あれから2日後。今日は、いよいよモンストールと戦うことに。とはいえ、実戦訓練の範囲でだが。装備一式は全て国が用意してくれている。けっこうレア度高い装備だ。
今回モンストールを討伐する場所は、城から数キロ離れたところにある廃墟。早朝、出発する前に国王の謁見があった。初めてモンストールと戦う俺たちに激励しにきたらしい。
その折に、俺の方に顔を向けると蔑んだ目で俺を見下した。ブラットの報告で俺のステータスのことも耳にはいっているようだ。あからさまに俺を馬鹿にしたような視線を送るので、不快気に睨み返すと、気に障ったのか、俺を見据えながら、
「今回の召喚で、例外にも、恵まれないステータスの者がいたようだな。ま、せいぜい他の者らの足を引っ張らないようついて行くがよい」
と、嘲り含んだ声でほざきやがった。誰のことを言ってるのか明白であるクラスメイトは、俺を見て悪意たっぷりな笑みを浮かべる。
この、クソ老害が。こいつも大西たちと変わらねー。この時、マルス王子も国王と同じく嘲り含んだ視線で俺を見ていた。朝から非常に不快な思いをした。
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城を発ち、目的地に近づくにつれ、瘴気が濃くなってくる。この先にモンストール、未知なる化け物が棲んでいると思うと緊張してくる。他の奴らも同じらしく、次第に口数が減っていく。
廃墟に着くと、同行していたミーシャ王女とマルス王子がここで待機することに。王子がレベルが低いモンストールを狩れるくらいには戦えるってもんで、同行することに。他に数名の兵士も残り、ブラットが先頭で廃墟の中へ。中は瘴気に包まれ、不気味さが感じられる。
しばらく進むと、前方から足音が。モンストールの登場である。サイズは力士くらいで、体は灰色の体毛で覆われている。両目をギラギラと滾らせこちらを睨む。その見た目に少し委縮したが、今回はブラットや戦い慣れした兵士たちも同行している。それにこのモンストールはレベルが一桁台だそうだ。サイズに比例して強くなるらしい。
ブラットがモンストールに攻撃をしかけながら、生徒たちに指示を出す。それに従い、大西や藤原先生をはじめとしてモンストールに攻撃をする。しばらくは力士サイズのモンストールたちが出現し、このサイズに慣れてきた生徒たちは、2~3人組で1匹討伐する形に。
俺は、誰とも組まずに遊撃として回り、隙を見ては、首元に剣をブスリと刺して討伐。剣のサイズは短剣サイズもあったので、今は短剣サイズで戦っている。
生徒たちの攻撃で弱ったのを優先に狙う作戦だ。獲物を掠め取られて非難の視線を浴びるが気にならない。悔しかったら一撃で殺していけよ。恩恵あるんだからよ。
もちろん弱っているのばかりではない。こちらに気づいていないモンストールに背後に忍び寄り、周りの壁を使って上に跳び、うなじ部分に深く突き刺す。そうやってキル数を稼いでいく。が、レベルは中々上がらない。このサイズは雑魚扱いなのか。
俺の活躍を見て驚愕する生徒たち。藤原先生は俺を見て微笑んでいる。
恩恵にかまけてのうのうと過ごしていたテメーらとは違うところをいっぱいみせつけてやった。
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やがて、地下へ進み、明るさが失っていく。出現するモンストールも2m級のサイズがほとんど。武器を普通のサイズに替え、アキレス腱部分を切り裂き、崩れ落ちたところに喉やうなじを斬って討っていく。気が付くと、討伐数は俺がいちばんになっていた。
戦果がハズレ者の俺に劣っている事実に焦っている馬鹿どもを俺は侮蔑をこめた目で煽る。いい気味だ。
だが、俺に劣ってるのがよっぽど癪に障ったのか、大西が躍起になり単独でさらに地下へ降りた。ブラットが制止するよう警告するも、聞かずに進む。
しばらくすると、瘴気が一段と濃くなってきた気がする。何かヤバい気配がする。ブラットも何か感じ取ったのか、険しい表情だ。
とその時。地下から背が凍るような咆哮が上がり、同時に、大西が蒼褪めた顔で戻ってくる。
「ハァ、ハァ、何だよアレ!?あんなやべー奴いるなんて聞いてねーよぉ!」
パニックを起こしながら叫ぶ。どうやら地下に今までのとは桁違いのモンストールがいたようだ。
咆哮が再び上がったかと思うと、大西が駆け上った階段が崩壊する。そこから頭みたいなのが見えてくる。だが、そのサイズがさっき倒したのより10倍以上もある。唸り声を上げながら、人一人が隠れられるくらいのデカい手がここを登るようにかけてくる。そして、その全貌があらわになる。
デカい。体長20mはあるくらい、体には棘があちこちに見られ皮膚はとても堅そうだ。俺の剣では刺さらないんじゃないか?だが、いちばん目を引くのは、あいつの周りに纏う濃い瘴気である。絶対普通じゃない。
突然現れた大型モンストールを観察していると、狼狽するブラットが。そして動揺しながら口にだした言葉がやけにはっきり耳に入った。
「何でここにGランクのモンストールがいるんだ...!?」