「まったく、どういうことなの?」

 女王の嘆きに、助手のケインが慌てて落ちた乳房をくっ付けようとしたが、もう片方も取れて、両方の乳房を持ってため息を漏らす。

 しかしアルダリは冷静に王の下半身を見て、そそり立った物に手を伸ばし、「コレより腐ったに違いない」と呟き、真っ黒に風化した王の性器を白い手袋をした指先で摘み、先端に拡大鏡を近付けて感想を述べた。

「思ったより、小さい……」
「変なこと言ってないで、原因を突き止めなさいよ」

 王女エッダは鼻を摘んでアリダリに文句を言い、乾燥して(にお)ってはなかったものの、王と愛人の絶頂の瞬間を想像して顔を顰めたが、ある意味助かったと苦笑した。

『ずっとご無沙汰だったけど、逆に命拾いしたわ……』

 その心の呟きを読み取ったのかアルダリが王女に耳を傾けたので、ドキッとしてアルダリの顔を押しやり、声を荒げて誤魔化す。

「王が尻軽女のアソコに射精して、腐りながら死んでしまったのは明らかです。割れない筈のクラウドにひびが入り、妖精の族長はウルズの泉が汚されていると絶滅の予兆を告げた」

 アルダリはそんな話に興味ないのか、ケインに指示をして、愛人の性器から粉になった精液を採取させている。

「まさか、神々を滅ぼした腐敗の呪いでしょうか?」

 ケインが王女の発言に驚き、呪いに感染しないかと慎重に採取したアソコの粉を壺に入れ、焦って洗面所に手を洗いに行く。

「腐敗の呪い。または絶滅の黒い呪いとも云う。しかし、精液から発症するのは初めて見た」

 アルダリが表情を一変させ、真剣な顔つきで王の亡骸を見つめた。王サーディンは今でこそハゲた小太りの怠惰な王となり、国政も王女に任せっきりだったが、若い頃は青みがかった銀髪の『光り輝く者』としてこの国に君臨していた。

「王がこんな無残な姿で死に、腐敗の呪いがこの国を滅ぼすのは時間の問題だわ」
「何者かが、呪いの力をバージョンアップさせたのでしょう。王の名にかけてもその魔術師を突き止め、呪いを解かなければなりませぬ」

 アリダリは以前から計画していた人間界への視察を王女エッダに提案した。他の世界が消滅し、呪いの主が存在するとしたら、そこしか考えられない。

「至急、戦士を集めて人間界へ向かわせましょう。もちろんその陣頭指揮は錬金術師アリダリにお任せください」

 王の変色した睾丸を壺に投げ入れ、アリダリが王女に(ひざまず)き、差し出された細い手を舐めてから窓辺へ行き、一角獣の杖でカーテンと窓を一気に開けてサングラスをした。

「最強の魔術師が、この美しい島を守ってみせましょうよ。ファッ、ヒッヒッ」

 そう宣言して、青い海の果てにある水壁(すいへき)と青空に輝く太陽を眺めて決め顔をしたが、その後ろでは王女エッダが唾で濡れた手をハンカチで拭き取って、不安な表情を浮かべている。

 そして王の名誉を重じて恥ずかしい死に様を隠蔽した為に、殆どの戦士がSEXをして腐敗の呪いで死んでしまい、この後のチーム編成は難航した。