「ねぇ、早坂さんと翔くんって、ほんとに付き合ってないの?」
 文化祭が終わって最初のバイト。髙宮くんと付き合ってから二日目の事。バイトが終わってエプロンを脱いで、帰ろうとしたら永野さんに呼ばれて行ってみると、第一声がこれ。
「え⁉えっと、その……」
 私は急に質問されたことと、数日前に付き合ったばかりという事で過剰なほどに反応してしまった。
 これって、どうしたらいいんだろう?正直に付き合ったっていう?でも永野さんも髙宮くんの事が……。それじゃあ付き合ってないって嘘つくの?でも嘘つくのは悪いことだし……。そうなんていおうか迷っていると。
「どーせ、付き合ったんでしょ?」
「えぇ⁉」
 私は肯定も否定もできず、ただ当てられたことにびっくりするだけ。この反応で永野さんは確信したのかあきれたように言った。
「早坂さん分かりやすすぎ。店に来た時からそわそわしてたからそうかもって思ってたんだからね」
 そんなに前から……って言っても何時間か前なだけだけど。でも入ってきた瞬間からって。
「ご、ごめん!永野さんも髙宮くんの事……」
「なんで謝んの?」
 私の言葉をさえぎって、永野さんはそういった。
「え、だって……」
「もう、私の事はいいから。謝らないで。翔くんと付き合ったんでしょ?おめでとう。もう謝らないでよ?次謝ったら翔くんの事、取っちゃうから」
 永野さんはそう早口に言うと後ろを向いて歩いていく。
「永野さん!ごめ……じゃなくてありがとう!それと」
 私がそういうと永野さんは振り返ってくれた。
「髙宮くんは誰にも取らせないから」
 私は永野さんに宣言する。すると永野さんはふっと笑ってこう言った。
「そうだよ。私の分まで頑張ってよね!んで……」
 永野さんが言葉を一度切る。そして後ろを向いて歩いていく。最後に捨て台詞。
「……幸せになって、楽しんでよ」