「へぇ、絵描き終えたんだ」
駿人くんは、感心そうな表情を浮かべわたしを見つめた。わたしはぜんざいを啜り、小さく「はい」と笑みをこぼした。あの絵を描けたのは駿人くんのおかげで描けたようなものだ。彼には感謝してもしきれないぐらいだろう。コンクールの結果がわかるのは十月末ごろになるだろう。それまでは気が気でない。わたしは気を紛らわせるためにぜんぜいに箸をつけた。ホッとする香りと甘さが口の中にふんわりと広がる。おかげで少しだけ平常心を保つことが出来ている。
「ハルちゃん、ミサンガつけてくれているんだ」
「はい。うれしかったので家に帰ってから、すぐにつけました」
「そうなんだ」
左手につけた白とピンクのミサンガ。これが駿人くんやヒナちゃん、そして藤堂くんとのつながりの象徴だ。いつか切れてしまうミサンガかもしれないけれど、切れてしまったころにはわたし達の繋がりは強くなっている。そう信じている。わたしはみんなのこと好きだ。ずっとみんなと笑って行きたいし、辛いときは手を取り合って行きたい。みんなとそんな風になって行けたらいい。大人になって、それまでの瞬間瞬間を笑い合えるようになりたい。そんな願いを心に巡らせた。
ぜんざいを啜る彼を見つめ、クスリと笑みがこぼれた。
「どうしたの?」
「いえ、幸せそうにぜんざいを食べるなぁと思いまして」
「ハルちゃん、それはお互い様だよ。ハルちゃんだって、すごく幸せそうに食べてる」
「そうですねかね」
この幸せな時間を誰かと共有することがとても尊い。こんな時間がいつまでも続けばいい。
「ねぇハルちゃん」
「はい?」
「今から、僕の家に来ない。今まで来たことなかったでしょ」
「ひゃい?」
予想外の提案に変な声が出てしまった。
しかし駿人くんは冗談を言っているようではなかった。
わたしは今まで生きて来た中で、男の子の家に行ったことはない。それも想いを寄せている相手なんて余計にない。突然のことでわたしの頭の中がパニックに陥った。
「あ、あの、ほ、ほほほ本当にいいんですか?」
「いいから言っているんだけどな。それともイヤだったかな?」
「イヤっていうよりも、そのわたし、男の子の家に行ったことがなくて、その緊張してしまうというか」
「へぇ、ハルちゃん、僕のこと男の子として見てくれているんだ。なんかうれしいな」
「駿人くん、イジワルですよね。わたしの性格のことを知ってて、そういうこと言う」
「ごめん、ハルちゃん。拗ねた顔もかわいいね」
「もう知りません」
わたしが席を立とうとする手を駿人くんは真剣な表情で掴んだ。
わたしの力では男の子である駿人くんの手を振り解くことは出来ない。わたしは再びイスに座り、フーと軽く息を吐いた。少し気分を落ち着かせ、駿人くんを見た。
「ごめん。別にハルちゃんのことをからかっているわけじゃないよ。男として見てくれているのは素直にうれしいし、拗ねた顔がかわいいって言ったのは本心だよ」
「駿人くん、わたしは…」
「うん。本当にごめん。ハルちゃんのキモチのことを考えてなくて。もっと状況を考えればよかったね」
「駿人くん、わかってくれればいいんです」
駿人くんは安心したように肩を下ろした。
その様子を見て、わたしはフフッと笑みを浮かべた。
「なんか変わったよね。ハルちゃん」
「そうですかね」
「うん。自分の考えを言ってくれるようになったかな。前は本当に怯えていて、自分のキモチとかを隠そうとしてたしさ」
「そ、そうですかね。あまり言えてる自信ないんですけど…」
「大丈夫、ハルちゃんなりのペースで話せているから」
駿人くんはやさしく微笑んだ。
わたしは恥ずかしさを隠す残ったぜんざいを食べ始めた。
