*楓視点
泣き疲れたのかハルは、自室のベッドで横になっていた。
理由は聞かなくとも、なんとなくわかる。おそらくだが、以前通っていた中学校の同級生と出くわし対峙したのだろう。そのときにどんなやりとりがあったかまではわからない。しかし、彼女なりに過去と決着をつけようとしたのかもしれない。あたしは今のこの子に見守ることしか出来ないのだろうか。まだハルは十三歳の子どもだ。未熟なところはたくさんある。あたしは、この子ために何かしてあげられないのだろうか。何もしてあげられない自分の無力さを思い知らされる。机に置かれている写真立てに目をやった。その写真には小恥ずかしそうにしているハルと笑顔の女子生徒。二人は親友同士だったのだろう。いつしか、二人はすれ違ってしまい、お互いに立つ位置が変わってしまったのかもしれない。
「楓、大丈夫?」
声をかけて来たのは、ハルの母親である陽子だ。あたしの幼なじみであり、一番の親友であり、そして今は義姉にあたる人物だ。彼女はハルとよく似ている。引っ込み思案で、よく人の影に隠れてしまうような人物で、かなりの美人であった。学生時代では、男子達から言い寄られることも何度もあった。その度、あたしが間に入り、守ってきた。いつからだっただろうか。兄に想いを寄せるようになっていた。引っ込み思案の彼女のことだ。うまく話せずすぐにうつむいてしまっていた。兄が都心の大学に進学することになり、陽子は表情を曇らせることが多くなり、好きだった絵も気が乗らない様子であった。卒業する間際になり、あたしは陽子の背中を押して、兄のもとへと連れて行き、想いを伝えさせ、二人はめでたく両想いになることになった。しばらく遠距離恋愛が続き、お互いに社会人へとなって数年したところで結婚をし、ハルを授かった。兄も陽子も幸せそうな表情を浮かべて、こちらも暖かいキモチにさせられる。それは今も変わらない。
「うん、あたしは大丈夫」
「ハルのこと、いろいろありがとう。わたし達じゃ、あんなに明るくさせることは出来なかったから」
「別にあたしだけの力じゃないよ。近所に住む少年に協力をしてもらってね。今じゃ友達と寄り道をして来るぐらいさ」
「そう。そっちで友達が出来たのね。そっちでも自分の殻に閉じこもってしまってないか心配だったの」
「大丈夫よ。この子はまだまだ子どもなところはあるけれど、あたし達が思っている以上に大人なんだよ。それに今、絶賛初恋中だから」
「あら」
陽子はポッと赤くなり、そしてやさしく微笑み、ハルを見つめた。すぐに赤くなるところも、やはり母娘だなと思ってしまう。あたしはおかしくなって、思わず声を出して笑ってしまった。陽子は頬を膨らませて、あたしを睨みつけた。
「何よ。もう」
「いやなんでもない。陽子、少し飲まないかい」
「そうね。まだおやつどきだけど、ハルの様子とか聞きたいし」
「どこから話そうかしら」
二人して笑い合った。
ハルの頭をやさしく撫で、あたし達は部屋をあとにした。
ハルには幸せになってもらいたい。あの子はあたしの希望の光なのだから。
泣き疲れたのかハルは、自室のベッドで横になっていた。
理由は聞かなくとも、なんとなくわかる。おそらくだが、以前通っていた中学校の同級生と出くわし対峙したのだろう。そのときにどんなやりとりがあったかまではわからない。しかし、彼女なりに過去と決着をつけようとしたのかもしれない。あたしは今のこの子に見守ることしか出来ないのだろうか。まだハルは十三歳の子どもだ。未熟なところはたくさんある。あたしは、この子ために何かしてあげられないのだろうか。何もしてあげられない自分の無力さを思い知らされる。机に置かれている写真立てに目をやった。その写真には小恥ずかしそうにしているハルと笑顔の女子生徒。二人は親友同士だったのだろう。いつしか、二人はすれ違ってしまい、お互いに立つ位置が変わってしまったのかもしれない。
「楓、大丈夫?」
声をかけて来たのは、ハルの母親である陽子だ。あたしの幼なじみであり、一番の親友であり、そして今は義姉にあたる人物だ。彼女はハルとよく似ている。引っ込み思案で、よく人の影に隠れてしまうような人物で、かなりの美人であった。学生時代では、男子達から言い寄られることも何度もあった。その度、あたしが間に入り、守ってきた。いつからだっただろうか。兄に想いを寄せるようになっていた。引っ込み思案の彼女のことだ。うまく話せずすぐにうつむいてしまっていた。兄が都心の大学に進学することになり、陽子は表情を曇らせることが多くなり、好きだった絵も気が乗らない様子であった。卒業する間際になり、あたしは陽子の背中を押して、兄のもとへと連れて行き、想いを伝えさせ、二人はめでたく両想いになることになった。しばらく遠距離恋愛が続き、お互いに社会人へとなって数年したところで結婚をし、ハルを授かった。兄も陽子も幸せそうな表情を浮かべて、こちらも暖かいキモチにさせられる。それは今も変わらない。
「うん、あたしは大丈夫」
「ハルのこと、いろいろありがとう。わたし達じゃ、あんなに明るくさせることは出来なかったから」
「別にあたしだけの力じゃないよ。近所に住む少年に協力をしてもらってね。今じゃ友達と寄り道をして来るぐらいさ」
「そう。そっちで友達が出来たのね。そっちでも自分の殻に閉じこもってしまってないか心配だったの」
「大丈夫よ。この子はまだまだ子どもなところはあるけれど、あたし達が思っている以上に大人なんだよ。それに今、絶賛初恋中だから」
「あら」
陽子はポッと赤くなり、そしてやさしく微笑み、ハルを見つめた。すぐに赤くなるところも、やはり母娘だなと思ってしまう。あたしはおかしくなって、思わず声を出して笑ってしまった。陽子は頬を膨らませて、あたしを睨みつけた。
「何よ。もう」
「いやなんでもない。陽子、少し飲まないかい」
「そうね。まだおやつどきだけど、ハルの様子とか聞きたいし」
「どこから話そうかしら」
二人して笑い合った。
ハルの頭をやさしく撫で、あたし達は部屋をあとにした。
ハルには幸せになってもらいたい。あの子はあたしの希望の光なのだから。