学校近くのファミレスは学校帰りの生徒の集いの場所。今日は生徒会長の鈴木、クラス委員の沙織、ふたりの取り巻きの生徒たち十四人が大テーブルに向っていた。
 テーブルの上にはファミレス自慢のサンドイッチ。全員がドリンクバーで、思い思いのドリンクを味わっている。
 鈴木が他のメンバーを見回す。

「遠山が『地味』で『陰キャラ』、『ぼっち』なのはみんなに知られてる。モテモテのクラスカーストトップなんて超ギャグだ」

 沙織は横でニコニコ笑っている。

「演劇フェスティバルのグランプリは演劇部のメンバーがいる三組か五組だろう。だがうちは特別賞を狙う。」

 取り巻きの男女がうなずく。

「それに『陰キャラ』で『ぼっち』が定期テストで学年トップなのは、ちょっとな。まっ、舞台でお笑いのトップキャラになったら、少しはおとなしくなるだろう」

 鈴木は冷たい笑いを浮かべている。その横では沙織が優雅に微笑んでいる。

「これからどうしたら?」

 結城が尋ねる。

「遠山を知らないヤツもいる。陰キャラでぼっち、クラスカーストの最下層だと、ほかのクラスに広めて欲しい。知られれば知られるほど、本番で笑いがどんどん大きくなっていく」

 詳しい打ち合わせの中、沙織がストローで美しくオレンジュースを飲む。
 そして隣の席。親子連れだろうか?スーツ姿の五十代の男性とボタンダウンのシャツを着た少年が向かい合っている。

「私の勧めたレストランではなく、急にファミレスを選ぶとはね。何かワケがありそうだな。よかったら教えてくれないか」

 五十代の男性が微笑んだ。