「私はね、みんなと違うの。体中に傷があって、それは毎日増えていく。増えるだけで減ることはなくて、ひたすら私の心を蝕んでいく。そんな風に弱くなった私の心に名前を付ける医者たちも、私たちは悪くないって顔してる私の両親も結局はいらない、失敗作の私を自分たちの手を汚さずに消したいんだ。わかりきってることなのに、毎朝、今日こそ大丈夫かもしれないっていうはかない希望を捨てられない自分がいる。そして、ああ夢じゃないんだなって目の前の現実を突きつけられる。それでも、彼氏だって友達だっていた。でもみんな私の肌を見た途端、口を合わせたように気持ち悪いだとか人間じゃないとか言って私のことを捨てるんだ。誰か一人でいいからわかってほしかった。私にとってこの数えきれない傷跡は戦って戦って、それに耐え抜いてきた証だから。勲章だから…。そうだよねって共感して抱きしめてほしかった。もうわかったでしょ?みんなが私のことを避ける理由は。」
 僕に口を挟ませようにひっきりなしに言葉を発する咲楽は苦しそうで弱そうで、何より寂しそうだった。
今の咲楽に僕が言えることなんて思い当たらなくて、それでもしてあげなきゃいけないことはわかっていたのか僕は咲楽のことをやさしく抱きしめた。
「一人で頑張ってたんだよね。ごめんなさい、何も気づいてあげられなくて、守れなくて…。辛くて苦しかっただろうに僕に話してくれてありがとう。僕にすがってくれてありがとう。」
「っ、う、うわあん。な、なんでいまさらそんなこと言うの。なんで、なんで今になってっ!」
小さな子供のように泣きじゃくる咲楽が今まで隠してきた本当の素顔なんだということは誰にでもわかっただろう。
それからしばらく二人で抱き合っていたら日が沈んでいつの間にか雨が降っていた。