訓練場で俺のステータスを屈辱的に晒され、ハズレ者呼ばわりされた日から早1週間。

 「ぜぇ...ぜぇ...」

 あれから俺は、毎日一人で訓練に明け暮れた。暇しているブラットや兵士を見つけては、模擬戦闘や、訓練の指導を頼んだりもした。だが、ハズレ者の俺の伸びしろに期待していない奴らは 有望株の大西や高園の指導ばかりで、全く相手にされなかった。なので、部活の時みたいに、自分で訓練内容を考え、実践しまくった。その成果は、


カイダ コウガ 17才 人族 レベル7
職業 片手剣士
体力 30
攻撃 40
防御 30
魔力 25
魔防 25
速さ 40
固有技能 全言語翻訳可能


 俺のステータスだけだと成長したのかどうか分からないだろうなー。癪だが、レアステータスのあいつらと比較するか。クラス全員の成長過程は毎日報告する義務があるから、お互いに成長の具合が知ることができる。で、比較した結果...


タカゾノ ヨリカ 18才 人族 レベル5
職業 狙撃手
体力 150
攻撃 150
防御 150
魔力 150
魔防 150
速さ 150
固有技能 全言語翻訳可能 感知 鷹の眼 隠密 スナイパー



オオニシ ユウスケ 18才 人族 レベル3
職業 両手剣士
体力 130
攻撃 150
防御 150
魔力 110
魔防 120
速さ 130
固有技能全言語翻訳可能 剛剣術 加速 堅牢 


 おわかりいただけただろうか。この格差。初期ステータスだけではなく、伸びしろまで大きな差があったのだ。大西に至っては、俺よりレベル低いくせに、能力値の成長率がおかしい。理不尽過ぎる。碌に訓練してねーくせに。

 事実、大西をはじめ男子の半分近くはブラットが組んだメニュー以外での訓練はサボって、王宮内のメイドにナンパしていた。異世界に来て、しかも自分には凄い力があると知り、完全に浮かれてやがる。こっちは必死に努力を積んでも大して伸ばせないというのに。女子も似たようなもので、俺みたいに毎日自主訓練をやっているのは、高園と藤原先生くらいだ。

 その藤原先生だが、彼女のステータスもまた、凄まじいものだ。


フジワラ ミワ 23才 人族 レベル5
職業 回復術師
体力90
攻撃75
防御80
魔力200
魔防200
速さ80
固有技能 全言語翻訳可能 回復 薬物耐性 全属性耐性


 回復術師は非戦闘系の職業だが、戦時において回復魔法に特化した戦士がいるとかなり重宝される。まして恩恵を授かった人間で魔力関連が桁違いときた。その気になれば、強力な攻撃魔法だって使える。攻防ともに優れた戦士になれるだろう。流石は先生といったところだな、ちくしょう。

 そんなわけで、レベルの割に全く能力が伸びない俺をますます蔑む風潮が強まり、元いた世界の時よりも疎外感を感じ、クラスに居場所が無い気持ちになっている。ここ数日、惨めな思いをしてばかりで軽く鬱になりつつある。

 さらに嫌なことに、今日はクラス内での合同訓練で、王宮でいちばん広い訓練場に俺たちはいる。戦闘スタイルが全く異なる者との連携訓練が目的のようで、剣士と魔法使い、拳闘士と銃士などといった組み合わせで行うらしい。
 どうしたものか、と思案する俺の下に近づく3~4人組が。悪意を感じる視線の主を見れば、やっぱりというか、そうだろうなというか。大西らがキモいにやけ顔を浮かべている。
 2日目の合同訓練で、こいつらは俺にちょっかいをかけてきて、模擬戦の相手をしてやると言って、俺を囲んで、模擬戦と称したリンチをしかけたのだ。質の悪いことに、藤原先生が見ていない範囲で。ブラットはというと、俺のことはまるでいない者扱いで、俺がボコられようが気にしない態度でいたのだ。抵抗しようにも、能力に差がありすぎて、一方的にやられる。終始このクズどもを憎悪の目で睨むくらいしかできないのだ。

 そして、2回目の合同訓練も、このクズ集団は俺をいたぶるべく無理やり模擬戦に誘い込む。

 「感謝しろよな、格上の俺たちがハズレ者のお前を強くするために相手してやるんだからよぉ」
 「そうそう。レベル俺らより上なんだろ?前回よりはマシな戦闘になるよな?」
 「あはは、おもしろーい!今日はあたしも混ざろっかなー」

 と口々に言うが、実際気に食わないこの俺をサンドバッグに見立ててリンチする気がだだ洩れだ。

 「訓練内容聞いてなかったのか?脳筋ども。近接系と遠距離系とで組むんだろが。他を当たれよ。あと、俺の前でそのキモいにやけ顔をするな。よけい気分悪くなる」

 不快気に大西たちに吐き捨てる。すると額に青筋浮かべた大西が俺の胸倉をつかむ。筋力差があるため振り払えない。

 「自分の立場がまだわかってねーのかよ!?雑魚ステの分際でよぉ!お前のそういうところが気に食わねーんだよ!!」

 顔面に衝撃が。胸倉を放した直後、拳を頬に叩き込まれる。殴られると分かって咄嗟に同じ方向へ首を動かし衝撃を和らげてもほとんど効果無し。思い切り吹っ飛ばされる。その様子を周りは面白がって見ているだけだ。倒れた俺に大西はボールみたいに蹴ってくる。
 一緒にいる山本と片上も便乗して蹴りにきた。他に、女子の安藤久美(あんどうくみ)も魔法を撃って面白がってる。もうこいつらに模擬戦とか頭に無く、完全に痛めつけることしか考えていない。
 その後しばらく俺をボコる時間が続く。途中何人か加わり、面白がって暴行する。

 (く...そ...。こんな奴らに...碌に努力しないで遊んでばかりのカスどもの分際で...俺にとって生きる価値無いゴミがよぉ!!!)

 ボコられまくりでは言葉も発せない状況になり抗議の言葉も出せない。
 (ステータスのハンデがなければ、こんなゴミカス集団なんか余裕で返り討ちできるのに...!)

 またも碌に反撃できないままの状態でいると、駆け足でこちらに向かってくる音を耳にする。