咲樹の部屋を後にした僕は隣の咲楽の部屋へと向かった。
「咲楽?僕だよ。入るね。」
中から返事がないが僕はドアノブをひねった。
「咲樹さんと話してきたよ。聞こえてた?」
「…途中から。」
久しぶりに見た咲楽の顔はやつれていた。僕まで敵視しているように。
「そっか、どこから聞こえてた?」
「ゴンって聞こえてそこからお姉ちゃんが君にお願いをするとこから。」
うん、やっぱりこういうしかないよね。
「咲楽、驚かないで聞いてほしい。僕は咲楽のことが大好きだ。そして、それは君のお姉さんも同じだよ。」
狐につままれたような顔をしていた咲楽の顔がだんだんと涙と赤く染まった頬でぐちゃぐちゃになっていくのをただただ黙って抱きしめて落ち着くのを待つことしかできない自分が無力に感じた。
 どうしてだろう。神様は不公平だ。こんなに小さく弱い咲楽が皆に嫌われてしまうのだろう。なぜ、僕たちがこんな目に合わなきゃいけないんだろう。
「嘘つき…」
咲楽の口から思いがけない、いや、予想していたが受け入れられない言葉が聞こえた。