翌日、わたし達はいつものように甘味処すみれ堂に集合していた。。ヒナちゃんと藤堂くんに一早く交際を始めたことを報告したかったから。ヒナちゃん達がそれぞれ部活を終えて、そのまますみれ堂へと集合したのだ。いつもの四人って感じで、安心するというか感動をしてしまっている自分がいる。わたしと駿人くん、目を合わせて頷き合った。

「あのさ竜とヒナ、聞いてほしいことがあるんだけどさ。僕とハルちゃん、昨日から付き合い始めたんだ」

 駿人くんからの報告に、ヒナちゃんの表情がよりパァと表情が明るくなって、藤堂くんの肩を掴んでゆらゆらと力いっぱいに揺らしていた。わたしは慣れていないからか、気はずかしくて顔を微かに赤く染めて、うつむいてしまった。

「ボンちゃんからそういう報告が聞けるなんて、なんだか感動するわぁ。昨日、二人の告白し合ってたって、話題になってたんだから」

「うわマジか」

 確かに同じ学校の人が来ていてもおかしくはなかった。そこまで考えが回っていなかった。なんだかすごくはずかしい。休み明けは、きっと質問攻めにされることだろう。今から気が重い。それにクラスメイトや美術部員や写真部の保護者の方々も来られていたことだろう。穴があったら入りたい。入ってからでも遅過ぎる。なんと釈明をすればいいのだろうか。頭を抱えるわたしに、ヒナちゃんはお日さまのように暖かい微笑みを浮かべて声をかけた。

「にしてもさ、ハルからボンちゃんのこと好きになったって聞いたときは、本当にうれしかったなぁ」

「ひ、ヒナちゃん、や、やめてよぉ。わたし、自分のキモチに気がついたの、あの頃だったんだから」

「ごめんごめん。わかってるよ。もしかしてだけどさ、ハルって、ボンちゃんが初恋だったりする?」

 ヒナちゃんの問いかけに、わたしはより顔を赤くして「うん。そうだよ」と呟いた。そのことにヒナちゃんはより歓喜をしていたようで、藤堂くんを揺らす力が強まったように見える。でも藤堂くん自身、まんざらでもない表情で、いつもより楽しそうに見える。気のせいだろうか。普段よりも、表情がやわらかく見えるのは。わたしの視線に気がついたのか。藤堂くんはニヤリと笑った。そして揺らす手をとめさせて、わたし達のほうへ目をやった。なんだろうか。予想が出来ず、緊張してしまう。

「実は俺達からも、話しておかないことがあってだな」

「そうだったね」

 ヒナちゃん達は目を合わせて、幸せそうに笑みを浮かべた。

「実は俺達も付き合い始めたんだ。お前達と同じ日にな。お前達を見ていたら、俺もしっかりしないとなって思ってな。部活の帰り道に俺からヒナに告白した」

「本当に驚いたんだからね。突然『お前のことが好きなんだ』って告白して来て、こっちの身にもなりなさいよ」

「それは悪かったよ。お前の理想の告白とかわからないからさ」

「本当よ。デリカシーないんだから。まったく」

 ヒナちゃんは呆れたモノ言いをしていたけれど、告白をしてくれたうれしかったのか穏やかな様子だ。藤堂くんもヒナちゃんのことを見て、フッと笑った。二人ともすごく幸せそうな表情をしている。それがとてもキラキラとしていて、二人の幸せがわたしの心の中に流れくる。この幸せの時間が永遠に続けばいいのに。でもときに辛くて幸せや笑顔を忘れてしまうこともあるかもしれない。わたし達は幸せという名前の光に出会うために一歩一歩を大切にして歩いて行かなければいけないと思う。どんなに暗闇の中に突き落とされたとしてもだ。そのときは何度でも手を伸ばせばいい。そうすれば誰かが見つけてくれるはずだから。
 ヒナちゃん達の幸せそうな笑顔が本当にステキに思える。駿人くんと目を合わせて笑みを浮かべ合った。