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11月6日土曜日は、私の16回目の誕生日だ。
誕生日とはいえ特に予定も入っていなかったので、朝からベッドの上でだらだら過ごしていると、スマホにメッセージが届いた。
『風邪でも引いたのか?』
『えっと、至って元気ですけど?』
少し間をおいてそう返信した。
休みの日に先輩から連絡してくるのは珍しい。
私はボーっとしていた頭をフル回転させる。
『今日は土曜日だけど、振替授業だぞ。聞いてなかったのか?』
嘘!?
私はベッドから飛び降りて制服を手に取った。
時刻は10時15分を回ったところ。今から走れば3時間目には間に合う。
『知りませんでした! 今からダッシュで向かいます!』
全力で走っているうさぎのスタンプを送信してから家を出た。
「もう、なんで誰も教えてくれなかったのよ」
急いでいたから教科書も適当なものを持って来てしまった。
そもそも振替授業って何曜日の授業をするのかもわからない。
校門を抜け、下駄箱で靴を履き替える。
ここでようやく私は異変に気がついた。
「誰もいないじゃん!」
騙された。校内に生徒の姿がない。授業をしているなら先生の声が聞こえてくるはずだがそれもない。
完全にしてやられた。
でも、これは酷すぎる。休みの日に学校に呼び出すなんて。
引っ掛かる方も引っ掛かる方だけど、これにはさすがの私も腹が立った。
学校に用は無いので外靴に履き替えなおして家へ帰ることに。
あー、ムカつく。このイライラをどこにぶつければいいのだろうか。
やり場のない怒りを胸に1人で歩いていると、私の家の前に私を怒らせた張本人が立っているのが見えた。
郡山先輩は、私の姿を見て何か言いたげにしていたが私はそれを無視して玄関へと足を進める。
人間は無視されるのが1番辛い。
騙し合いと言ってもやって良いことと悪いことがある。先輩なんだからそれくらいの判断は自分でしてほしい。
「ちょっと待てって」
ドアノブに手をかけたところで先輩に腕を掴まれた。
「悪かった。長窪が怒るのも無理ないよな。それに関しては謝る。本当にごめん」
郡山先輩が頭を下げた。
後輩として先輩がここまでしているのだから許してあげないこともない。
「わかればいいです。相手を傷つける騙しは極力避けて欲しいです」
「俺、サプライズって人生でやったことがなくてさ。準備をする時間が欲しかったんだ」
「え?」
先輩はそう言って、袋を差し出してきた。
「えっと、これは?」
「今日、誕生日だろ。だから誕生日ケーキを買ってきたんだ。長窪に喜んでほしくてさ。少しやり方を間違えちまったけど」
郡山先輩は目線を私から逸らして頭を掻いた。
何と言うか不器用な人だな。
「ありがとうございます。嬉しいですっ」
郡山先輩から袋を受け取った。
「でも、もうちょっと上手いやり方があったんじゃないですかね?」
騙された仕返しと、照れ隠しも含めて私はそう言った。
いつの間にかすっかり怒りも吹き飛んでいた。こんなに幸せなことが私に起きていいのだろうか。
11月6日土曜日は、私の16回目の誕生日だ。
誕生日とはいえ特に予定も入っていなかったので、朝からベッドの上でだらだら過ごしていると、スマホにメッセージが届いた。
『風邪でも引いたのか?』
『えっと、至って元気ですけど?』
少し間をおいてそう返信した。
休みの日に先輩から連絡してくるのは珍しい。
私はボーっとしていた頭をフル回転させる。
『今日は土曜日だけど、振替授業だぞ。聞いてなかったのか?』
嘘!?
私はベッドから飛び降りて制服を手に取った。
時刻は10時15分を回ったところ。今から走れば3時間目には間に合う。
『知りませんでした! 今からダッシュで向かいます!』
全力で走っているうさぎのスタンプを送信してから家を出た。
「もう、なんで誰も教えてくれなかったのよ」
急いでいたから教科書も適当なものを持って来てしまった。
そもそも振替授業って何曜日の授業をするのかもわからない。
校門を抜け、下駄箱で靴を履き替える。
ここでようやく私は異変に気がついた。
「誰もいないじゃん!」
騙された。校内に生徒の姿がない。授業をしているなら先生の声が聞こえてくるはずだがそれもない。
完全にしてやられた。
でも、これは酷すぎる。休みの日に学校に呼び出すなんて。
引っ掛かる方も引っ掛かる方だけど、これにはさすがの私も腹が立った。
学校に用は無いので外靴に履き替えなおして家へ帰ることに。
あー、ムカつく。このイライラをどこにぶつければいいのだろうか。
やり場のない怒りを胸に1人で歩いていると、私の家の前に私を怒らせた張本人が立っているのが見えた。
郡山先輩は、私の姿を見て何か言いたげにしていたが私はそれを無視して玄関へと足を進める。
人間は無視されるのが1番辛い。
騙し合いと言ってもやって良いことと悪いことがある。先輩なんだからそれくらいの判断は自分でしてほしい。
「ちょっと待てって」
ドアノブに手をかけたところで先輩に腕を掴まれた。
「悪かった。長窪が怒るのも無理ないよな。それに関しては謝る。本当にごめん」
郡山先輩が頭を下げた。
後輩として先輩がここまでしているのだから許してあげないこともない。
「わかればいいです。相手を傷つける騙しは極力避けて欲しいです」
「俺、サプライズって人生でやったことがなくてさ。準備をする時間が欲しかったんだ」
「え?」
先輩はそう言って、袋を差し出してきた。
「えっと、これは?」
「今日、誕生日だろ。だから誕生日ケーキを買ってきたんだ。長窪に喜んでほしくてさ。少しやり方を間違えちまったけど」
郡山先輩は目線を私から逸らして頭を掻いた。
何と言うか不器用な人だな。
「ありがとうございます。嬉しいですっ」
郡山先輩から袋を受け取った。
「でも、もうちょっと上手いやり方があったんじゃないですかね?」
騙された仕返しと、照れ隠しも含めて私はそう言った。
いつの間にかすっかり怒りも吹き飛んでいた。こんなに幸せなことが私に起きていいのだろうか。