*人によっては胸糞に思う展開あり。
「いやああああああああああっ!!」
「大志、大志いいいいい!!」
リビングには二人の絶叫が響く。首を刺された大志は、血の泡を吹いて数秒で死んだ。
「「あああああ...!!」」
谷里と瑞希は今も慟哭を上げているのに対し、明里は声一つ上げず、ただ目を見開いて兄の死体を眺めていた。ショックのあまり声も出なくなったか。
「谷里、お前の家族は......お前が不幸と絶望のどん底に落ちる為の要因に過ぎねーんだよ。こうやって、積み重ねてきたものを目の前で一気に全て潰して奪って灰にする。お前にとってこれ以上ない復讐方法が実現できそうだ!
ありがとうな、こんな素敵な家族をつくっていてくれて!お陰でお前を今まで以上に残酷な目に遭わせられるんやからなァ!あはははははははっ!!」
「杉、山...杉山ァ!!」
「あーーーーっはあははははぁ!!そうそう!こういうシチュエーションをずっと待ってたんだ!お前のそのキモい顔をさらにキモく歪ませることをなぁ!」
哄笑しながら今度は両手に大きな魔力を込めて、瑞希と明里を近くに並べる。
「おい......おい待て。待て待て待てまてマテ...!どうするつもりや?止めろ、止せ...!」
「この二人には感謝しなきゃなぁ、谷里、お前がそうやって今も顔を苦痛に歪ませる程に、二人を大切に想ってるんだなぁ?いやぁ.........殺し甲斐があるわぁマジでぇ」
「頼む...!もう止めてくれ!俺が悪かった。中学のことはマジですまねぇ!!ごめんなさいっ!!こ、殺すなら俺だけにしてくれ。俺が憎いなら俺だけを殺せば良いはずだ!だから二人を解放してくれ!!」
態度を変えて谷里は俺に制止するよう懇願する。自分を身代わりに二人を見逃してほしいのだと。俺は冷たい目で、馬鹿にした笑いを漏らす。
「聞いてなかったのか?俺はお前がいちばん絶望するような復讐法を実践するって言ったよな?その方法が、こいつらを殺すことなんだが?
というかさぁ、あれだけ理不尽に人の人生滅茶苦茶しやがった分際が、自分の都合通りに助かるとか馬鹿じゃねーの?」
「それは......分かってる。俺がお前にどれだけ酷い虐めをしてしまったんかを。俺のせいでお前の学校生活を台無しにしてその後の人生に支障をきたしてしまったんかを...。だから、ここは俺の身と大志の命で引いてくれねーか...?」
「分かってねーだろ?お前の要求は通らねーって言ってんだ!つーか通させねー!俺が過ごすはずだった...過ごせたはずだった青春を、時間を楽しみを...踏みにじって灰にさせたのはお前らだ。しかもお前らはそれが悪いことと自覚したうえで面白がって罪を犯してきた」
「お前らにとってはその時限りで終わって、後は無かったことにして忘れようとまでする。
対して俺はどうだ?あの傷はずっと残ったままでいる、癒えることは決してない。お前らに対する憎悪と殺意は昔以上に強くなっている」
「以前殺した前原らにも使った言葉をまた使うぞ...お前らが幸せだと、俺が幸せになれねぇんだよ。前に進めない。お前らが絶望に染まり残酷に死んでくれない限り俺は幸せになれない...時間が止まったままだ。永久に俺の時間は進まなくなる...」
だから...と続きの言葉を無慈悲に告げる。
「――だけどこの復讐を為すことで、俺はようやく前進することが出来るんだ...!」
止めてくれと未練がましく叫ぶ谷里を無視して、両手から赤い光を発生させる。その動作の最中、今度は瑞希が口を開いた。
「お、お願い!私だけにして。この子は......明里だけは止めて、止めて下さい!明里の未来を奪わないで下さい...!」
「お母さん...お、父さん......」
明里は未だに上手く話せないでいる。が、その目からは涙が流れていた。
「ぜ~~~~んぶ、あの男が悪いんだ。あの男が俺を虐げて俺をブチ切れさせて憎ませたから......お前らもこんな目に遭ってるんだ」
「.........ぜ、ん、ぶ......お父さんの、せい...?」
掠れ声で呟いたのは、そんな質問だった。谷里が絶望したような顔をし始める。瑞希は嗚咽を漏らしてる。
「ああそうだ、全部、全部全部...谷里優人、君のお父さんが、君をこんな目に遭わう原因をつくったんだ。お父さんが、俺にこんなことをさせたんだ。ほんっっっっっっっとに、ロクでもない酷いお父さんだよね~~~?」
煽るようにこの状況を谷里のせいだと明里に教え込んでやった。明里は俺と谷里をしばらく交互に見て、虚ろな目でこう呟いた。
「...............うん。全部、お父さんの、せい」
「―――――」
それを聞いた谷里の顔は......ぶふっwwダメだ面白すぎるwww人ってマジで絶望した時はあんな顔するんだな?www
面白い物を見て満足した俺は、赤い光を二人に放った。
「待て......杉山、待ってくれ止めてくれ!!おい頼む、止めてくれええええええええええ!!!」
「はい、乙ーー」
カッッッ
次の瞬間、二人がいた場所は、床にわずかな焦げ跡が残っているだけで、何も無くなっていた。
「あ......」
妻と娘がいたはずの場所を谷里はしばらく呆然と眺めていた。そして―――
「~~~~~~ぅあああああああああああああああああ!!あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!あああああああああああああ!!!」
遅れて醜い慟哭を上げた。
「―――あーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!あ~~面白れぇ!マジ面白れぇ!!傑作だ!憎い奴の大切なモンをこうやって奪って消してやるのは!
