二人で抱き合ったあの日から咲楽は学校に来なくなった。
そんなことに違和感を覚えているのは僕だけのようで、クラスメイトや先生でさえ気にしていなかった。
 まるでそれが当たり前であるように…。
「先生、咲楽はどうして休んでいるんですか?」
変える用意をすました先生に向かってそういった僕に先生が言ったのは予想外にも辛らつな言葉だった。
「知るかよ。」
先生が生徒に対してこんな態度をとるのかと初めて知った僕は驚きと今までそんな風に咲楽と接していたのかという激しい怒りに感情を占拠されていた。
 悩むことなく速足で僕が向かったのは咲楽の家だった。
ピンポーン。電子音で僕は正気に戻った。でも、いまさら引き返すわけにはいかない。
『どちら様でしょうか。』
「咲楽のクラスメイトの天野です。」
しばらくして扉が開いた。
「さ、咲楽?」
目の前に立っている人物の顔は確かに咲楽だったが、着ている服が僕らの学校のじゃなかったし、なにより夏服を着ていた。
「上がってください。」
固まっている僕にその人はそう家になかへと促した。