五年が過ぎ、ソングは妖精族と共に平穏に暮らしていたが、精霊界の『クラウド』と呼ばれる瑪瑙(めのう)の台座に黒い血脈のひび割れが走り、妖精の族長チャチルから不吉な予兆が告げられた。

『遂にこのアーズランド島にも魔の黒い手が伸び、精霊の地に呪いの黒い毒を振り撒かれた。生命の地底から湧き出るウルズの泉が(けが)されてしまったのだ』

 ソングは母のおとぎ話を信じて、この異世界は海の水壁に守られ、異国への通り道は地底へと続くユグドラシルの迷路しかなく、ウルズの泉の最終ゲートは地竜に守られた難攻不落の安全な国だと思っていた。

 しかしクラウドの台座が危機を予言をしたように、王サーディンが局部から炭黒く腐り死んでしまったのである。