瀬藤欽也を殺害してから数分後、俺は打撃痕とウイルスの侵蝕によって全身がぐちゃぐちゃになった瀬藤の死体を、スマホで撮影してある程度ぼかしを加えてからSNSに載せて拡散させた。さらにこの画像を見ても、炎上したり通報されたりもしないようにさせておき、むしろ誰もがこの死体を見て面白がるという催眠術も仕掛けておいた。
死んだ姿を世界中の目に晒す行為など、死者に対するこれ以上の冒涜があるだろうか。憎い奴に対してここまでするのが、復讐というものだ。死ぬまでいっぱい苦しめて、死体になったらそれを辱めて見世物にしてやる。俺が思い描く復讐とはこういうものだ。
ある程度写真を撮ってネットの海に晒した後は、後片付けだ。簡単だ、死体ごと部屋を燃やす。
生前からずっと考えてたんだ。いつかこいつがいる時に部屋を放火して殺してやろうと。まぁ今回は死体になってからになっちゃったが、丁度いい殺菌作業だ。こんなゴミクズが使った部屋なんて雑菌だらけだろうし。このゴミクズが使った痕跡を一つ残らず消し去れば、綺麗な部屋に元通りだ。
オイルを全てばら撒いて、火の魔術を放って放火、すぐに部屋を出る。結界を張ってあるので煙が出ることもない。誰も、この大火事には気付かない。
数十分後、火が収まったであろうタイミングで再び部屋に入る。死体も、奴の家具も何もかも灰になっていた。魔術で炭や灰を全部消して更地になったこの部屋を俺はしばらく使うことにした。ここに俺の持ち物をある程度配置しようと思ってな。数日したらこんな安アパートとはおさらばする予定だから適当に使おう。
漫画やゲームがたくさん積まれた棚や箱を全てここに移動したら作業完了。帰って夜食を堪能した。
「祝 最初の復讐達成!かんぱーい♪」
酒をいっぱいのんで程よい酔い状態になって、パソコンでエッチい作品観賞して抜いたり、さっきの処刑のことを思い出してゲラゲラ笑う。この部屋は完全防音に改造してあるのでこっちが出す音は他に漏れない。まぁ念の為に外からの音はある程度聞こえるようにはしておいたが。もう一つの隣部屋と上の階の部屋は空き部屋にしておいたので、もう誰かのうるさい声に煩わされない。最高の気分だ。
「...そうだ。作ろうと思ってた復讐リスト。今作ろうかぁ」
ほろ酔い状態のまま、ノートに名前を次々書いていき、リスト化した。学生時代・社会人時代・その他...ってところか。それにしても、いったい何人いるんだか。こんなにも、俺を虐げてハブって嫌がらせして侮蔑して精神的に追い込んだ、生きる価値無い...いや殺されるべき最低蛆下衆糞ゴミカスクズ共がいたなんて!こいつら一人一人残酷に殺して...復讐してやる、必ずな...!!
「いや~~楽しみ楽しみ!全員俺をあんな目に遭わせたことや生まれてきたこと後悔するくらいに苦しめてぶち殺してあげよう。今度は、俺がお前らの何もかもを
壊す番だ。くくく、あははははははははははっ!!!」
復讐リスト
学生時代
清水博樹 前原優 中村一輝 青山祐輝 井村遼 板敷なな 吉原蒔帆 小西陽介 本山純二 谷里優人 中林大毅 上方逸樹 下田天武
社会人時代
里山浩基 瓜屋優二 渡邊宗貴 説田義一 杉浦俊哉 池谷隼
坂本歩 田原元気 遅川たけし
その他
瀬藤欽也(復讐済) 平塚大輔
*
翌日、俺はアニメイトで沢山買い物した。生前読み集めていた漫画と小説と新しく出ていたアニメDVD・Blu-rayなどなど...二十数年分溜まった最新刊を全て買った。といっても、とっくに完結した作品がほとんどで、買えなかった分はデカい本屋とブックオフを回って買いそろえた。気になる新作も買っておいて、大量のお菓子とジュースを買い込んで帰宅。以降ずっと買ったものを熟読・熟視聴していた。
完全に生前最後の1年間の生活の再現である。けどこれは仕方がないことだ。続きが気になったままで死んで、ここにまた帰って来れたんだ。復讐はもちろんする。だが自分の好きな作品も最後まで読破もしたいのだ。
読み出したら止まらない性格の俺は、読み出してから1か月近くはオタク生活を過ごしていた。そして全て消化した俺は...
「十分潤った...。さぁ復讐を再開しようか」
ずっと引きこもっていたにも関わらず俺の顔には何だか艶がついた気がした。色々満足したところで、再びあのどす黒い感情を沸かせて殺意を煮えたぎらせる。うん...数日経ってもこの気持ちは変わらない。本当に俺ってやつは、根に持つタイプなんだなぁ。
未だにこんなにも、あいつらをぶち殺したくてウズウズしてるのだから...!
「まずは...学生時代の連中から回ってくか。今のあいつらは、40後半代の中年どもになってるはずだ。最後に見たのは学生時代だったから、だいぶ見た目が変わってるかもしれないな...。まぁ俺の検索魔術なら、今のお前らを特定することに骨が折れるは無い。すぐに見つけ出せる」
検索魔術“全事象把握《グー〇ル》”――異世界に昔実在した賢人の名前をとって創られた魔術。本当に何でも調べられるチート魔術だ。発動すると一冊の本が出現して、そこに自分が知りたい内容を綴れば、あとは全てこの本が教えてくれる。
例えば...特定の名前を、こうやって綴れば―
「!おお、出た出た。ほうほう、今のアイツはこんな面していて、今は...ああ、学生時代とあまり変わらない場所に住んでるのか。そうか~~~ククク...」
現在の顔写真、現住所、世帯構成、職業、一日のおおよその活動内容等が本に浮かび上がり、あっという間に次の復讐対象人物の詳細が明かされた。プライバシーなど全く考慮しない魔術だね。
魔本の内容を普通のノートに移し書きして写真を保存してから、リストの残りの連中も調べてみた。都合の良いことに、ほとんどが同じ地区に住んでいるようで、これなら移動が楽だと思った。
「丁度良い。一人目を殺したらソイツの家を拠点にして、そこからあのクソッタレな同級生どもを殺して回ろう。みんな、大して引っ越ししてくれてなくて助かったよ...!」
まぁあいつらが生まれた地域――大阪は色々便利な地域だからな。利便性求めての結果になったのだろう。
...それにしても、
「学校ではどいつもこいつも俺を虐げて...具体的には殴って辱めて、私物を壊して、俺を不名誉な蔑称で呼びやがったりして......散々人の尊厳を踏みにじって、人の人生を潰す真似をしておいて.........お前らはそんな犯罪行為などなかったかのようにして社会で生きて、リア充して、会社とかで上の地位に就いて、家庭を持って、幸せになってさぁ...。
俺の学生生活を滅茶苦茶にしておいて、それが原因で進学が出来ず真っ当な人生を送る為の道をズタズタに引き裂いておきながら!お前らは普通に幸せな人生を謳歌しているだぁ?
認めねぇ。許されない。あり得たはずの未来を奪っておいて、自分らは幸せになんて絶対に赦しちゃおけねぇ。
俺が全て奪う。俺が全て壊す。俺が全て踏みにじる。俺が全てお前らを殺す...!絶対にな!!!」
憤怒と憎悪の感情を燃やしながら、俺は行動に出た。舞台は関西。俺が育った場所で、俺が壊れた場所だ。全ての元凶である場所に移り、再びあの最高の時間をつくり出す―!