。
やっぱり琴花には隠し通せないらしい。
「はい罰として二つ持ってくださーい」
数十分前の私へ。レタスの話はどうでもいいと思わずしっかり聞いてください。嘘はつかないでください。ついたら後で、地獄が待っています。
「待ってください、琴花さん!」
こっちは重いものを、二つも持っていて歩くペースが落ちているというのに琴花は私にお構いなく先を歩いている。
ちょっとは気遣って欲しいのに。
やめて
忘れたい
忘れたくない
嫌い
私のせいで
知らない
無関係
嘘つき
黒い感情が心の中をぐるぐるしている。こんな感情、覚えたくもなかった。
いつも通りの学校からの帰り道。
灯桜は好きなアニメについて語っている。
楽しみに話しているのに私は適当に相槌を打つことしか出来ない。
「和彩、ホントにどうしたの?いつもの和彩じゃないよ」
「大丈夫。気にしないで。ほら、家に着くよ」
「ほんとだ、じゃあね、和彩」
「うん、灯桜バイバイ」
手を振って別れた。ふぅ、とため息を一つ。私ってホントに駄目だな、明るい私で居なきゃいけないのに。灯桜にも申し訳なかったな、素っ気なかった。
びゅぅっと強風が吹く。風が私を責めているみたいだ。
最近は風の強い日が多いなーと思いながら歩いていると。
「危ない!」
「え?」
目線を上に上げると、止まれの標識が倒れてくるところだった。あ、やばい。
そう思った瞬間、手首を掴まれ、引っ張られた。
「うわっ」
ガッシャーンと、標識が倒れた。
「あー間一髪だったね」
私を助けてくれたのは見知らぬ女性。水色のワンピースを着ている。
「あなた、名前は?」
「私は増田和彩、高三です」
「増田和彩、、、。いい名前だね。ちなみに私は深見琴花。大学生。和彩は今帰り?」
「はい、そうです」「そっか」
私は家に向かって歩きだす。毎日見ている風景だ。でも、今日は違う。
「琴花さん、なんでついてくるんですか?まさか、私のストーカーなんですか」
「え?なわけないじゃん」
「じゃあどうして」「大人の事情ってやつ。和彩の家にお邪魔するね」「はい?」
この人、なに言ってるんだろう。
「和彩って一人暮らし?」
「え、はい」
なんで知ってるんだろう。何も言ってないのに。この人、なんか怖いんだけど。
無情にも家に着いてしまった。家に入らない訳にもいかないので、鍵を開ける。
「お邪魔しまーす」
え、私入っていいって言ってないんですけど。今の大人ってこんな感じなの?
「懐かしい、、、」
え?今懐かしいって言った?
「あー喉乾いた。お茶ぐらいない?」
琴花は冷蔵庫に手をかける。
「あっ、開けちゃ駄目です!」私の声も虚しく部屋に響いただけ。もう琴花は冷蔵庫を遠慮なく開けた。
「は?どういうこと?」
そう琴花が言うのも無理は無い。何故なら冷蔵庫の中には特に何も入っていないのだ。
冷凍庫にはアイスと冷凍食品しか入っていないし、野菜室と呼ばれる所に野菜などない。
代わりにテーブルにはコンビニで貰える割り箸や、おしぼりが散乱している。
「ちゃんと自炊した方がいいと思うけど」「なんで知らない人にそんな事言われなきゃいけないんですか!」
琴花は面食らった顔をした。なんなの、その顔。私がこう言うのは当たり前でしょ。
「知らない人、、、」
え、何?ボソッと呟かれても。ちゃんと聞こえないんだけど。
「とにかく、自炊した方がいいよ。コンビニに頼りすぎないように。私が教えてあげるから」「えーっ」
結局、私は琴花と一緒に近所のスーパーに行った。
そこで分かったのは、私は野菜や果物の知識が全くないということ。
キャベツとレタスの見分けもつかない私。琴花に聞いてみると、
「キャベツはクリーム色から淡い黄緑色をしているけど、レタスはキャベツに比べて濃い緑色を、しているから。なんでそんなことも分かんないかなー」
と、呆れられた。
「ちなみに、レタスって95%が水分なの。それは知ってたよね?」
ここで知らなかったですなんて言ったらどうなるんだろう。
そう思ったが、琴花に知らないという勇気は残念ながら、私にはない。
「そんなの常識 じゃないですか。この私でも知ってますよ。それくらい」
と、私は言った。この嘘がバレませんように。
「そうだよね。さすがの和彩も知ってるよね。常識だもんね」
琴花はニコッと私に微笑んだ。その笑みが少しだけ怖く見えたのは私だけだろうか。
「それでね、レタスはTNFーαという成分を多く含んでいて、その含有量は野菜の中で最も多い。このTNFーαは白血球の働きを助けると言われてるんだよね。
体の外から侵入したウイルスや異物を殺したり、ガンの抑制効果があったり、免疫力向上の効果が期待出来るんだ」
一体何を聞いているんだろう。こんな知識、知って何になる?正直どうでもいい。寝たら忘れてしまう。こんなタメにならない話は特に。
「どうでもいいなんて思わないで。結構大事なことなんだよ。野菜も果物も、大事な栄養素も大事な栄養素が絶対に含まれてるから。だから和彩も好き嫌いせずに野菜も食べようね?」
「はい」
そう言うしかなかった。
キャベツとレタスの違いを知りたかっただけなのにいつのまにか栄養素の話になっていた。最終的に私に野菜を食べろという始末。こんなオチになるって誰も想像しなかっただろうに。
そして思い出して欲しいのは、ここがスーパーの入り口だということだ。
こんなところでする話ではなかったはずなのに。言われている私が恥ずかしい。
「さて、買い物続けますか」
琴花は買い物カゴに野菜、調味料、飲み物、カップラーメン、アイスクリームなどを入れていく。あっという間にカゴが満たんになった。
レジで会計をし、琴花が持ってきていたエコバッグに商品を詰めていく。
大量の商品を買ったため、エコバッグは二つ分になった。
「はい、私軽い方持つので、もう1つは琴花さんが持って下さい」
たまにはこんなことを言ってもいいだろう。そう思っていたけれど。
「何言ってるの?二つとも和彩が持つに決まってるでしょ?」
なぜ、こんなに重い物を二つも持たないといけないのか。
「だってさっき和彩嘘ついたでしょ?レタスの水分の話をした時。常識って言ってたけど本当は知らなかったんでしょ?バレバレだよ」
バレないと、思っていたんだけどな。
やっぱり琴花には隠し通せないらしい。
「はい罰として二つ持ってくださーい」
数十分前の私へ。レタスの話はどうでもいいと思わずしっかり聞いてください。嘘はつかないでください。ついたら後で、地獄が待っています。
「待ってください、琴花さん!」
こっちは重いものを、二つも持っていて歩くペースが落ちているというのに琴花は私にお構いなく先を歩いている。
ちょっとは気遣って欲しいのに。