*
夕方、わたしは帰り支度を始めた。
あのあと、わたしとシズは、離れていた期間での出来事について話した。わたしが楓ちゃんの家に引っ越したあと、シズはクラスで起きた出来事を教師陣に話したようだ。各学年主任がシズを含めた佐倉さんのグループを呼び出し、イジメに対しての面談を行ったそうであった。その後は佐倉さんのグループはイジメを行うことは無くなったそうであった。イジメの告発をしたシズはクラスで腫れ物のように扱われているようだ。しかしシズは後悔をしていないとのことであった。シズは自分で前に進む決断をしたのだ。クラスで孤立することは、わたしを裏切った罰だとシズは話していた。彼女はわたしよりも遥かに強い存在だ。だからこそ彼女は尊敬するし、もう一度親友になりたいと思えた。机に置いてある写真を手に持った。恥ずかしがっているわたしとにっこりと笑うシズ。このときよりも、わたし達は大人になれただろうか。
「ハル、支度の進捗はどうだい?」
「楓ちゃん。だいだい終わったよ」
「そっか」
「明日には出れるかな」
「オッケー」
「ねぇ楓ちゃん。わたし、強くなれたかな」
「そうだねぇ。あたしの家に来たときよりは強くなったかな。でもハルはこれからもっともっと強くなれる」
「わたしね。決めたの。支えられるだけじゃなく、誰かを支えられるようになりたいって。だから楓ちゃん、それまで見守っていてほしい。挫けそうなときは手を指し伸ばしてほしい」
「ハルの頼みなら仕方がないね」
楓ちゃんは二ッと笑い、親指を立てた。
わたしは手にしていた写真を机に置き、一息を吐いた。
「持って行かなくていいのかい?」
「うん。この写真はこの部屋が似合っているし、この町に戻りたいって思ったときのみちしるべにしておきたいと思って。ダメかな」
「ううん。ハルらしくていいんじゃない」
「ありがとう楓ちゃん」
わたしは心から笑みを浮かべた。こんなにも晴れたキモチで笑みを浮かべられるのはいつ振りだろうか。いや、もういつ振りかを考えるのはやめよう。わたしは、前に進むことを決めたのだ。ときに立ちどまってしまうこともあるだろう。そのときはうしろを向くのではなく、横を向き、独りではないことを確認すればいい。そしたらまた一歩前へと歩いて行ける。わたしは笑顔のまま楓ちゃんに近づき、手を取った。
「ねぇ、そろそろご飯出来るんじゃない」
「そうだね。陽子も楽しげにカレー作ってたな」
「あっ、本当だ。カレーの匂いがする。わたし、母さんのカレー好き」
「陽子のカレーは絶品だからね」
「うん」
二人してクスクスと笑った。
心から笑えることは、本当に幸せなことであり、尊いモノなのだ。だからこそ大切にしていかなければいけないと思う。将来、何になりたいかは、まだわからない。だけれど、目の前のことを背けず、前に進んでいたら、何かに繋がるかもしれない。そのためにも一歩一歩を大切にして行こう。わたしは楓ちゃんの左手を掴んだ。
「ねぇ、母さんの手伝いしに行こう」
「お、いいねぇ。早く準備済まして、ガールズトークしようではないか」
「ガールズって」
「何よ。いいハル。女はね。いつになっても女子なのよ」
楓ちゃんのぐいぐい来る姿勢に、圧倒されてしまう。でも可笑しくなり思わず吹き出してしまった。わたし達は笑い合いながらリビングへと歩いて行った。何から話そう。わたしは胸を躍らせながら、足を進めていた。
夕方、わたしは帰り支度を始めた。
あのあと、わたしとシズは、離れていた期間での出来事について話した。わたしが楓ちゃんの家に引っ越したあと、シズはクラスで起きた出来事を教師陣に話したようだ。各学年主任がシズを含めた佐倉さんのグループを呼び出し、イジメに対しての面談を行ったそうであった。その後は佐倉さんのグループはイジメを行うことは無くなったそうであった。イジメの告発をしたシズはクラスで腫れ物のように扱われているようだ。しかしシズは後悔をしていないとのことであった。シズは自分で前に進む決断をしたのだ。クラスで孤立することは、わたしを裏切った罰だとシズは話していた。彼女はわたしよりも遥かに強い存在だ。だからこそ彼女は尊敬するし、もう一度親友になりたいと思えた。机に置いてある写真を手に持った。恥ずかしがっているわたしとにっこりと笑うシズ。このときよりも、わたし達は大人になれただろうか。
「ハル、支度の進捗はどうだい?」
「楓ちゃん。だいだい終わったよ」
「そっか」
「明日には出れるかな」
「オッケー」
「ねぇ楓ちゃん。わたし、強くなれたかな」
「そうだねぇ。あたしの家に来たときよりは強くなったかな。でもハルはこれからもっともっと強くなれる」
「わたしね。決めたの。支えられるだけじゃなく、誰かを支えられるようになりたいって。だから楓ちゃん、それまで見守っていてほしい。挫けそうなときは手を指し伸ばしてほしい」
「ハルの頼みなら仕方がないね」
楓ちゃんは二ッと笑い、親指を立てた。
わたしは手にしていた写真を机に置き、一息を吐いた。
「持って行かなくていいのかい?」
「うん。この写真はこの部屋が似合っているし、この町に戻りたいって思ったときのみちしるべにしておきたいと思って。ダメかな」
「ううん。ハルらしくていいんじゃない」
「ありがとう楓ちゃん」
わたしは心から笑みを浮かべた。こんなにも晴れたキモチで笑みを浮かべられるのはいつ振りだろうか。いや、もういつ振りかを考えるのはやめよう。わたしは、前に進むことを決めたのだ。ときに立ちどまってしまうこともあるだろう。そのときはうしろを向くのではなく、横を向き、独りではないことを確認すればいい。そしたらまた一歩前へと歩いて行ける。わたしは笑顔のまま楓ちゃんに近づき、手を取った。
「ねぇ、そろそろご飯出来るんじゃない」
「そうだね。陽子も楽しげにカレー作ってたな」
「あっ、本当だ。カレーの匂いがする。わたし、母さんのカレー好き」
「陽子のカレーは絶品だからね」
「うん」
二人してクスクスと笑った。
心から笑えることは、本当に幸せなことであり、尊いモノなのだ。だからこそ大切にしていかなければいけないと思う。将来、何になりたいかは、まだわからない。だけれど、目の前のことを背けず、前に進んでいたら、何かに繋がるかもしれない。そのためにも一歩一歩を大切にして行こう。わたしは楓ちゃんの左手を掴んだ。
「ねぇ、母さんの手伝いしに行こう」
「お、いいねぇ。早く準備済まして、ガールズトークしようではないか」
「ガールズって」
「何よ。いいハル。女はね。いつになっても女子なのよ」
楓ちゃんのぐいぐい来る姿勢に、圧倒されてしまう。でも可笑しくなり思わず吹き出してしまった。わたし達は笑い合いながらリビングへと歩いて行った。何から話そう。わたしは胸を躍らせながら、足を進めていた。