ビルとビルの間で動悸が収まるまで待って立ち上がると、あたりの人だかりはなくなっていた。
入学式に遅れたくなかった僕は腕時計を確認すると、もう入学式開始まで30分もなかった。焦って走り出した僕は事故のことなんてすっかり忘れてしまっていた。
 息を切らしながら学校まで走った僕はなんとか入学式に間に合わせることができた。
クラス表を確認すると、僕のクラスは1年4組だった。
5クラスあるうちの学校で5組、4組、3組、2組、1組の順番で成績順に振り分けられる。
 指定されたクラスに向かうと、中ではすでに仲良くなった人たちがそれぞれの机に集まって、話していた。
 僕は指定された窓際の席に座り、外に目を向けると満開の桜が窓一面に咲きほこっていた。
「ねえ、君はどこ中出身なの?」
僕の隣の席に座って華奢な女の子が話しかけてきた。
「…どこ中出身だろ」
僕は彼女の質問に対してそうぼそっと答えた。
「え?」
彼女が不思議そうにそしてばからしい、汚いようなものを見る目で僕を見たのと、おそらく僕らの担任であろう男性教師が教室の扉を開けるのとが同時だった。