「皆さん、初めまして!このクラスの担任の尾崎晴馬(おざきはるま)です。まだ来てない人は…」
ガラ。教室の後ろの扉が勢いよく開いた。
その扉から姿を現したのは、僕が待ち望んでいた人、雨露咲楽だった。
「…おはようございます、雨露さん。もうHRは始まっているので座ってください。」
そういった先生は少し、いやすごく嫌そうな顔をして咲楽をみていた。
咲楽はそんなあからさまな態度をとった先生にも丁寧に一礼して僕の前の席に腰かけた。
「では…」
そのあとに先生が話していたことも入学式の校長の話も咲楽のことが気になりすぎて何も頭に入ってこなかった。
「…では、明日から通常通りの授業が始まります。起立、礼。」
 ざわざわと騒がしい教室を一番に離れた咲楽の後姿を追いかけて僕は走り出した。
「ま、待って…」
もともと運動が得意ではない僕は彼女に追いつく頃にはへとへとになっていた。
「気づいたでしょ?君が何で私に話しかけてきたのかは知らないけど、私とはかかわらないほうが身のためだよ。だから、もうバイバイだね。さよなら」
振り向きざまにそう言った彼女の表情は…雨が降っていた。