「梨沙ちゃんを好きになったんだよね」
 髙宮くんは最後は軽い感じで終わらせてくれた。でもなんだかとても、辛そう。髙宮くんに、そんな過去があったんだ……。私はなんて言ったらいいのか、どういったら髙宮くんが元気になってくれるのかが分からない。だから意味もない言葉をたくさん送るより、それなら何も送らない方がいいと思ったから私は何も言わずに向こうの景色を見つめる。
 私は今まで私ばかりがつらい思いをしていたのだと思っていたけど、そんなことなかった。髙宮くんもつらい思いをしていたし、その他にもみんな、つらい思いをしてきたのだろう。
「もう、帰ろっか」
 髙宮くんがそういって立つ。
「そう、だね」
 私もたって髙宮くんについていく。
 私の家の前。髙宮くんはいつものように送ってくれた。帰り道は二人とも一言も話さなかった。何も話さなくていいと思った。何となくだけど、そういう感じがした。
「ごめんね、こんなに暗い話して。梨沙ちゃんは気にしなくていいよ」
 帰りが無言だったからか、帰り際、髙宮くんはそういった。
「ううん、全然。私は大丈夫だよ。髙宮くんも何か心配なことがあったら言ってね」
 そういって私たちは家に戻る。
 髙宮くんは私にたくさんのものをくれた。かわいくしてくれたし、楽しかった気持ちや嬉しかった気持ち、思い出、そして自信。たくさんの事をくれた。
 だから今度は私があげる番。今度は私が髙宮くんを元気にしてあげるんだ。私は帰ってからそのことをずっと考えていた。