窓から差し込む太陽の光はポカポカしていて気持ちいい3月。今、私は、髙宮くんとパソコンで、自分の番号を探している。マウスの画面を下にするところ、ホイールをちょっとずつ下に回して探す。
「あ、あ!俺のあった!」
 髙宮くんは自分の番号を見つけたみたい。
「わ、私のは……?」
 少しずつ下にしていって私の番号を探す。まだ出ない。まだ出ない。もうそろそろ終わりが近づいていく。私の番号はあるのかな……と半分あきらめかけていると。
「あ、あった……!」
 私はほっとして大きく息をつく。
「やった、やった、やったね!梨沙ちゃん!」
 髙宮くんはとても喜びの声を上げている。私もうれしいんだけど、それよりも驚きの方が勝って声が出ない。
 私たちが今見ていたのは大学の合格発表。私は髙宮くんと同じ、美容師の大学に受験した。もちろん、勉強もしたよ?
 私は髙宮くんに初めてレッスンをしてもらって、かわいくなった時から、髪の毛をくくるのやメイクするのは楽しいな、と思っていた。特にどこの大学に行くかもはっきり決めていなかった私は、美容芸術学校に行くことも視野に入れた。それと同時に、髙宮くんからもらった、教科書をまとめたものを呼んでちょっと勉強したのだ。すると面白くて。髙宮くんの過去を知らされた日、私も美容師になりたいと決心したのだ。その日からは猛勉強。学校に行っていなかった私は勉強はあまりしていなかった。だからまずその勉強も必要だったのだ。といっても記憶力がいい私は、一回学んだだけで習得し、どんどん勉強は覚えて、今はもう髙宮くんと同じレベルになっている。
 そしてこの前受験を終えて今日発表。無事に合格出来ました。

 私はあの日、髙宮くんから過去を知らされた日、髙宮くんの為に何ができるのか考えた。その結果、かわいくなったらいいのかな、そう思った。
 髙宮くんがいてよかったって思えるように。髙宮くんが自分に自信がつくように。生き甲斐があるようにそのためには私が可愛くなったらいいと思った。それに、髙宮くんが美容師になりたかった理由は梨子ちゃんが可愛くなってうれしそうで、こっちまで嬉しくなったからって言っていた。だから私がうれしかったら髙宮くんもうれしくなるかなって。

「髙宮くん」
「ん?」
「合格、おめでと!」
「うん!梨沙ちゃんもおめでとう!」
 私たちは笑い合う。これからも、髙宮くんと一緒に学校に行ける。同じ大学に受かって一安心だ。
 でも、まだこれから。私たちの夢は美容師なんだから。そしてたくさんの人をかわいくして笑顔にして、幸せにする。そんな美容師になれたらいいな。
 それと同時に私もかわいくなる。髙宮くんが梨子ちゃんのつらい過去を乗り越えて、人生が楽しめるように。
 あの醜いアヒルの子は、最後はきれいなハクチョウになっていた。私は現実にはそんなハクチョウになれないと思っていたのに。なれたんだ、きれいなハクチョウに。私が小さいころに信じていたものは嘘じゃなかった。
 私はこれから飛び立つ。きれいなハクチョウの姿で。

 私は、今日も君のためにかわいくなる。