最高だ!お前みたいな憎いクズ野郎が、幸せでいた状態から不幸と絶望のどん底状態に反転する瞬間を目にするのは!
ナニコレ?面白過ぎる楽し過ぎる快感だわマジマジぃ!!」
対する俺は可笑しくてたまらないといった様子で大爆笑していた。他人が不幸になって絶望する様はホントに面白い。蜜の味なんてモンじゃない、最高級の牛肉ステーキの味だわコレ!!
「ねぇどんな気持ち?かつて虐めて完全に下に見てた男に家族全員の命を奪われてしまってどんな気持ちぃ?さっきまで幸せな日々だったのが、突然何もかも奪われて踏みにじられて消されてしまってどんな気持ちぃ!?プギャープギャーwww今のお前最高にキモ~~~い!!」
絶望に沈んだ谷里を嘲笑いながら重力の拘束を解いてやった。この後この男がどういったアクションを取るのかが見物だからだ。しばらく慟哭していた谷里だったが、やがて立ち上がり俺を睨んで、中学のあの時のように殴りかかってきた。
「殺す!!殺してやるぅ杉山あああああ”あ”あ”あ”!!!」
そうそう...あの時もコイツは怒鳴りながらそうやって殴りかかってきて、俺は避けきれず頬にくらったんだっけ。そんで、殴り合って負けたんだ...。
が、今は――
ゴスッ「おぶぅ...!」
カウンター蹴りで簡単に返り討ちだ...!
「いいぜ、また殴り合うか...あの時みたいに俺を負かしてみろよクソが」
で......俺に一発も入れられないまま、谷里は全身殴られ蹴られ、汚いボロ雑巾のように倒れた。
「こっちは転生してから武器を持った化け物どもと戦ってきたんだ、ゴブリン以下の戦闘力しか持たないお前なんかゴミ同然なんだよバーカ」
「あ”......ぐは...」
再度床に這いつくばった谷里の髪を掴んで顔面を床に何度も叩きつける。結界張ってるので誰も気付かない。
「さって......ここからはお前が俺にやってきたこと全部何倍もの苦痛にして返すとするか。お前だけは楽に死なさねーぞ」
「ず......ぎ、や.........」
「全部お前のせいだ。家族が失ったのは、お前が俺を理不尽に虐げたたからだ。お前が俺を虐げなければ、あの3人は死なずに済み、今も娘の楽しい誕生日パーティーを開いていただろうなぁ。お前が全部この状況をつくったんだ...!」
「あ......あ.........」
「後悔するなり俺を憎むなり、好きに思え。俺は気が済むまでお前を理不尽に虐げてやる......地獄に落ちろ、谷里優人――」
それからは、夜が明けてもずっと谷里を拷問し続けた。
「ぎゃあああああ...!」
飽きることなく、
「ずぎやま゛ぁ!!殺ずぅ、殺してやる――ぅあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」
ずぅぅぅっと…!
「いだい”いだい”いだい”...!!」
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全て終わった頃には、リビングには谷里の汚い血で汚れていた。
「へ、へへへ……へあはははははははは…!ははははははははははははっ!!!」
原型を留めないくらいぐちゃぐちゃになった谷里の死体を見下ろして俺は大爆笑した。気は晴れた。心が洗われた。今まででいちばんスカッとした復讐だった。憎い奴の大切な物を目の前で奪い去る行為はホントに楽しかった。奴の絶望した顔を見て幸せな気持ちになれた。
「これで......虐めの主犯格は全殺しにしたか。あとは、その他もろもろだな...」
結界を解除して血生臭い部屋を出た俺は、残りの学生時代の連中への復讐へ赴いた。