あれからもう3か月経った。出産後は実の母親がそばにいると娘の面倒をみてくれるのだが、凜には母親がいない。それで、凜が病院から戻ると僕は会社に1週間の育児休暇を申請した。
上からは驚きの目で見られたが、もう気にしないことに決めていた。ただ、若い社員からは称賛を貰ったみたいだった。このごろは夫の育児休暇も認知されるようになってきている。
このごろ凜は子育てにもすっかり慣れてきた。幸い乳の出もよく母乳だけで育てている。凜が息子に乳を飲ませている時の幸せそうな顔を見ているのが好きだ。二人ともとても愛おしい僕の宝物だ。
今日は天気もいいので凛と赤ちゃんを連れて銀座に出かけた。丁度歩行者天国で歩きやすい。凜は3か月になる息子を胸に抱いて歩いている。僕は二人のようすを横目で見ながら歩いている。
久しぶりの銀座だ。凜が子育てに一生懸命で、気分転換に久しぶりにどうかと誘ったところ、行きたいと言ったので連れてきた。
婚約指輪を買っていなかったので、男の子を生んでくれたお礼と記念に指輪を買ってプレゼントした。右手の薬指の指輪がそれだ。
凜はすっかり落ち着いて銀座の歩行者天国の人混みの中を歩いている。以前のようにメガネをかけることもなく、自信に満ちた様子で歩いている。子供を産むことで女性は自信を持って強くなるのだと思う。凜も母親になったんだ。
正面から手をつないだカップルが歩いてきた。男は30代半ばくらいで女は20代半ばくらいで仲良く手を繋いでいる。男は凜をじっと見つめているようだったが、あっという間にすれ違った。僕が気になって振り向くと連れの女の子が振り向いていた。
「今の男、君をじっと見ていたけど」
「お分かりになりましたか。昔のなじみです。あなたと同じように3件目まで通ってくれました。あなたが偶然お店へ来る少し前にやはり彼も偶然店に来たんです」
「彼だったのか」
「あの人は、あなたと同じように、君のことは口外しないし、迷惑ならもう来ないと言ってくれるような優しい人でした。来ても構わないと言うと月に1度くらい来てくれました。お客も連れて来てくれました。隣にいた女の子を店へ2回ほど連れて来ていました」
「彼は声をかけなかったね」
「3人で幸せそうに歩いていたからでしょう。そういう人です。あなたと同じ優しさがありましたから」
「好きだったのか?」
「好きじゃなかったと言ったら嘘になりますね」
「結婚したことを知っているのか?」
「店を閉める数日前に丁度店に来たので、あなたと結婚することになったから店を閉めると言いました」
「彼は何て?」
「おめでとうって言ってくれました。そしてあなたには勇気があると言っていました、そして私が好きだけど自分にはプロポーズする勇気がなかったとも。でも私が本当に幸せになれるか心配してくれていました」
「君から目を離さなかった」
「私が赤ちゃんを抱いて幸せそうにしていたので安心したと思います。そんな目で私を見ていましたから。別れ際に、どこかのスナックに入ったらまた君がいたってことが無いように願っていると言っていましたから」
「そんなことは僕が絶対にさせない」
「先のことは分かりませんが、あなたと1日1日を大切に生きていくだけです」
凜は僕にきっぱりとそういった。そして赤ちゃんを抱いて僕とゆっくり歩いていく。以前のような人混みの中での怯えた様子もなく、一人の女として、妻として、母としての自信に満ちているように見える。
これで良かったのだと思う。ただ、あまり自信を持ちすぎて自立したいとか言って、僕の元を去って行くことがないように祈るばかりだ。何せ13歳も若い美しい妻なのだから。
人に知られたくない過去に怯える女と真面目なオッサンのラブストーリーはこれでお仕舞いです。めでたし、めでたし。
上からは驚きの目で見られたが、もう気にしないことに決めていた。ただ、若い社員からは称賛を貰ったみたいだった。このごろは夫の育児休暇も認知されるようになってきている。
このごろ凜は子育てにもすっかり慣れてきた。幸い乳の出もよく母乳だけで育てている。凜が息子に乳を飲ませている時の幸せそうな顔を見ているのが好きだ。二人ともとても愛おしい僕の宝物だ。
今日は天気もいいので凛と赤ちゃんを連れて銀座に出かけた。丁度歩行者天国で歩きやすい。凜は3か月になる息子を胸に抱いて歩いている。僕は二人のようすを横目で見ながら歩いている。
久しぶりの銀座だ。凜が子育てに一生懸命で、気分転換に久しぶりにどうかと誘ったところ、行きたいと言ったので連れてきた。
婚約指輪を買っていなかったので、男の子を生んでくれたお礼と記念に指輪を買ってプレゼントした。右手の薬指の指輪がそれだ。
凜はすっかり落ち着いて銀座の歩行者天国の人混みの中を歩いている。以前のようにメガネをかけることもなく、自信に満ちた様子で歩いている。子供を産むことで女性は自信を持って強くなるのだと思う。凜も母親になったんだ。
正面から手をつないだカップルが歩いてきた。男は30代半ばくらいで女は20代半ばくらいで仲良く手を繋いでいる。男は凜をじっと見つめているようだったが、あっという間にすれ違った。僕が気になって振り向くと連れの女の子が振り向いていた。
「今の男、君をじっと見ていたけど」
「お分かりになりましたか。昔のなじみです。あなたと同じように3件目まで通ってくれました。あなたが偶然お店へ来る少し前にやはり彼も偶然店に来たんです」
「彼だったのか」
「あの人は、あなたと同じように、君のことは口外しないし、迷惑ならもう来ないと言ってくれるような優しい人でした。来ても構わないと言うと月に1度くらい来てくれました。お客も連れて来てくれました。隣にいた女の子を店へ2回ほど連れて来ていました」
「彼は声をかけなかったね」
「3人で幸せそうに歩いていたからでしょう。そういう人です。あなたと同じ優しさがありましたから」
「好きだったのか?」
「好きじゃなかったと言ったら嘘になりますね」
「結婚したことを知っているのか?」
「店を閉める数日前に丁度店に来たので、あなたと結婚することになったから店を閉めると言いました」
「彼は何て?」
「おめでとうって言ってくれました。そしてあなたには勇気があると言っていました、そして私が好きだけど自分にはプロポーズする勇気がなかったとも。でも私が本当に幸せになれるか心配してくれていました」
「君から目を離さなかった」
「私が赤ちゃんを抱いて幸せそうにしていたので安心したと思います。そんな目で私を見ていましたから。別れ際に、どこかのスナックに入ったらまた君がいたってことが無いように願っていると言っていましたから」
「そんなことは僕が絶対にさせない」
「先のことは分かりませんが、あなたと1日1日を大切に生きていくだけです」
凜は僕にきっぱりとそういった。そして赤ちゃんを抱いて僕とゆっくり歩いていく。以前のような人混みの中での怯えた様子もなく、一人の女として、妻として、母としての自信に満ちているように見える。
これで良かったのだと思う。ただ、あまり自信を持ちすぎて自立したいとか言って、僕の元を去って行くことがないように祈るばかりだ。何せ13歳も若い美しい妻なのだから。
人に知られたくない過去に怯える女と真面目なオッサンのラブストーリーはこれでお仕舞いです。めでたし、めでたし。