駿人くんは、感心そうな表情を浮かべわたしを見つめた。わたしはぜんざいを啜り、小さく「はい」と笑みをこぼした。あの絵を描けたのは駿人くんのおかげで描けたようなものだ。彼には感謝してもしきれないぐらいだろう。コンクールの結果がわかるのは十月末ごろになるだろう。それまでは気が気でない。わたしは気を紛らわせるためにぜんぜいに箸をつけた。ホッとする香りと甘さが口の中にふんわりと広がる。おかげで少しだけ平常心を保つことが出来ている。
「ハルちゃん、ミサンガつけてくれているんだ」
「はい。うれしかったので家に帰ってから、すぐにつけました」
「そうなんだ」
左手につけた白とピンクのミサンガ。これが駿人くんやヒナちゃん、そして藤堂くんとのつながりの象徴だ。いつか切れてしまうミサンガかもしれないけれど、切れてしまったころにはわたし達の繋がりは強くなっている。そう信じている。わたしはみんなのこと好きだ。ずっとみんなと笑って行きたいし、辛いときは手を取り合って行きたい。みんなとそんな風になって行けたらいい。大人になって、それまでの瞬間瞬間を笑い合えるようになりたい。そんな願いを心に巡らせた。
ぜんざいを啜る彼を見つめ、クスリと笑みがこぼれた。
「どうしたの?」
「いえ、幸せそうにぜんざいを食べるなぁと思いまして」
「ハルちゃん、それはお互い様だよ。ハルちゃんだって、すごく幸せそうに食べてる」
「そうですねかね」
この幸せな時間を誰かと共有することがとても尊い。こんな時間がいつまでも続けばいい。
「ねぇハルちゃん」
「はい?」
「今から、僕の家に来ない。今まで来たことなかったでしょ」
「ひゃい?」
予想外の提案に変な声が出てしまった。
しかし駿人くんは冗談を言っているようではなかった。
わたしは今まで生きて来た中で、男の子の家に行ったことはない。それも想いを寄せている相手なんて余計にない。突然のことでわたしの頭の中がパニックに陥った。
「あ、あの、ほ、ほほほ本当にいいんですか?」
「いいから言っているんだけどな。それともイヤだったかな?」
「イヤっていうよりも、そのわたし、男の子の家に行ったことがなくて、その緊張してしまうというか」
「へぇ、ハルちゃん、僕のこと男の子として見てくれているんだ。なんかうれしいな」
「駿人くん、イジワルですよね。わたしの性格のことを知ってて、そういうこと言う」
「ごめん、ハルちゃん。拗ねた顔もかわいいね」
「もう知りません」
わたしが席を立とうとする手を駿人くんは真剣な表情で掴んだ。
わたしの力では男の子である駿人くんの手を振り解くことは出来ない。わたしは再びイスに座り、フーと軽く息を吐いた。少し気分を落ち着かせ、駿人くんを見た。
「ごめん。別にハルちゃんのことをからかっているわけじゃないよ。男として見てくれているのは素直にうれしいし、拗ねた顔がかわいいって言ったのは本心だよ」
「駿人くん、わたしは…」
「うん。本当にごめん。ハルちゃんのキモチのことを考えてなくて。もっと状況を考えればよかったね」
「駿人くん、わかってくれればいいんです」
駿人くんは安心したように肩を下ろした。
その様子を見て、わたしはフフッと笑みを浮かべた。
「なんか変わったよね。ハルちゃん」
「そうですかね」
「うん。自分の考えを言ってくれるようになったかな。前は本当に怯えていて、自分のキモチとかを隠そうとしてたしさ」
「そ、そうですかね。あまり言えてる自信ないんですけど…」
「大丈夫、ハルちゃんなりのペースで話せているから」
駿人くんはやさしく微笑んだ。
わたしは恥ずかしさを隠す残ったぜんざいを食べ始めた。